チェーザレ 破壊の創造者(2) 惣領冬実

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KiKi にしては珍しい漫画のエントリー3作品目の「チェーザレ 第2巻」の Review です。  このブログで漫画を取り上げる際にはそれなりに理由があって、最初の「ニーベルンクの指輪 (池田理代子)」は「KiKi の大好きなオペラがらみ」で、2作品目の「のだめカンタービレ (二ノ宮知子)」はこのブログの2つ目の柱「クラシック音楽鑑賞がらみ」で、そしてこの作品はこれからの課題になるのですが「ダンテの神曲がらみ」で取り上げています。  この第2巻でその「神曲」を一度は読まねばなるまいと KiKi に思わせたエピソードが出てきます♪。  ま、てなわけで本日のKiKi の読了本はこちらです。

チェーザレ 破壊の創造者(2)
作:惣領冬実 監修:原基晶  講談社 モーニングKCDX

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チェーザレ・ボルジア、 レオナルド・ダ・ヴィンチ、 クリストファー・コロンブス、ジョヴァンニ・デ・メディチ。  4人の天才達 運命の交錯。  華麗なるルネッサンス絵巻。  (Amazon より転載)

ず~っと昔、何かの本か雑誌で以下のようなお話に出会ったことがあります。  曰く、とあるパーティーでちょっとダサイけれど高名な文学者と、時代の先端を行くようなハイセンスな女性が出会った。  その女性は会話の中でとあるベストセラー作品の話題を出し、その文学者に感想を聞いたところまだ読んでいないという返事だった。  するとその女性は「まあ、先生。  あのベストセラー作品をまだ読んでいらっしゃいませんの?  早くお読みになるべきですわ。  発売されてもう何ヶ月にもなりますもの・・・・」と言った。  するとその文学者はそれを軽く受け流したうえでその女性に「ところであなたはダンテの『神曲』をお読みになりましたか?」と尋ねた。  まだ読んだことがないと答えた女性にその文学者は言った。  「早くお読みになるべきですね。  発刊されてもう何百年にもなりますから・・・・」  この話を読んだときから KiKi の頭の中に「いずれは『神曲』を読まねば・・・・」という想いが残るようになりました。  でもまあ、未だに読んだことがないんですけどね(苦笑)  で、そんな KiKi に再び「これは早く『神曲』を読まねば!」と思わせてくれたのが、な、な、なんと、この漫画でした(笑)

この第2巻ではチェーザレがコロンブスと接点があったり、レオナルド・ダ・ヴィンチと初邂逅を果たしたり、サヴォナローラが登場したりと、ある意味で読者サービス的なエピソードが満載なのですが、KiKi の興味をもっとも引いたエピソードはそれらではなく、別の2つのエピソードです。  その1つ目はアンジェロと出かけた社会科見学での途上でチェーザレが語る言葉です。  ピサの貧困地区の現実をアンジェロに見せたチェーザレは自分を抑えきれなくなって叫びます。  

本当に忌々しき問題はこの現状が彼らの招いたものではなく、教会 - ドメニコ会によって作られたものということだ。  この地域の貧者を悲惨な状況に追い込んでいるのはドメニコ会の連中だ。  奴らは神の名を巧妙に利用して貧者を救う術を隠している。  本当に彼らを救済しようと思うなら残飯を与えても意味はない。  本当に与えねばならないのは働く場であり技術を身につけさせることだ。  だが連中はそれをしようとはしない。  貧民が豊かになれば人々は地獄を信じなくなる。  地獄を恐れるからこそ神に救いを求めるのだ。  だから教会はその力を発揮できる。  つまり教会には恐れ苦しむ人間が必要不可欠なのだろうな・・・・・。  彼らから光ある未来を取り上げ与えるものはたった一欠片のパンのみ。  そして祈れと言う。  祈れば救われると・・・・・。  神に祈ることで救われるなら何故あの者達は毎夜飢えて残飯を漁らねばならぬのだ。  何故母親が生まれたばかりの我が子を水に沈め、殺さねばならぬのだ。  それを見ても彼らはただ祈れと言う。  祈れば腹がふくれると言うのか。  祈れば温かな寝床で眠れると言うのか。  聖職者の名を語るあのくずどもが!

これって決してチェーザレがイマドキの価値観で言う「いい人」だから・・・・という発言ではないと KiKi は思うんですよね。  KiKi がチェーザレという人間に興味を持ってやまないのは要するに「教会側」の人間であるはずのチェーザレが、当時の「教会の教え」を盲目的に信じるのではなく、そこに存在する矛盾を冷徹に見つめ、そのうえで「民心をいかに教会に向けるか?」を考える人ではないというところ。  このエピソードのような考え方をしているうちに、彼は「聖職者よりは政治家向きの自分」を自覚していくんだと思うんですよ。  そのうえで政治家としてのある種の「優先順位」というか、「価値観」というか、「立ち位置」をこういうエピソードの積み重ねによって確立していったタイプの人間だったんじゃないのかな・・・・・と。  そしてね、彼がもっとも凄いと思うのは、「政治家としての自分を生かすために教会の権威の利用の仕方を考える(≒ 民心掌握術)人間」だったんじゃないかなと思えるところなんですよね~。 

そしてもう1つ KiKi の興味を引いてやまないエピソードがピサ大学を訪れた高名な学者・クリストーフォロ・ランディーノ教授が行うダンテの「神曲講義風景」です。  ここは引用するとあまりにも長くなってしまうので興味のある方は漫画を読んでいただくとして(笑)、ここで出てくるチェーザレとアンジェロのディスプターチオ(Debate)が、実に興味深いんですよね~。  仮にそれが「恐怖政治」であったとしてもそこに秩序が生まれるのであればそれは統治だと言って憚らないチェーザレに凄みを感じると共に、彼の政治家としての冷徹さが垣間見えます。  彼にとって「恐怖政治の良し悪し」よりも優先すべき政治課題がある(しかも齢16歳にして!)んでしょうね。  そして現状に対して彼が描くビジョンの適切さと、それを実行するための優先順位の付け方に納得ができるからこそ、マキャッベリは「君主論」でそんなチェーザレを評価した・・・・・。  KiKi にはそんな風に思えます。

ま、いずれにしろ、この号のこの「神曲の講義」を読んでみて、それまで何となく「古めかしく、説教臭い物語なんじゃないだろうか?」という先入観から「いつかは読まなくちゃ」と思いつつもなかなか手を出せなかった KiKi に「これは1度ちゃんと読んでみなくちゃいかん!」と思わせてくれたのですから、漫画と言えども侮れません。  まあ、さらにさらにその背中を押してくれるエピソードは第7巻まで待たなくちゃいけないんですけどね(笑)

そうそう、この号を読んでいてもう1つ心を動かされたのが、ミケランジェロが「天地創造」や「最後の審判」を描く前のシスティーナ礼拝堂の絵でしょうか。  今ではミケランジェロの絵画があまりにも有名すぎて、それが描かれる前がどうだったのか?な~んていうことには興味さえ抱いたことがなかった KiKi なのですが(^^;)この漫画で、しかもカラーでその姿を見ることができた(とは言っても、文献資料はあっても写真も絵画の資料もないらしいので、ある意味では惣領さんのイメージ画らしいのですが)のは新鮮な驚きでした。

漫画の割には巻末にちゃんとした「用語解説」が載っているのも素晴らしいし、「参考文献」も充実していて KiKi 好みです。  ま、てなわけで大人の観賞に耐える漫画だと思うんですよね~。

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年9月10日 17:31に書いたブログ記事です。

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