チェーザレ 破壊の創造者(3) 惣領冬実

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今日も「チェーザレ」の Review です。  実はすでに登場していたのですが、今号で改めて、はっきりと、マキァヴェッリが登場し、チェーザレの知己を得ます。  マキァヴェッリと言えば「君主論」。  「君主論」と言えば「チェーザレ・ボルジア」。  ようやくここで役者が揃った感じです。  今号の帯には元東京大学総長で学習院大学教授であり、なおかつ、マキァベッリ研究の第一人者である佐々木毅さんの献辞が記されています。  曰く 「史実の十分な考証を踏まえたこの作品において、私の最大の楽しみはチェーザレ・ボルジアとマキァヴェッリの出会いがどう描かれるかである。  チェーザレはどこまでマキァヴェッリのアイドルだったのであろうか。」と。  うんうん、それは KiKi も大いに興味のあるところです。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

チェーザレ 破壊の創造者(3)
作:惣領冬実 監修:原基晶  講談社 モーニングKCDX

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現代政治学の祖、マキァヴェッリ登場。  死期が迫る教皇。  次期選挙に向け謀略を練る枢機卿達。  ピサではまた1人、策士がチェーザレに近付く。  彼の名はニッコロ・マキァヴェッリ。  この2人の出会いは運命か、それとも宿命か。  (Amazon より転載)

KiKi が歴史上の人物の中でもっとも魅了されている男がチェーザレ・ボルジアであることは以前にもお話しましたが、同時に興味がありつつもまったくその正体が見えない男で、魅力的なのかどうかの評価さえできない人物の1人がチェーザレの腹心・ドン・ミケロット(漫画上のミゲル)です。  いわゆる「暗殺者」という形以外でドン・ミケロットについて触れた日本語の作品を KiKi は見たことがありません。  そういう意味で、この漫画でのミゲルの人物設定には非常に興味を覚えます。  チェーザレの影に常に寄り添い、ダークサイドの仕事を粛々とこなしていく人物。  そんな彼が「ユダヤ」という出自を持ち、あのキリスト教絶対の世界の中で改宗を拒み、チェーザレの傍にいるというその一点でのみ有形・無形の迫害からの解放を見出すことができると感じられるという立場の設定。  これは深いなぁと。  と同時にこれは惣領氏の創作なのかもしれないけれど、ミゲルはこうであって欲しいなぁと KiKi に思わせる説得力・・・・のようなものを感じます。

今号はチェーザレの半端じゃないリアリスト加減が良くも悪くも描ききれている作品になっているなぁと思います。  父親の教皇選に纏わる票集めでの動き方しかり。  プライドだけは高い猛牛(笑)、フランス団のアンリとの闘牛ごっこにおける本気モード突入後の弁論しかり。  決闘もどきの闘牛ごっこ後の教官からの説教後のつぶやきしかり。  企画:ボルジア家、遂行:メディチ家の産業振興プロジェクトでの人選しかり。  マキァヴェッリとの内密の取引しかり。  アンジェロへの評価(賢く素直、そのうえ行動力もあるのか・・・・  だがお前、その能力の使い道 間違えているぞ・・・・)もしかり。  そしてもっとも顕著なのが、スペイン団の中での会話でアンジェロについて語ったこの言葉でしょう。

(アンジェロを)信用などしていない。  奴は無意識に従っているだけだ。  ということはいずれ無意識に裏切る。  意思を持たぬ者など誰が信じるか!

思うにチェーザレという人は「人間とはどういう生き物か」ということに関して、齢16歳にして既にかなり多くのことを悟っている人なんですよね~。  現段階でアンジェロがチェーザレに憧れもどきの感情を抱きつつ賞賛しているような「いい人」ではないんですよ。  ただ、自分が思うように行動するために、人をどう扱えばいいのか(奴隷のように・・・ではなく、その気にさせるという意味で)を本能的に察知できる人。  だからこそミゲルの評価が出てくるんだと思うんですよ。

だからと言ってチェーザレは友人ではないぞ。  おまえがチェーザレをどう思おうが勝手だが奴をそこいらの貴族の子弟と一緒にはするな。  あれは野生動物のように頑強でずる賢い。  あまりあれのことを信用するな。  あれに傾倒すればするほど、お前はいずれチェーザレに失望する。

言ってみればアンジェロの美化した「いい人イメージ」でチェーザレに憧れるのはとっても危険なんですよね。  この漫画ではチェーザレが美形なだけに尚更です(笑)。
 

それにしても・・・・・ KiKi はこの漫画で初めて、マキァヴェッリが言うところの「呆れるほど輝かしいチェーザレ様の経歴」なるもの(しかも子供時代の!)を見たのですが、ホント、これはものすごい・・・・と言うより呆れるしかない(苦笑)。  

まったく親馬鹿にもほどがある ・・・・・・と言いたいところだが、力量と言うかなんと言うか、結局は周囲を認めさせてしまう凄さがあの父子にはある。 (by マキァヴェッリ)

やっぱりこれ(↑)ですよ。  チェーザレ・ボルジアの一番大きな魅力はここにあるんだと思うんですよね。  でも、そうであるだけに、一見自由奔放に振舞っているように見えるチェーザレだけど、実は半端じゃない英才教育を受け、半端じゃない期待を負わされ、半端じゃない衆人監視の中で生きることを余儀なくされ、この世の誰よりも生き難さを感じていた人なんだと思います。  と、同時に、やはりこの時代のこの雰囲気の中で「庶子」として生まれた痛み(それも凡人だったらまだいざ知らず、超優秀な人物なだけに圧迫感たるやすさまじかっただろうと思われます)を常に抱え、それを跳ね返すことも常に要求されていたわけだから、これはどう頑張っても「ただのいい人」ではいられなかっただろうと思います。

思うにチェーザレの徹底したリアリズムは「庶子」であることとあながち無縁ではないような気がします。  庶子というだけで存在そのものを認められない自分。  誰よりも能力に富み、暴れれば血も流す自分がこの世に存在しないのと同じとは何たること!  どうしてそうならなければならない???  この疑問が教会側に属しつつも教会の教義を冷徹に見つめる目を彼に与え、その先に

ユダヤであろうがイスラムであろうが、信仰の形が違えど神が神であることに変わりないだろうに。  何故こんなことでいがみあわねばならない。  もともと生まれた場所も肌の色も言語すらも異なるこの世界で自分達以外の人間、宗教を排除しようというのが間違っている。  混在したこの世界こそが神が我らに与えた世界なのに・・・・・。  人の心などもとから型にはまるはずもないだろうに・・・・。  

というつぶやきがあるんだと思うんですよ。  まあ、彼の名前が英語読みで「カエサル」であるという因縁もあり、勉強好きということもあり、あの栄光のローマ帝国における「統治」についても、チェーザレは研究し尽くしていると思うんですよね。  ローマ帝国では征服地の信仰は尊重していたし、逆に常に「いかにして融合するか?」を考えていた国家だったから・・・・・。  でね、これってアンジェロが勝手に解釈したように「自由がどういうことであるかご存知でいらっしゃる」わけじゃないんだと思う。  ましてアンジェロは共和制のフィレンツェ生まれだけど、チェーザレはバリバリ君主制の人間なので、「自由の何たるか」な~んていうことは、正直興味もなかっただろうと思うんです。  彼が見ているのは、いかにしてこの混沌とした世界を統治すべきか、ただそれだけなんだと思うんですよね~。  精神世界(キリスト教信仰)はとりあえず横に置いておいて(無視もできないけれど、そこからはちょっと離れて)、この人間世界をどうしていくべきなのか?に常に焦点が当てられているとでも言いましょうか・・・・・。

う~ん、チェーザレ・ボルジア。  ますます魅力的な人物ですねぇ。  ああ、本当に誰かイタリア語の堪能な人、この漫画の底本であるらしい「サチェルドーテ版 チェーザレ・ボルジア伝」を翻訳してくれないかなぁ・・・・・・。

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年9月11日 23:20に書いたブログ記事です。

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