チェーザレ 破壊の創造者(7) 惣領冬実

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先日このエントリーでお話した、KiKi に「ああ、ダンテの神曲を本当に一度は読んでみなくては!」と思わせてくれた記念すべき第7巻に入りました。  本日の読了本です。  

チェーザレ 破壊の創造者(7)
作:惣領冬実 監修:原基晶  講談社 モーニングKCDX

41-+4wdoE0L__SL500_AA300_.jpegのサムネール画像 (Amazon)

独裁者の青春。  世界はカオスであり、調和である。

中世ヨーロッパ最大の事件「カノッサの屈辱」。  イタリア文学史上最重要古典「神曲」。  皇帝と教皇が最高権力をかけて争った時代、生き残る者は頂点に立った者だけだった。  若き司教チェーザレはピサ大聖堂に封印された政争の真実を知る。  そして迫る次の教皇選。  チェーザレ・ボルジア、16歳のクリスマス。  

ついに漫画は歴史の新説を生んだ。  世界遺産ピサ大聖堂に眠る、中世ヨーロッパの真実を暴く衝撃の超美麗ルネッサンス絵巻。  (単行本帯より転載)

いやはや、今号は本当に読み応えがありました。  やっぱり今号の白眉は「新説(? でもないか・・・)カノッサの屈辱」と「チェーザレ vs. ランディーノ教授の『神曲』談義」ではないでしょうか?  世界史の授業で学んだ「カノッサの屈辱」とこの漫画で描かれる「カノッサの屈辱」では結構違いがあるのもなかなか新鮮だし(とは言えども、これに似た話はどこかで読んだことがある記憶はあるのです。  その時はこの解釈にはちょっと懐疑的だったんですけどね 笑)、ピサ大聖堂に安置されているハインリッヒ7世の墓を見、そしてダンテの神曲を読んで、こんなにも多くのことを考えたチェーザレに驚嘆したりと KiKi にとってはなかなか刺激的なエピソードが満載でした。

その話に入る前に描かれている降誕祭のシーン。  こちらも秀逸です。  KiKi はクラシック音楽も大好きで殊に40代に入ってからはいわゆる「宗教音楽」にもかなりやられちゃったクチなのですが、このシーンでは本当に多くの「キリエ」が絵から流れ出て、頭の中でリフレインしているような不思議な感覚に捕われました。  惣領さんのすごさを感じたのは、単にミサの雰囲気を精緻に映した描写をされているのみならず、その「キリエ」がキリスト教徒のみならず、ユダヤ人(ミゲル)、マラーノ(ユダヤ教を偽装棄教し表面上キリスト教徒となったユダヤ人;チェーザレの護衛の面々)、そして街の片隅でぼろをまとって恐らく亡くなった(?)と思われる貧民の上を流れていくという描写をされていることで、このシーンでは多くのことを考えさせられました。

 

そして、チェーザレがシレンツィオ・ホアンに語るという形で描かれる、ハインリッヒ7世とダンテの関係、カノッサの屈辱の真実、そしてハインリッヒ7世の最期・・・・・。  

あと一歩、あと一歩だ ハインリッヒ。  教皇派を叩き潰せ

この感極まっての独白(と言えるんだろうか?)。  これこそがこの漫画の世界では後年、1度は緋の衣を纏うまでになりながらも、それを脱ぎ捨てる決断をすることになるチェーザレの求めていたものが伏線のように描ききられていると感じました。

キリスト教徒ではない日本人にとって、この時代のことや実際のところの皇帝 vs. 教皇の争いの深い意味はなかなか正確には理解できない問題だと思うけれど、とどのつまりは「権力闘争(≒欲望のぶつかりあい)だと思うんですよね。  そんななか、ランディーノ教授の語る

権力と金。  これに執着したとき、聖人は俗人となるのです。

は、日本人にとってはある種当たり前的な感覚で捉えられる評価だと思うんだけど、これを口にすることが困難な時代、それが中世ヨーロッパであったことが、改めて認識できた・・・・そんな気がしました。

と、同時に同じくランディーノ教授の語る以下のセリフが KiKi にとってはちょっとショックでした。  それは

権力者も民衆もいつの世も人々が望むのは唯一無二の存在。  たとえ覇権を二元化しようともいずれそれはぶつかりあい、どちらか一方へと傾倒していく。  つまり二元論など現実には成し得ない夢物語。  

二元論が夢物語であることは KiKi も賛成するんだけど、KiKi にとってショックだったのはその前、「権力者も民衆も、いつの世も、人々が望むのは唯一無二の存在」という部分。  いえ、感覚的にはわかっていたつもりだったんですよ。  それが一神教を信じる人たちの根っこの部分にあるメンタリティであるということは・・・・・。  そうであるからこそ、単純な善 vs. 悪という構図を好むということも・・・・・。  でもね、「いつの世も誰もが望むものが唯一無二の存在」と言い切られてしまったことによって、改めて「ああ、そうか。  だからこそ成立した『皇帝 vs. 教皇』という対立構図だったんだ・・・・・。」と、今更ながら納得したと言うか、ストレートに腑に落ちたと言うか・・・・・。  ず~っと KiKi には漠然とした感覚でしか掴めていなかったこの「権力闘争」の根っこにあるものに今更ながら得心した・・・・そんな感じなんです。

そして、チェーザレ vs. ランディーノ教授の神曲談義をじっくりと読んでいて KiKi が感じたこと。  それは未だに読んでいない「神曲」の中で、ダンテがもっとも訴えたかったことは何だったのかを猛烈に知りたい!ということでした。  

時代、身分、立場、教義・・・・・  人間をとりまく様々な環境とそこで育まれた理念・想念・思想を思い描きながら

なんという混沌(カオス)・・・・・ いや、調和(ハルモニア)か・・・・・

とつぶやくチェーザレの姿に、KiKi は感動を覚えました。  そう、誰もがこの世の柵の中でもがきながら自分自身の生を充実させたいと思い、同時にある種の崇高なものを追い求める。  そんないくつもの思惑が絡みあい、時にもつれ、時に相和しながら、人間の社会は構築されていきます。  それはカオスでもあるかもしれないけれど、ハルモニアとも言えるのかもしれません。  

正義とは立場が変われば変わるもの

とは、KiKi のここ何年かの変わらぬ強い思い・・・・というか、ある種の達観なんだけど、よくよく考えてみるとそのこと自体もカオスなのかハルモニアなのか、微妙なところなんだよなぁ・・・・と。

さて、今号で先が気になること・・・・と言えば、チェーザレ発・シレンツィオ経由でアンジェロに手渡されたチェーザレの書庫の鍵。  (← このシーンを見た時、KiKi は思わず心の中で叫んでいました。  「その鍵、KiKi も欲しいよぉ!」と。  もっとも KiKi はイタリア語もラテン語もアラビア語も読めないので、宝の持ち腐れになってしまうのですが・・・・・・ ^^;)  鈍そうに見えて実は鋭い(但し、未だに純で世事には疎い)アンジェロがどんな人物になっていくのか、これは半端じゃなく楽しみ♪です。

はてさて、第8巻はいつ頃発売になるんですかねぇ・・・・。   

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年9月13日 23:03に書いたブログ記事です。

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