神曲 地獄篇 ダンテ

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さて、本日はようやくここにたどり着けました・・・・の、「神曲」です。  いや~、ここに辿りつく前に「チェーザレ」の Review を書いていた頃は「いつになったらメインの『神曲』にたどり着けることやら・・・・」とちょっと気弱になったりもしていたのですが(あの漫画の Review が大変だったということではなく、「神曲」自体が3冊組だし、比較的厚めの文庫本だしということで・・・・ ^^;)、ようやくたどり着けたというだけで感無量です。  そして、KiKi はこれまでの人生で3回ほど「神曲読破」に挫折しているだけに、ちょっと恐る恐るという感じで手に取りました。  でもね、今回は挫折しませんでしたよ~、まだ第一部だけだけど・・・・・(苦笑)  ま、てなわけで「神曲 3部作」の第1部、「地獄篇」の Review です。

神曲 地獄篇
著:ダンテ 訳:平川佑弘  河出文庫

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1300年春、人生の道の半ば、35歳のダンテは古代ローマの大詩人ウェルギリウスの導きをえて、生き身のまま地獄・煉獄・天国をめぐる旅に出る。  地獄の門をくぐり、永劫の呵責をうける亡者たちと出会いながら二人は地獄の谷を降りて行く。  最高の名訳で贈る、世界文学の最高傑作。  第一部地獄篇。  (文庫本裏表紙より転載)

そう言っちゃなんだけど(ひょっとしたら不謹慎?)、面白かったぁ!!!!  「神曲」というタイトルからして「どこか説教じみた抹香くさい話なんじゃないか?」と思ったり、これまでにチャレンジした難解な文語調翻訳で「う~ん、よっぽど余裕がないとこれは読み終えることができない・・・・・(溜息)」という先入観があったりで、興味を持ちつつもどうしても読み進めることができなかった作品だけど、この平川版の「神曲」は「読み易い」「面白い」「翻訳日本語が美しい」の3拍子 + ギュスターヴ・ドレの挿絵のインパクトであっという間に地獄篇を読み終えてしまいました。  あ、因みにそのドレの挿絵はこちらのサイトで見ることができます。

ギュスターヴ・ドレの挿絵

以前にチャレンジした時はほとんど進まなかったせいもあって全く気がつかなかったんですけど、「神曲」ってコテコテ・キリスト教文学かっていうとそんなことはなくて、KiKi の大好きな「ギリシャ神話」とか「英雄叙事詩」とか「歴史モノ」と親和性の高い作品だったんですねぇ。  ま、そんなこともあり、やはりこの作品を本気で楽しもうと思ったら最低限 「聖書」、「ギリシャ神話」、「ホメロス;イリアス & オデュッセイア」、「古代ローマ史」の基本的知識は必須でしょうねぇ。  ま、これに追加でダンテの生きた時代のイタリア情勢も知っていればさらに面白いのかも!!  もっとも KiKi は凡そそのあたり(ダンテの生きた時代のイタリア情勢)の知識には疎いのですが、それでも微に入り細に入り付してくれている「注釈」のおかげで、とりあえず一読するには何ら不都合は感じませんでした。

また、この本では各歌の前に「平川さんの手による簡単なあらすじ」が付されているのも KiKi にとってはグッドでした。  

さて、せっかくダンテと共に「地獄見学ツアー」を楽しむことができたので、将来「地獄ってどうなっていたっけ??」と思いだしたいことがあった場合に備えて(そんな場合があるんだろうか? ^^;)本を読みながらメモした地獄の構造を整理しておきたいと思います。

地獄の門 - 「われ(この門)を過ぎんとする者は一切の望みを捨てよ」の銘が記されている。  生前いずれの党派にも参加しなかった人々(無為に生きて善も悪もなさなかった人)の亡霊が、天国にも地獄にも入ることを許されず、蜂や虻に刺されて、泣きながら走り回っている。
アケロン川(三途の川) - 冥府の渡し守カロンが亡者を櫂で追いやり、舟に乗せて地獄へと連行していく。
第一の圏谷 辺獄(リンボ) - 洗礼を受けなかった者の魂が堕とされている。  呵責こそないが希望もないまま永遠に時を過ごす。  ここにいるのが、アリストテレス、ホメロス、ホラティウス、オウィディウス、ルカヌス、ウェルギリウス、ヘクトル、カエサル、サラディン(!)、ソクラテス、プラトン、キケロ、ユークリッド、プトレマイオス、ヒポクラテス等々の錚々たる顔ぶれ!!!!

地獄(基本的には第二の圏谷以下)の入口では、冥府の裁判官ミーノスが死者の行くべき地獄を割り当てている。

第二の圏谷 愛欲者の地獄 - 肉欲に溺れた者が、地獄の颷風に小止み(おやみ)なく煽られて吹きまわされている。  クレオパトラなどがいる。
第三の圏谷 貪食者の地獄 - 生前大食らいの罪を犯した者が、冷たい雨に打たれて罰せられ、ケルベロスに食いちぎられている。

冥府の神プルートンの咆哮。  「パペ・サタン・パペ・サタン・アレッペ!」

第四の圏谷 貪欲者の地獄 - 吝嗇と浪費の悪徳を積んだ者が、円周状の道の上を重い荷物を転がしながら互いに逆方向に向かって進み、円周上の一点で出会い頭に罵り、殴り合い、挙句に双方もと来た道を引き返し、また出会う向こう側で同じことを繰り返す。
第五の圏谷 憤怒者の地獄 - 怒りに我を忘れた者が、血の色をしたステュクスの沼で互いに責め苛む。
ディースの市 - 堕落した天使と重罪人が容れられる、永劫の炎に赤熱した環状の城塞。  ここより下の地獄圏は地獄の下層界になる。  (第五の圏谷)
第六の圏谷 異端者の地獄 - あらゆる宗派の異端の教主と門徒が、宗派ごとに火焔の墓孔に葬られている。

二人の詩人はミノタウロスとケンタウロスに出会い、半人半馬のケイロンとネッソスの案内を受ける。

第七の圏谷 暴力者の地獄 - 他者や自己に対して暴力をふるった者が、暴力の種類に応じて振り分けられる。
  第一の円 隣人に対する暴力 - 隣人の身体、財産を損なった者(いわゆる暴君)が、煮えたぎる血の川で熱湯責めにされている。
  第二の円 自己に対する暴力 - 自殺者の森。  自ら命を絶った者が、奇怪な樹木と化し怪鳥ハルピュイアイに葉を啄ばまれる。
  第三の円 神と自然と技法に対する暴力 - 神および自然の業を蔑んだ者、男色者に、火の雪を浴びせて罰する。  ここにダンテの恩師ブルネット・ラティーノがいる。
第八の圏谷 悪意者の地獄 - 悪意を以て罪を犯した者が、それぞれ十の「マレボルジェ」(悪の濠)に振り分けられる。
  第一の濠 女衒 - 婦女を誘拐して売った者が、角ある悪鬼から鞭打たれる。
  第二の濠 阿諛者 - 阿諛追従の過ぎた者が、糞尿の海に漬けられ、糞まみれの爪でわれとわが身を引っ掻いている。
  第三の濠 聖職売買者 - 聖物や聖職を売買し、神聖を金で汚した者が、岩孔に頭から入れられて燃える両足をばたつかせている。
  第四の濠 魔術師 - 卜占や邪法による呪術を行った者が、胴の上に頭を後ろ前につけられて後ずさりしつつ進み、背中に涙を流している。
  第五の濠 汚職者 - 職権を悪用して利益を得た汚吏が、煮えたぎる瀝青(チャン)に漬けられ、悪鬼から鉤手で責められる。
  第六の濠 偽善者 - 偽善をなした者が、外面だけ美しい金張りの鉛の外套に身を包み、ひたすら歩く。  ここにキリストの死刑を判決したユダヤの大祭司カヤパが地面上に磔刑にされている。
  第七の濠 盗賊 - 盗みを働いた者が、蛇に噛まれて燃え上がり灰となるが、再びもとの姿にかえりそれを繰り返している。
  第八の濠 謀略者 - 権謀術数をもって他者を欺いた者が、わが身を火焔に包まれて苦悶する。  オデュセウスはここにいる。
  第九の濠 離間者 - 不和・分裂の種を蒔いた者が、体を裂き切られ内臓を露出している。  マホメットはここにいる。
  第十の濠 詐欺師 - 錬金術など様々な偽造や虚偽を行った者が、さまざまな病気にかかって苦しみのたうちまわっている。

最下層の地獄、コキュトスの手前には、かつて神に歯向かった巨人が鎖で大穴に封じられている。

第九の圏谷 裏切者の地獄 - 「コキュトス」(Cocytus 嘆きの川)と呼ばれる氷地獄。  同心の四円に区切られ、最も重い罪、裏切を行った者が永遠に氷漬けとなっている。  裏切者は首まで氷に漬かり、涙も凍る寒さに歯を鳴らす。
  第一の円 カイーナ Caina - 肉親に対する裏切者(旧約聖書の「創世記」で弟アベルを殺したカインに由来する)
  第二の円 アンテノーラ Antenora - 祖国に対する裏切者 (トロイア戦争でトロイアを裏切ったとされるアンテノールに由来する)  漫画「チェーザレ」に出てきたウゴリーノ伯とその政敵ルッジェーリ大司教はここにいて、ウゴリーノ拍がルッジェーリ大司教の脳と項の間に食らいついている。
  第三の円 トロメーア Ptolomea - 客人に対する裏切者 (旧約聖書外典『マカバイ記』上6:11-17に登場し、シモン・マカバイとその息子たちを祝宴に招いて殺害したエリコの長官アブボスの子プトレマイオスの名に由来する?)
  第四の円 ジュデッカ Judecca - 主人に対する裏切者 (イエス・キリストを裏切ったイスカリオテのユダに由来する)

地獄の中心ジュデッカのさらに中心、地球の重力がすべて向かうところには、神に叛逆した堕天使のなれの果てである魔王ルチフェロ(サタン)が氷の中に永遠に幽閉されている。  魔王はかつて光輝はなはだしく最も美しい天使であったが、今は醜悪な三面の顔を持った姿となり、半身をコキュトスの氷の中に埋めていた。  魔王は、イエス・キリストを裏切ったイスカリオテのユダ、カエサルを裏切ったブルートゥスとカッシウスの三人をそれぞれの口でくわえ、噛み砕いている。

2人の詩人は、魔王の体を足台としてそのまま真っ直ぐに反対側の地表に向けて登り、岩穴を抜けて地球の裏側に達する。そこは煉獄山の麓であった。

ふぅ。  すごいところですね~、地獄って。  それにしてもキリスト教以前(というよりキリスト誕生以前)の人たちが、「キリスト教を知らない」「洗礼を受けていない」というただそれだけで、天国にも地獄にも行けず「辺獄(リンボ)」なんていう摩訶不思議なところにいなくちゃいけないとはさすがキリスト教をベースにした物語ですねぇ。  独善的というべきか、驕っていると言うべきか。  あ、そうか、KiKi はさっき「意外とギリシャ神話などと親和性が高い」って書いたけれど、これは「地獄篇」だから、ギリシャ神話みたいな邪教がらみの存在はみ~んな地獄にいるっていう、そういうことなんでしょうか??

結構笑えるのがダンテの嫌いない人(政敵とか)はほとんどこの地獄で苦しんじゃっているっていうことです。  実社会ではフィレンツェを追放され放浪を余儀なくされているダンテの方がいわゆる今で言うところの「負け組」だったわけだけど、ダンテの空想の世界 & 死後の世界ではダンテ自身は「煉獄」に行けるらしい(カロンのセリフによれば)ので、1人勝ちなんですよね~。  そう考えてみると偉大なる作品もどこか現世の鬱憤晴らしに見えちゃって、ダンテが可愛く(^^;)思えます。

1つだけ疑問なのは、ルチフェロ(サタン)が地獄で氷漬けになっているということ。  コイツ、人間を悪に唆すヤツのはずなんだけど、氷漬けなんですか???  しかも3つの口はユダとブルートゥスとカッシウスに塞がれて・・・・・。  う~ん、どうやって氷の中から這い出して人間を唆すんですかねぇ・・・・・。  謎だぁ~。

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地獄の最下層(ジュデッカ)で氷漬けになっているルチフェロ(サターン)  

さて、次は「煉獄篇」です。  ゲーテによれば「地獄篇」の評価は高いけれど、「地獄篇」 > 「煉獄篇」 > 「天国篇」と先へ進めば進むほどケチョンケチョンなので、ちょっと心配だけどまあ、楽しく読み進めていきたいなぁと思います。

    

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コメント(2)

ご無沙汰しておりま~す。
日々、難しい大作をお読みになって記事にされており、まったくもって頭が下がる思いです!
読書メーター。ぐんぐん上がってますね。

神曲は、自分はきっと読むことはないと思ってましたので、こちらでその内容を拝読してその内容がよくわかりました!
 フランチェスカ・ダ・リミニのオペラを観劇しましたが、なんであのふたりが地獄へ行っちゃったかわからなかったんです。
でも、ダンテは誰でも彼でも落としちゃってるんですねぇ。
彼らは、愛欲者の地獄にいるのでしょうか。

しっかし、わたくしは、間違いなく地獄行きですわ(笑)
思い当たる圏谷をよく勉強しておくことにします!

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年9月16日 19:14に書いたブログ記事です。

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