海のたまご L.M.ボストン

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先日読了した「リビイが見た木の妖精」の世界観にすっかり魅せられてしまった KiKi。  せっかく出会った素敵な作家さんなので、もう一編、彼女の作品を読んでみたいと思っていたらちょうどタイミングよく、岩波少年文庫60年記念特別復刊でこちらが発売されました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本は同じ L.M.ボストンさんのこちらの作品です。

海のたまご
著:L.M.ボストン 訳:猪熊葉子  岩波少年文庫

51VOYTNK55L__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

イギリス南西端に位置するコーンウォールの荒々しい海を舞台に、海の妖精トリトンと2人の少年が経験したふしぎな冒険と、3人のあいだに芽生えた友情をこまやかに美しく描いたファンタジー。  再刊。  (文庫本扉より転載)

「リビイが見た木の妖精」の自然描写も美しかったけれど、こちらも負けず劣らず素晴らしいものでした。  「リビイ」が「森、林、川、田園」が舞台ならこちらはタイトルからも明らかなように「海」を舞台にした自然賛歌です。  しかもその自然賛歌はいわゆる「観光レジャー的」なそれではなく、どちらかというと原始的・・・・というか、ありのまま・・・・というか、要するに「美しくて癒される」という類のものじゃなくて、プリミティブな信仰に近いもの。  畏れと憧憬と親しみがないまぜになったもの。  自然の厳しさは厳しいままに、現代のパック旅行のような短い、おいしいとこどりの滞在で感じられるあれこれとは完全に一線を画しています。  24時間、365日をそこで過ごして初めて見たり、感じたりすることができることを言語化した物語だと思います。

「リビイ」を読んでいる時にも感じたことだけど、本を読んでいる間中、まるで皮膚の毛穴が全開になっているのと同じように KiKi の五感が全開になって、物語の中心に位置しているイギリス人の少年、トビーとジョーが見るもの、感じるものを疑似体験しているような気分になり、何度もゾクゾクときちゃいました(笑)。  う~ん、やっぱりこういう物語はいいなぁ!!! 

KiKi は海辺で育ったわけではないから、本当の海の姿をつぶさに見知っているわけではないけれど、それでも内陸部で育ったわけでもないので、荒れている海の姿や、満干の差、お天気による波の形や色の違いといったようなことは満更知らないわけでもない。  そんな KiKi にとって、この物語の中で描かれる海の姿は過去に見た様々な海の顔を髣髴とさせ、そして身体の奥底に眠っているよくわからない熱い気持ちがかきたてられました。  トビーとジョーが最後にトリトンと遊んだ夜の海のシーンはあまりにも美しく、あまりにも恐ろしく、そしてあまりにも優しくて、思わず手を合わせて拝みたくなっちゃったぐらい!(笑)

ああ、この物語をもっと幼くて、今より感受性の鋭敏だった時代に読んでおきたかった。  そう思わずにはいられません。  

物語の中に出てくる海に観光にくる都会人の姿(それは KiKi にも身に覚えのあるもの;もっともゴミを捨てっぱなしにしたことはないけれど)がトビーとジョーじゃないけれど、邪魔臭い邪悪なものに感じられ、レジャーを否定するわけじゃないけれど、本当のレジャーと呼べるものはこの2人の少年のように、自然をあるがままの姿で受け容れ、逆に自然にも自然の構成物の1つの動物(≒人間)として受け容れてもらえるような関わり方をすることにある。  そんな気分になりました。

最後の最後、2人の少年 & その両親とそこそこ関わりのあったエビとりおじさんのサムが語った一言が心に残ります。  曰く

 

このわかい紳士方ときたひにゃ、まだ海のことは、なにひとつわかっちゃいないんだからね。

 

う~ん、この2人でさえそんなことを言われちゃうぐらいだから(そして、その言葉には妙な説得力があるだけに)、何だか自分が正面きって同じセリフを吐かれちゃったような、「面目ない気分」です。  

ところで、この作者さん。  何となくなんだけど「月」に強烈な思い入れがある方のような気がします。  「リビイ」に併録されていた「化石ヘビ」と少年の別れのシーンも「月明かりの中」だったし、この物語の中で2人の少年が最後にトリトンとふれあうのも「月明かりの中」。  何だかこの2作を読んでいると「月は人の心を惑わす」という言葉が素直に信じられる・・・・・。  そんな気分です。  

この想いがまだ熱い内に、ベートーヴェンの「月光ソナタ」でも弾いてみようかしらん(笑)。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月27日 18:43に書いたブログ記事です。

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