火の誓い 河井寛次郎

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涼しい日があったかと思うと、蒸し暑い日があったり・・・・・。  何だか最近の気候は、はっきりしませんねぇ。  季節をあっちへ行ったりこっちへ行ったりと、お天気の神様に振り回されているかのようです。  日本の美点の1つに四季のあることが挙げられと思うんだけど、その四季の移ろいはソフトランディングであってくれなくちゃいけません。  そうでありさえすれば、文句なしの美点になりうるところが、昨今のお天気のようにどっちつかずっていうのでは、いいんだか悪いんだか、判断に苦しむところです。  ま、そんな中、本日の KiKi の読了本はこちらです。

松岡正剛千夜千冊 第5夜
火の誓い
著:河井寛次郎  講談社文芸文庫

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人間国宝や文化勲章に推挙されても応じることなく、一陶工として独自の陶芸美の世界を切り拓き、ついには焼き物の枠を超えた無私普遍の自在な造形世界に自らを燃焼させた河井寛次郎が、美しい物に隠れている背後のものを求めての歩みを詩情豊かな文章で記した、土と火への祈りの書ともいうべき名エッセイ。  (文庫本裏表紙より転載)

今日の読了本はここ最近の KiKi の読書傾向からすると、ものすご~くゆっくりと、時間をたっぷりかけて味わった1冊でした。  これは、本当に良書だと思います。  書かれている内容も深いんだけど、それより何より、こんなに美しくも雄弁な日本語を久々に読んだような気がします。  それも日本人のDNAに浸み込んでいる何ものかに、静かに、それでいてストレートど真ん中を射ぬく勢いで訴えかけてくる言葉・・・・・。  そんな言葉に溢れた珠玉の随筆集だと思います。  

日本の土と水を手で触り、日本で伐採された木で火を焚き、造形の道を邁進した人間っていうのは、その直に触れた風土とでも呼ぶべきものから、鋭敏な感覚と「日本人を形づくってきた核のようなもの」を、かくも鮮やかに、かくも慎み深く感じ取るものなのか・・・・と感嘆するばかりです。

とは言うものの、読み始めは通常どおりさらさらと、布団に寝転んで・・・・という体制で本を開いてみたんですよ。  でもね、冒頭の「部落の総体」という文章をほんの1ページ読んだだけで、KiKi は無意識のうちに布団から出て椅子に座りなおしていました。  KiKi の中の何者かが告げるんですよ。

「この本は寝転んで読む類の本ではないよ。」

ってね。  この感覚は本当に久しぶりでした。  そう、例えて言えば、まだCDなんていうものがこの世にはなくて、LPレコードがかなり高価だった時代に、お誕生日とクリスマスのプレゼントとお年玉を全部合わせてようやく買ってもらった大切なレコードに、わくわく・どきどきしながら、居ずまいを正して針を落としたあの瞬間の感覚に似ていました。  

KiKi を思わず起き上がらせた一文は前述した冒頭の「部落の総体」の2ページ目、

どんな農家でも - どんなにみすぼらしくっても - これは真当の住居だという気がする。  安心するに足る家だという気がする。  喜んで生命を托するに足る気がする。  永遠な住居だという気がする。  これこそ日本の姿だという気がする。  小さいなら小さいままで、大きいなら大きいままで、どれもこれも土地の上に建ったというよりは、土地の中から生え上ったと言いたい。  どんな家でも遊んでいるような家は一軒もない。  家の中も、外と一緒で、何処も彼処もねっからはっから百姓以外の何ものでもないのがありがたい。

という記述。  ここを読んだとき、KiKi の中にある何かがザワザワとさざめき、同時に河井さんのフレーズをそのまま借用させていただけるなら、「喜んで KiKi の全感覚を托するに足る気」がしたのです。  そして「じっくりと味わうに足る随筆だ」とも・・・・・。

日本的な美の神髄とでも言うべきものが、この随筆のそこかしこから、香りたちます。  そして、KiKi の子ども時代であってさえも既に半分ほどのものが失われつつあった、「この国に住んできた人々の生きざま」の数々の記述・・・・。  頭でっかちになった現代人が、「自分探し」だの「生き甲斐」だのとほざく前に、人が人として感じるべきこと、謙虚に受容すべきことがここには書かれている。  そんな想いを抱きました。

それにしても、こういうパワーのある日本語に出会うと、ボキャブラリーの乏しい KiKi としては、何をどんな言葉で書けばいいのかわからなくなってしまって、正直オロオロしてしまうんだけど、とにもかくにも、1つ1つの章に描かれている世界が本当に瑞々しくて、懐かしくて、切なくて、甘酸っぱくて、苦くって、同じ文章を何度も何度も繰り返し読み返しながら、じっくりと味わわせていただきました。  多分、この本を味わっている間中、KiKi は河井寛次郎さんの感性に恋をしていたんだろうなぁ・・・・。  

これは是非是非、蔵書にしておきたい1冊です。  今回の読書は図書館本だったんだけど、恐らく KiKi は返却期限日までに少なくとももう1~2回は読み返すことになるだろうと思います。  こんな素敵な本を紹介してもらっただけでも、松岡正剛さんに感謝(笑)です。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月 7日 12:48に書いたブログ記事です。

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