坊っちゃん 夏目漱石

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先日、中谷宇吉郎さんの「雪」を読み、寺田寅彦さんとの師弟関係に思いを馳せたとき、夏目漱石 - 寺田寅彦 - 中谷宇吉郎 という子弟ラインの著作を続けて読んでみたい気分になりました。  で、せっかくなら「岩波少年文庫全冊読破」に結び付けられないかと考えて既版の夏目漱石作品を探してみたら、とりあえず「坊っちゃん」だけが収録されているようです。  そこで早速、手に取ってみました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

坊っちゃん
著:夏目漱石  岩波少年文庫

51HSZGRCE8L__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

四国の中学に数学の教師として赴任した江戸っ子の坊っちゃん。  校長の〈狸〉や教頭の〈赤シャツ〉は権力をふりかざし、中学生たちはいたずらで手に負えない。  ばあやの清を懐かしみながら、正義感に燃える若い教師の奮闘の日々が始まる。  (文庫本裏表紙より転載)

いや~、久しぶりです。  この物語を初めて読んだのは KiKi が小学校高学年の頃だったと記憶しています。  で、小学生にも関わらず当時の KiKi は背伸びしたい年頃だったためか、はたまた今ほど「少年文庫」そのものが充実していなかったためかは定かではないのですが、KiKi の父親の蔵書である「日本文学全集」の中の1冊として読んだことを思い出します。  当時の KiKi には坊っちゃんの「べらんめい調」がなかなか受け容れがたくてねぇ・・・・・ ^^;

かと言って「狸」も「赤シャツ」も好きにはなれなくて、「マドンナ」に至っては理解の外にある女性で、比較的好意的に受け容れることができたのが「山嵐」。  で、実は一番理解できたのが「うらなり君」だったんですよね~。  で、いずれにしろ当時の KiKi にはこの「坊っちゃん」という作品がいいんだか悪いんだかまったくわからなかったことをまずは白状しておきたいと思います。

 

とっても有名な冒頭の「親譲りの無鉄砲でこどもの時から損ばかりしている。」がそもそも KiKi の混乱の大元なんですよ。  要するに「坊っちゃん」はその無鉄砲を反省しているんだか、「てやんでぃ!  それでもこれがおいらだ!」と開き直っているのかさえわからない・・・・ ^^;  しかも、いきなりそれを「親譲り」と人のせいにしているし・・・・・。  この物語の中で坊っちゃんはある種の信念をもって田舎を、他人をある意味見下し、イヤミな「赤シャツ」に天誅を加えるわけだけど、それが痛快と言えば痛快だけど、その行動を大人になって「あれは損な行動だったなぁ・・・・」と思っているのかどうかさえわからない。

そういう意味では、文体のテンポにのってサラサラと読む物語ではあるかもしれないけれど、KiKi にとってさほど魅力的な物語ではありませんでした。

で、今回、大人になって、「少年文庫版 坊っちゃん」を読み返してみたところ、子供の頃には感じなかった別のことを考えている自分に気がつきました。  漱石と言えばどこか皮肉屋的なところがある作家だけど、彼の「皮肉性」はある種の「孤独感」の変形バージョンなんだなぁということです。  この物語の主役の「坊っちゃん」は親からも愛されず、場はずれな土地に流れてきた(流されてきた?)人間特有の疎外感を抱えていることに気がついちゃったんですよね~。  子供時代には単なる都会人の田舎嫌いにしか見えなかった言動の一つ一つが「余所者」という負い目・・・・というか、寂しさそのものに感じられます。  だからこそ、唯一自分を愛してくれたばあやの「清」に拘らずにはいられない。

そう感じながら冒頭の「親譲りの無鉄砲でこどもの時から損ばかりしている。」を読み返してみると、そこにそこはかとな~く、「親から愛情はかけてもらえなかった代わりに、妙ちくりんな気性だけは受け継いじまった」というようなある種の諦観みたいなものまで感じられ、何だかじ~んときてしまうのです。(苦笑)

で、そんな感じ方で読み進めていくと、山嵐のことをある種手前勝手に「味方」と思い込んだり、「宿敵」とみなしたりするのも、「わかってほしい!」 という潜在的な願望の裏返しなんだろうなぁ・・・・と思わずにはいられません。  「坊っちゃん」が「山嵐」に拘っているほどには「山嵐」は「坊っちゃん」に拘ってはいないようにも感じられるしねぇ。  

孤独を抱えているから、あれやこれやと自分の中だけで色々なことを考え、結果的にある種の妄想的なものも抱くし、若干穿ったような妙な観察眼も身につける。  そんなガキっぽい正義感にあふれた「坊っちゃん」の姿は爽快・痛快というよりも痛々しく感じられます。

結構深いなぁと思ったのは漱石の生きた時代とは切っても切れない歴史的大事件「日清戦争」や「日露戦争」について触れられているくだりです。  どちらの戦争に対しても、当時の世の日本人の大半が浮かれているのに対してどこかよそよそしい態度を示している「坊っちゃん」の姿に、「平和主義」とは別の観点からの「厭戦思想」が垣間見えるような気がしました。  

最後に・・・・・

今回は「少年文庫版 坊っちゃん」を読んでみたわけですが、どうも昔読んだ「坊っちゃん」と何かが違うんですよね~。  もっとも今回は過去に読んだ本と並べて読み比べてみたわけではないので、どこがどう違うかは言い表せないんですけどね。  巻末の編集部の付記によれば、「岩波書店発刊の『漱石全集第2巻』を底本とし、読みやすさを考えて、かなづかいを現代かなづかいに改め、適宜漢字をひらがなに直すなどの表記変え」を行ったとあり、さらには「本文中の表現については、当時の歴史的背景などを考慮して、原文尊重の立場からそのままとした」とあるので、とくに抄訳であるとか、言葉そのものを置き換えたわけではないようなのですが・・・・・。  かなづかい1つでこんなに印象が変わるものなのか、はたまた子供には馴染みにくかった文体がこの年齢になると抵抗なくなったのか、そのあたりも興味深いなぁ・・・・と。  今度、実家に帰ったら、必ず父の蔵書「日本文学全集」をもう一度紐解いてみようと思いました。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月12日 06:47に書いたブログ記事です。

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