走れメロス 富嶽百景 太宰治

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一昨日もお伝えしていたように、ここ最近、KiKi の「岩波少年文庫読破企画_日本文学の巻」が続いています。  で、今日の読了本はこちらです。

走れメロス 富嶽百景
著:太宰治  岩波少年文庫

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友情の究極の姿を描き感動を呼ぶ「走れメロス」、「富士には月見草がよく似合う」の名文句で知られる「富岳百景」、日本昔話を意表をつく展開で語る「お伽草子」や「女生徒」など、短編の名手太宰治による、ユーモアと明るさを秘めた8編。  (文庫本裏表紙より転載)

これまた久々の太宰作品です。  太宰治の作品は多感だった(だろうと思われる)高校時代に結構はまって、片っ端から手を出して読んだことがありました。  で、その頃はある種の妙な感性の一致を見出したことにより、彼の世界観をすっかりわかったつもりになってしまい、それ以降、再びページを開いてみようと思わなかった作家の代表の1人でもあります。  ま、そんなわけですから、今回実に○0年ぶりぐらいに、岩波少年文庫版の太宰作品を読み返してみることになり、正直、ちょっとした期待で胸が弾むのと同時に、不安もありました。  高校時代の KiKi を魅了した作家ということは、今の KiKi にとってはあんまり感銘を受けない作家であるという可能性が高いということになってしまうので・・・・・ ^^;

で、読み終わってみての感想ですが、「走れメロス」はまあ、可もなく不可もなく。  富嶽百景は KiKi の出身が静岡県であるということもあり、作品そのものに対する感慨よりもある種の郷愁を誘われた(実は中学生の頃、美術の時間に富士山の写生をしたことがあり、その際にわざと「月見草」を入れたことがあった)という感じ。  太宰に嵌った高校時代の KiKi なら大いに共感した「女生徒」は今の KiKi にとっては何となくメンドクサイ感じ・・・・・(苦笑)。  魚服記も昔だったら妙に感情移入したように思えるけれど、今の KiKi にとっては読み流す作品・・・・・っていう感じでした。

そんな中、昔の KiKi なら読み流して終わってしまっただろうと思われる「お伽草子」(浦島さん & カチカチ山)と、同じく昔の KiKi なら、眉根をしかめてしまってあまり味わおうとしなかっただろうと思われる「畜犬談」には妙に心惹かれるものがありました。    

日本人なら誰もが知っている「浦島太郎」の物語を下敷きにした「浦島さん」と同じく「カチカチ山」の物語を下敷きにした「カチカチ山」。  これはどう読んでも「大人のための浦島太郎」 & 「大人のためのカチカチ山」っていう感じなんですよね~。  それぞれの童話を、素直に字面どおり、もしくは耳から入ってくる言葉どおりに受け容れた子供時代。  でもね、よ~く考えてみるとね・・・・・っていう感じの物語。  「浦島さん」で浦島太郎に助けられた亀の種類を特定するあたりから、KiKi は思わずニタリとしちゃったし、竜宮城へ行く前の浦島さん vs. 亀の禅問答チックな会話も面白い。  

「浦島さん」に輪をかけて、これは大人にしか通じないだろうと思われるのが「カチカチ山」の狸 vs. 兎の関係性に関する記述です。  子供時代ならこの二者の関係性は、漠然と・・・・ではあるけれど、悪(狸) vs. 善(兎)っていう感じで理解しちゃっていたし、まあ、それがいってみればお約束の解釈だったはずのものが、ここでは狸 ≒ 今で言う KY で清潔感を失った中年醜男になぞらえられ、兎 ≒ ちょっと見綺麗で優しげなんだけど実は奥深~いところに残虐性を秘めている若い娘 という関係性に置き換えられていて、それに躊躇もなく「なるほど~、うんうん、わかるわかる・・・・」と屈託なく言えちゃうのは KiKi がこの年齢まで経てきた♀だから・・・・・だと思うんですよね~。  

そして、これと同じ、ちょっとブラックユーモア的な要素のあるお話で、何となく「クスリ」と笑えちゃうのが、「畜犬談」です。  だいたいこのお話は冒頭からして何だか笑えちゃうのですよ。

私は、犬については自信がある。  いつの日か、必ず喰いつかれるであろうという自信である。  私は、きっと噛まれるにちがいない。  自信があるのである。  よくぞ、きょうまで喰いつかれもせず無事に過ごしてきたものだと不思議な気さえしているのである。  諸君、犬は猛獣である。  馬を斃し、たまさかには獅子と戦ってさえこれを征服するとかいうではないか。  さもありなんと私はひとり淋しく首肯しているのだ。  あの犬の鋭い牙を見るがよい。  ただものではない。  いまは、あのように街路で無心のふうを装い、とるに足らぬものの如く自ら卑下して、芥箱を覗きまわったりなどして見せているが、もともと馬を斃すほどの猛獣である。  いつなんどき、怒り狂い、その本性を暴露するか、わかったものではない。

まあ、なんと神経質な・・・・とさえ思えちゃう出だしなんだけど、そしてこの後も犬畜生の悪口やら、犬に対する恐怖心やらがあの手この手で連綿と綴られているんだけど、作者が散歩途中で心ならずも捨て犬を拾ってしまった(というより勝手に犬についてこられた)あたりから、何だか微笑ましくなってくるのですよ。  どうかすると、「これってイヤよイヤよも好きのうちっていうアレか?」とさえ思えちゃうぐらい・・・・・・・(笑)

「お伽草子」も「畜犬談」も、高校時代に一度は読んだことがあるはずなんだけど、ほとんど何も心に残っていなかったのに、今回はこの2作が殊のほか気に入ったことを思うと、何だか不思議な気持ちがするのと同時に、「年輪とはかくも鮮やかにその軌跡を残すものなのか?」とちょっと愕然とします。  今の KiKi が「斜陽」とか「人間失格」とかを読み返してみると、どんなことを感じるのだろう・・・・・。  それを知りたいようでもアリ、知りたくないようでもアリ、ちょっと複雑です。

ただ・・・・・・・

今回これらの太宰作品を読み返してみて思ったこと。  ひょっとしたら高校時代の KiKi は例えばその「斜陽」というタイトルや「人間失格」というタイトルに、作者が作品に込めた以上の何かを勝手に思い描き、そのある種の「幻想」というお化粧道具で作品世界を妙に美化させながら太宰治の世界観に浸っていたところがあったかもしれないなぁ・・・・と。  これはどこかで確認してみる必要があるかもしれません・・・・・ ^^;

    

 

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月17日 14:12に書いたブログ記事です。

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