台所のおと みそっかす 幸田文

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ちょっとここのところバタバタしていて、読書も音楽鑑賞も、さらにはブログ更新もサボリ気味でした。  実際、読書の方は「読みたい気持ちはあれどもなかなか落ち着いて本を手にとることができない」状態が続いていました。  夜、寝る前には一応、お布団の中で本を開くのです。  でも、ものの5分とたたないうちに睡魔に襲われ、ふと気がつくと本を片手に電気は煌々とつけっ放しのまま寝入り、朝を迎える・・・・・そんなことが数日続いていました。  こう言うときにその5分で読んだ部分っていうのはいけませんねぇ。  ほとんど頭に印象が残っていないんですよ。  で、仕方なくもう一度読み返してみると、何となく「ああ、ここは読んだ・・・・ような気がする。」と思う。  デジャヴ感からだらける。  で、先へ進む前に寝入る・・・・の繰り返しでした。  でも、昨晩はいい音楽(?)を聴いた余韻も手伝ってか、かなりじっくりと読書をすることができました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

台所のおと みそっかす
著:幸田文 編:青木奈緒  岩波少年文庫

51FDEXV2NGL__SL500_AA300_.jpg (Amazon)

父・露伴の没後、文筆の道に進んだ幸田文。  歯切れのいい文章には定評がある。  人情の機微をつづる「台所のおと」「祝辞」、生い立ちを語る「みそっかす」、露伴の臨終を描いて圧巻の「終焉」など、孫娘青木奈緒の編んだ幸田文作品集。  (文庫本裏表紙より転載)

幸田文さんと言えば、幸田露伴のお嬢さん。  ず~っと昔、幸田露伴の「五重塔」を読んだ直後に、そのお嬢さんである幸田文さんの「父・こんなこと」を読んでみようとしたことがあるのですが、当時の KiKi にはどことなく古臭く感じられる一切合財(特に露伴さんのあれこれ)が何となくうざったくて、なかなか前へと読み進めることができず挫折したというありがたくない思い出があります。  そして当時の KiKi は日本人の女流作家の描く日常的なアレコレを言語化したものに対する興味がすこぶる薄くて、そのことが「読み進められない挫折感」をさらに助長しました。  何て言うか、生活臭が強すぎてつまんない・・・・というような感じでしょうか?

まあ、当時の KiKi は夢見る夢子ちゃんで、颯爽としたカッコイイ将来(その実際の姿がどんなものか、具体的に何をしているのか等々はおぼろげではっきりしていないんだけど・・・・・ 苦笑)を追い求めていた ので、普通の日本人の(幸田一家が普通かどうかは置いておいて・・・・・ ^^;)、普通の生活が書かれた物語というだけで何となく胡散臭く感じていたし、同時に興味もなかったのです。  だって考えてみてもくださいよ。  自分の将来は日本ごとき狭い島国には閉ざされず、世界を股にかけて、何事かを成しているはず・・・・・なのです。  まかり間違っても、普通の家の普通の主婦になっているな~んていうことはあってはならなかったのです。  生活というものが人生に直結しておらず、人生に思い描くのは何らかの「社会的成功」だったのです。  そんな子供が幸田文さんの世界に共感できるわけがない!!(笑)  

そんな KiKi が当時思い描いていた漠然としていた「カッコよさ」の正体とはどこか西洋かぶれしていて、まあ言ってみれば「海外旅行パンフレット的」であったり、「女性誌巻頭カラー海外特集記事的」だったりもしていて、実体がなかったわけだけど、逆に「世界を股にかけて活躍」とまではいかないまでも、外資系の会社でそこそこのポジションを占めるようになってきた頃からはあんなに嫌っていた「ちょっと古臭くもある日本的なもの」に目覚め始め、「人生という概念」と日々の「日本人らしい生活」がクロスし始めたのは皮肉と言えば皮肉なことだと思うんですよね~(笑)。  今回、たまたま「岩波少年文庫_日本文学シリーズ」に着手した時、幸田文さんの作品を彼女の孫娘である青木奈緒さんの手により編まれたものが岩波少年文庫にあることを知り、「今こそこれは読まなくちゃ!!」と思いました。

この本は3部構成になっており、その詳細はざっと以下のような感じです。

第1部 比較的晩年に書かれた随筆編
      ひのき(抄)  えぞ松の更新  都会の静脈
      救急のかけはし  壁つち  ちどりがけ  かきあわせる
      箱  ことぶき  三人のじいさん  金魚

第2部 圧倒的な筆力で描かれた小説編
      台所のおと  祝辞  おきみやげ  濃紺  あじの目だま

第3部 比較的初期に書かれた父・露伴と文の思い出話編
      みそっかす
        はじまり  はは
      あとみよそわか  水(抄)  経師  終焉
      些細なつらぬき

いや~、どれもこれも、昔のKiKi だったら相も変わらず「うへぇ・・・・」と言っちゃいそうなテーマ、着眼点の書き物ばかりだけど、今の KiKi にはあまりにも魅力的です。  幸田文さんと言えば和服姿の印象的な老婦人というイメージがあったんだけど、そういうファッション的な意味合いのみではなく、「自分なりのスタイルの確立した人」っていう雰囲気がビンビン伝わってくる文章なんですよね~。  ある意味で KiKi のお気に入りの梨木果歩さんをもっと古臭くして、でも古臭さはあってもナフタリン臭さはない・・・・そんな感じでしょうか。

実は今回、この本を2回読んでみたんだけど、1回目は収録されている順に、そして次はちょっとだけ間を置いて第3部 → 第1部 → 第2部の順に読んでみました。  彼女の世界観をきちんと把握して読み返したい・・・・という想いにかられちゃったんですよ。  そして、そんな風に KiKi に思わせてくれたのは巻末のあまりにも短いエッセイに打たれたからなんです。  ちょっと引用してみると・・・・

身辺の、ほんのちょっとしたことでいいんです。  例えば鏡台前を散らかしておくことがないとか、バカねという言葉は決して言わないとか、そんな些細なことでいいのです。  それを一生かけて守り続ける気になっていただきたいんです。  (中略)  つまらないことのようですが、これ、案外強い手応えになります。  些細なことでも一生かけてやりとげるのは相当な心掛けがいります。  私に1つだけ、守り続けていることがあります。  それはふきんをきたなくしておかないことです。  (中略)  目まぐるしく進む世の中です。  目を、心を奪われることばかりです。  白いふきんなどはあまりにも些細ですが、目をまわした時には、ふっとこの白をたよりに、方向をとりもどします。

この随筆を読んだとき、KiKi はようやく読書中に感じていた「彼女のスタイルとでも呼ぶべきもの」の核にあるものが何だったのか、合点したような気持ちになりました。  そして、そんな「些細なつらぬき」の大切さを文さんの身体に浸み込ませたのは、父・露伴のスパルタ式(?)家事教育であり、死生観であり、水(抄)に書かれている露伴の身のこなしの美しさだったんだろうなぁ・・・・と。

地に足のついた生活、そしてそれを微細に美しい日本語で表現した作品群。  う~ん、どうやら遅まきながら KiKi は幸田文さんの偉大さに感服しちゃったみたいです。  昔の KiKi は露伴さんの作品の方が好きだったはずなんだけど、人間、変われば変わるものです・・・・・。  

            

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月22日 14:11に書いたブログ記事です。

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