日本霊異記 水上勉

| コメント(0) | トラックバック(0)

先日「リビイが見た木の妖精」と一緒に図書館から借りてきた、現在絶版中の岩波少年文庫を読了しました。

日本霊異記
編:水上勉  岩波少年文庫

2010_Oct29_001.JPG (Amazon)

もの言うしゃれこうべ、牛に生まれ変わった人、死後の世界を見てきた人...。  奈良時代の摩訶不思議なできごとを、善行・悪行にはそれぞれの報いがあるという仏教の考え方をとおして語りかける物語41編。  (文庫本扉より転載)

う~ん、なかなかビミョーな物語だなぁ・・・・・^^;  これを読んでいて最初に思ったこと。  それは「ああ、このビミョーな感じが KiKi に日本文学より英文学を選ばせた理由だったなぁ・・・・・」と。  まあ今にして思うとそれは日本文学 vs. 英文学という対比ではなくて、説教臭い物語 vs. ワクワク・ドキドキさせてくれる物語という対比なんですけどね。  編者の水上さんがあとがきでおっしゃっているように、この「日本霊異記」という物語は薬師寺のお坊様が仏教思想を民間に根付かせるために、日本各地に伝わる説話を収集してそれに説教をくっつけた物語という成り立ちであるがゆえに、どうしても説教臭くなっちゃうんですよね~。  で、その説教臭さが何となくうざったいんですよぉ ^^;  極論すれば、最後の数行がなければもっと楽しめる物語だと思うんですけどね~。

さすがに奈良時代にあった各地の説話をベースにしているだけに、かの時代の日本人(一般人)がいかに貧しく、生と死が隣り合わせの世界に生きていたのかはヒシヒシと感じられます。  そしてそんな「生きること、生き抜くこと自体がある種の偶然であり、それが楽なことではないだけに、精神的支えが必要だった」という時代背景には改めて気がつかされます。  先日読んだ「チェーザレ 破壊の創造者」でチェーザレが堕落したキリスト教世界を嘆くセリフがあったけれど、それと大差ない世界がここにもあるなぁ・・・・と感じずにはいられません。  要するに現世での苦しみを救うための抜本的な解決法が提示されているわけではなく、前世・来世とか、死後の世界がどうしたこうしたという教え。  生きることが困難であっただけに「生き抜くためには何でもアリ」となりがちな人間を戒めるための教えという意味ではどんな宗教も似たり寄ったりだなぁ・・・・と。

 

この物語を読んでいて KiKi が一番疑問に思ったのは(まあそれが仏教の教えなんだから仕方ないことではあるんだろうけれど)、いわゆる「報い」の形の多くに畜生になって生まれ変わらなければならないという説教が多いこと。  要は「牛や犬に生まれ変わること≒悪いこと、情けないこと」という公式に則って物語が書かれているんですよね~。  現代ほど人間が万能ではなかったはずの時代であっても、どことなく畜生を蔑む・・・・というか、人間を至上のものとする思想があったということに改めて目を見張りました。  確かに牛や犬っていうのは人間に比べて寿命が短いとか、人間に労役の担い手として使われるという意味では、畜生(だいたいこの呼び名からして蔑視の心が表れているわけだけど)になってしまうということは「恐ろしい報い」として人々に受け入れやすいプロットだったのかもしれないけれど、今の時代ならいざ知らず、あの時代に於いてそれが悪いことだったのかなぁ・・・・・。  人間に生まれたからといっても決してお気楽だったわけではない時代、着る物や食べる物、住む場所にも時には事欠くこともあったような時代、「人間が一番、人間でよかった」というのは、なかなか納得しにくいものがあるように感じました。

もう1つ感じたこと。  それはこの「日本霊異記」は仏教説話集ということになっているんだけど、今回改めてじっくりと読んでみると、案外「儒教的な物語」も多く含まれているんだなぁ・・・・ということです。  これが民間伝承であることを考えると、改めて「奈良時代は仏教の時代」というある種の固定概念が覆されます。  KiKi はね、小学生の頃社会科の授業で「仏教伝来、大仏開眼」というあたりを習ったばかりのとき、あたかもある日を境に日本人の精神的支柱が右から左へふっと方向を変えたかのごとく、「仏教一色」に変わっちゃったかのように思ったことがあったんですよね~。  さすがに中学生になる頃にはそうは思わなかったけれど、教科書で習う歴史的事象のキーワードってそういう意味では、とってもミスリードされやすい部分もあると思うんですよね。  (ま、そんな大馬鹿者は KiKi だけなのかもしれないけれど・・・・・ ^^;)

その当時、こういう子供向けのものを読んでいれば、実際にはそんなシンプルなことではないことが分かったかもしれません。  あ、でも、当時の KiKi には「何が仏教的で何が儒教的なのか?」が分からなかっただろうからダメだったかもなぁ・・・・・。  でもね、そういうことを実感するには、やはりその時代その時代の書物を読んでみないと、本当の意味では理解できないような気がします。

ま、それはさておき・・・・・

多くの岩波少年文庫はかなり楽しめちゃう体質の KiKi だけど、この物語はちょっと苦手だったかも・・・・・ ^^;  今回はまだ読み返してみていないから明言はできないけれど「宇治拾遺物語」や「今昔物語」や「おとぎ草紙」なんかは楽しめるような気がするんですけどねぇ・・・・・。  これらを続けて読み比べてみて、何がどう違うのか考えてみるのも一興かな・・・・とふと思いました。  もっとも今回はこの後には図書館から借りてきた別の本が控えているので、なかなかそうもいかないんですけどね(苦笑)  でも、近い将来、この比較は是非やってみたいなぁ・・・・・。

 追記) 宮崎駿50選の中での宮崎氏のコメント

私たちが住むこの日本という島々に伝わるふしぎなお話を集めた本です。  迷信とか古くさい信仰と片づけてはいけません。  ぼくやあなたの心の奥のもっと奥の方に、今でもふしぎなものが伝わっているからです。  日本に住むひとりの人間として、こんなお話がある島なんだと知っておいていいと思います。  (2011年12月15日転記)

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/751

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年10月28日 23:47に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「海のたまご L.M.ボストン」です。

次のブログ記事は「妖精王の月 O.R.メリング」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ