クロニクル千古の闇 4 追放されしもの M.ペイヴァー

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「クロニクル千古の闇シリーズ」も4作目まで読み進めました。  第3巻の「魂食らい」でいきなり主人公トラクの宿敵「魂食らいたち」全員と対決させられちゃったトラクですが、ここから先は1人ずつ、片付けていくお話になるのでしょうか??  ま、いずれにしろ本日の KiKi の読了本はこちらです。

クロニクル千古の闇 4 追放されしもの
著:M.ペイヴァー 訳:さくまゆみこ 画:酒井駒子  評論社

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「氏族の掟に従い、おまえをハズシにして追放しなくてはならん」  ...胸に刻まれた邪悪なしるしを見られてしまったトラク。  氏族からはずされ、追われる身となる。  トラクに寄り添ってくれるのは、オオカミのウルフだけ。  すべては<魂食らい>が仕かけた罠なのか?  次々と明かされる驚くべき秘密とは?  ―想像を越える面白さのシリーズ第4弾。  (単行本扉より転載)

前巻でトラクの胸に刻まれた「魂食らい」の刺青が呼び起こすトラクの悲劇。  ああ、あんまりだ!と思う気持ちがある反面、とにかく氏族を無事に生き永らえさせるためには、トラクを「ハズシ(村八分みたいなものだけど、森で氏族に属するものに出会うことがあったら抹殺される!)」にしなければならなかった人たちのことも、理解できないわけじゃない・・・・・。  それにしても未だにトラクは青年ではなく少年なのに・・・・と思うと胸が痛みます。  本当は「生きる」って「生き抜く」ってそれだけで大変なことなんだと改めて感じさせられた1篇でした。  

この第4巻でもう1つ考えさせられたのは「群れ」というものがどういうものか?ということです。  簡単に言ってしまえば人間の「群れ」がこの物語の中の「氏族」と同義だと思うんだけど、トラクが母親から「氏族なし」とされたのは何故か?  「オオカミの群れ」と「兄貴とのちっちゃな群れ」の間で揺らぐウルフの気持ち、そして「ハズシ」という掟を作らなければならなかったこの時代の「氏族」たちの群れ意識。  そこには「隣は何をする人ぞ」世代の現代人には計り知れない「生き抜くための知恵」があったことを思うと、「個人の時代」であることが果たして幸せなことなのか否かを考えさせられます。

   

トラクの魂が病んでしまうのは、胸に何らかの妖術と共に刻まれた「魂食らい」の刺青の傷のせいもあるだろうし、今号での敵、セシュルの強い魔力のせいもあるかもしれないけれど、やはり一番の問題はトラクが「ハズシ」となり、それまでは自己のアイデンティティの1つであったはずの「狩るもの」であったのが「狩られるもの」に変わってしまったその変化と、支えとなってくれる存在を失った孤独感が大きいと思うんですよ。  例えば、KiKi は一時期体調を崩して、お仕事をやめて、下手をすると一日中誰とも話をしないことがあったんだけど、ふと気がつくとTV相手に独り言を言っている自分に気がついて呆然としたことがあったんだけど、そのもっとひどい状態なわけでしょ。  

人は自分という存在を認識するためには、比較対照という意味でも、相談相手という意味でも他者の存在が絶対に必要だと思うんですよね。  共同作業をするという便宜的な意味だけじゃないと思うんですよ。  人がいて、自分とは異なる考え方を口にするから、自分の考え方・価値観がどこにあるのかを明確に知ることができるし、人が語る自分像を聞くことにより自分が実在していることを感じるし、人の鼓動や温もりを感じることにより、自分の生命を感じることができる・・・・・  KiKi はそういうものなんじゃないかな?と思っているんだけど、トラクは「ハズシ」になってしまい、誰かに会えば「狩られる存在」でしかなくなってしまったわけです。  これって「自分は何者か?」がまったく分からなくなっちゃうには十分すぎる試練だと思うんですよね。  

正直なところ、最後の最後にフィン=ケディンがトラクの「ハズシ撤回宣言」 & 「養い子宣言」を発したときには、ちょっと唐突な感じがしたけれど(ここで、それを言えるなら、なぜもっと前にかばってやれなかったのか?)、大切なポイントだったのは、トラクの胸の傷を見つけ、誰よりも執拗にトラクを追い詰めようとしていたイノシシ族の「アキ」を味方につけることができるようになったことだったのかなぁ・・・・。  トラクが「魂食らい」と戦う者であることや、多くの氏族を危機から救ってきたのは、これまでの巻でもはっきりしていたことだから、この第4巻でセシュルと戦ったことや、これから起こる洪水を皆に知らせたのがトラクだったから・・・・というのではちょっと根拠としては弱いような気がしてしまった・・・・・・。

最後に・・・・

この物語の中の謎のひとつ、レンがどうして魔導師になることをあんなにも拒否していたのかがようやく明らかになりました。  親から譲られた才能って、厄介なんですよねぇ・・・・・。  まして、その親が「魂食らい」のセシュルだというんだから、それはレンにとっては重過ぎるほどの重荷だったんでしょうね。  でも、それでもやっぱり血は争えないし、いずれはレンはその運命を受け入れ、母親とは違うタイプの魔導師になっていくんだろうなぁ。  彼女が魔術の勉強よりも狩人であろうとしてきたのは、ひょっとしたら来るべき母親との対決を心の奥底のどこかで覚悟していたからだったのかもしれません。  決してレンは「魔導師になる運命から逃げるため」だけに、狩人をしていたんじゃないと思いたい・・・・・。  それはあまりにも悲劇的なことではあるけれど・・・・・・。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年11月29日 23:09に書いたブログ記事です。

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