クロニクル千古の闇 3 魂食らい M.ペイヴァー

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「クロニクル 千古の闇」シリーズも3巻目です。  全6冊ということはちょうど折り返し地点。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

クロニクル千古の闇 魂食らい
著:M.ペイヴァー 訳:さくまゆみこ 画:酒井駒子  評論社

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「兄貴、助けて!  どこにいるの?」  ―人間の魂を罠にかけるという恐ろしい<魂食らい>。  その<魂食らい>が、トラクの大切な弟、オオカミのウルフをさらっていった。  いったい何のために?  トラクとレンは、ウルフを追って、凍りつく極北の地へ足をふみ入れる。  <ヘビの目>と呼ばれる場所でふたりが知った衝撃の事実とは?  ますますおもしろくなるシリーズ第3弾。  (単行本カバーより転載)

第1作が森、第2作が海、そしてこの第3作では氷河地帯が舞台です。  文明の力に頼り切っていて、己の持てるものを最大限利用して生き抜く術を持たない KiKi なんかでは1日ともたないような極限の世界の中、トラクの試練は続きます。  第1作、第2作と比べると色彩感も乏しく、寒さのためか全体的にくすんだトーンのまま進む本作。  何となく神秘的な雰囲気も前作までに比べると弱め・・・・のような気がします。  ま、これは KiKi がこの物語の世界観に馴染んできているせいかもしれませんが・・・・ ^^;  日本人の感性からすると「純粋」「純潔」の象徴とも言えるような真っ白な世界の中で行われる「魂食らい」たちの悪行(イメージカラーは黒? or 赤と黒?)のコントラストのみが浮かび上がるような作りになっているような気がします。

<魂食らい>たちに囚われていたウルフとようやく再会したトラク & レンコンビが傷を負い、その化膿しきった傷により命をも危うくさせているウルフの尻尾を切り落とすシーンは衝撃でした。  と、同時に KiKi は物語とは全然関係ないことを考えていました。  狩猟犬の一部の犬種では今も尻尾を切り落とす行為が行われていて KiKi はこれまでそれを「人間のエゴ」「悪魔に魂を売り渡す行為」ぐらいに考えていたんだけど、これもひょっとしたら必然性のある行為だったのかもしれないなぁ・・・・と。

確かに現代人が行っている尻尾を切り落とす行為の目的は「ドッグショーなどでよい成績を残すため」だったりしているという話もあって、狩猟犬でありながら狩りとは縁のない生活をしているにも関わらず必然性がわからないなか、尻尾を切り落としていたりもするので、それはやっぱり褒められた行為ではないような気がするけれど、ず~っと昔、トラクたちが生きていた時代、犬が人間の狩りのお供をしていた時代であれば、その狩りの最中に傷を負った犬の尻尾を「命を守るため」に切り落としたこともあったかもしれない・・・・。  いえそれ以前に傷を負いやすい尻尾を最初から切り落としておくこともあったかもしれない・・・・・・と。

 

もう1つ感じたのは、この物語ではトラクやレンは善のサイド、<魂食らい>たちは悪のサイドという二元的な対立構図がお約束のように描かれていて、ついでに<魂食らい>たちはトラクの父親の仇だったり、ウルフに必要以上の傷を負わせるような残忍さを秘めていたりするわけだけど、<魂食らい>たちには<魂食らい>たちなりの正義がやっぱりあるんだなぁ・・・・・と。  それは決して万人受けする正義ではないかもしれないけれど、そしてフィン=ケディンがあっさりと言い切ってしまっているように、「支配する」ことが彼らの目的に変わってしまっている部分もないわけではないけれど、彼らが求めていたものはひょっとしたら現代人の生活を成り立たせている考え方とさして違いはないのではないか??  そんなことを感じました。

小さな氏族(集落)でそれぞれが違う生き方をする。  これは「周りの環境に合わせて順応しながら生きる」生き方だと思うんですよ。  生きる場所が異なれば生き方も変えなくちゃいけない。  それが氏族の文化を育み(食べるものが異なる とか 着るものが異なる とか 住まい方が異なる とか 信仰するものが異なる とか、とか、とか)、つましくも美しく生きる生き方に通じていくわけだけど、それをもっとグローバルに広げようとしているのが<魂食らい>たちが理想とする生き方とも読めるわけですよ。  誰もが同じようなものを食べ、誰もが同じようなものを身に纏い、誰もが同じような家に住む。  当然、生きる環境(≒ 自然環境)が異なるわけだからそれを制圧する力も必要で、電気もガスも必要で・・・・・。  ほ~らね、今の日本人の暮らし方とそっくりじゃない!!(笑)

最後の最後、レンがやろうとしていた「悪霊 & それを支配できるパワーの源、ファイアオパール」もろともクレバスに飛び込んだコウモリ族の魔導師(≒ 魂食らいの1人)を評して、トラクは

あの人は、まったくの悪人じゃなかったんだな。  芯からの悪人ではなかったんだ。

と語るけれど、ひょっとしたら他の<魂食らい>たちにも彼らなりのバックグラウンド、こだわらざるをえないもの、善意の欠片・・・のようなものが、あるのかもしれない・・・・・。  そんなことを感じました。

何が善で何が悪なのかは実はわからないことって多いと思うんですよね。  誰もが自分なりの正義・正しいと思えることを持っている・・・・・。  それだけに人の世はややこしいし、善悪二元論では片付けられない。  そんなことを感じました。

さて、引き続き第4巻へ・・・・・といきたい気持ちはヤマヤマなのですが、その前に、今回吾妻郡図書館で借りてきた本の中に上橋さんの「獣の奏者 外伝」が1冊紛れ込んでいます。  たまたま今号でトラクは「重い苦悩」を抱え込んでしまったということもあり、ちょっとだけ息抜きをしたい気分でもあるところなので、「クロニクル 千古の闇」はちょっと休憩して、「獣の奏者」の世界へ戻ってみようと思います。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年11月25日 23:38に書いたブログ記事です。

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