歌う石 O.R.メリング

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図書館から借りてきた O.R.メリングの3作品。  最後の1冊を読了してしまいました。  ああ、何だか淋しいような、終わってしまうのが勿体ないような・・・・・ ^^;  こうなってくると居てもたってもいられず、未読の「夏の王」とか「夢の書」なんかも、次々と読み進めたくなる KiKi の困った病気が発症してしまうのです。  で、ふと気がついた時には Amazon の Market Place でO.R. メリング作品を大人買いしていました。  結局 KiKi はケルトものが半端じゃなく好きなんですよね~。  

今回はこれ以外にも図書館から借りてきちゃった本があるだけに、この勢いのまま「マピノギオン」に突き進めないのが残念でたまらないけれど、ま、それはさておき、本日の KiKi の読了本をご紹介しておきたいと思います。

歌う石
著:O.R.メリング 訳:井辻朱美  講談社

5137C5AW4RL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

ここがわたしの故郷なのかしら。  さもなければ、わたしの両親の生まれた場所?
自分のルーツを探しにアイルランドへ行ったケイは、山の中で見つけた巨石のアーチをくぐったとたん、4つの民族が対立しあう紀元前のアイルランドの世界へ迷いこみ、まもなく記憶をなくした少女アエーンと出会う。  そして、助けを求めて仙境の賢者フィンタン・トゥアンを訪れたふたりは、助けてもらうかわりに、トゥアハ・デ・ダナーン族のいにしえの4つの宝を探す旅に出る。  時を越え、女魔術師となったケイと、謎を秘めたアエーンの運命は......?  (単行本扉より転載)

これは Hit! です。  「妖精月の王」も「ドルイドの歌」もよかったけれど、乙女チックなきらいがあるところがちょっとビミョーだったのに比べると、この物語にはさほどそれを感じません。  他の2作同様プチ・ハーレクイン的な要素もなくはないんですけど、それ以上に叙事詩的な物語進行のパワーのほうが強くて、どちらかというと「歴史大河小説」を読んでいるような気分でした。  と、同時に過去につまみ食いをして記憶の欠片になってしまっている「侵略の書」のそこかしこが想い出され、読み進めながら空想の世界をあっちへ行ったりこっちへ行ったりすることができたという点も、KiKi にとっては嬉しいことでした。  他の2作よりもどことなく地味目な表紙も、この物語の世界観にはピッタリだなぁ・・・・と(笑)。    

読み進めているうちに感じたことの1つに、KiKi の大好きな梨木香歩さんの紡ぐ世界観と、この物語の紡ぐ世界観が微妙に似ているなぁ・・・・ということがあります。  それは梨木さんが英国留学していたから・・・・とか、彼女の描く世界にどことなくちょっと古めかしいイギリスっぽさがあったりするから・・・といったような表層的なことではなく、「この世のありようと、そこでの人間というある種しょうもない生き物の存在の対比」とか、「自然から受け取るある種のメッセージに対する感性」とか、そういう点がものすごく近しいような、そんな気がするんですよね~。

 

どちらの作品に登場する女性も、ある意味で肩の力が抜けていて、浮ついたところがなくて、ものすご~く真摯に「自分の存在」を捉えようとしていて・・・・・・。  でもそれは今風な「自分探し」とはちょっと違うような気がするんですよ。  何て言うか当然自分の人生の中では自分自身が主人公なんだけど、その主人公へのなり方が違うんです。  主人公になることができる別の、外の舞台を求めているが今風の「自分探し」のような気がするんだけど、この作品の中のケイも、そして梨木さんの作品に出てくる女性たちも、外の舞台を求めるのではなく、今目の前にある自分が存在している舞台の中で自分が果たすべき役割を探している・・・・とでも言いましょうか。

ケイの場合、確かに彼女は自分が暮らす現代のアメリカから時空をこえて古いアイルランドの時代へ出かけていくことになるわけだけど、それって自分が主役として輝くことができる(と夢見る)舞台を求めて旅立ったわけじゃない。  そして、そのアイルランドで出会った賢者の言葉に従ってこの冒険譚を始めることになるわけだけど、その賢者の言葉に彼女の自分探しの本質がよ~く現れていると感じるんですよね~。  曰く

そなたらが真心をもって求めれば、そう、真実に対する直感をもって求めれば、宝のほうがそなたらを見いだすであろう。

人生そのものと同じではないか。  自分が何を探しているかは、向こうが自分を見つけてくれるまではわからんものじゃ。

彼女たちは自分がヒロインになることは欲していないんですよ。  ただ知りたいのは「自分が何者で今、自分は何を成すべきか?」だけなんですよ。  自分を輝かしいヒロインに仕立て上げてくれる舞台な~んていうものには興味の欠片も持っていないんですよ。  そして、自分よりも自分の存在している世界に存在する他者をいかに受け容れるか、が、自分を立たせることだと感じていくんですよ。  そしてその他者というのは人間に限らないんですよ。

 

  

そしてもう1つ・・・・・・。

私たち現代人は「自然」という言葉に何故か甘いイメージを抱きがちです。  それは都市生活が当たり前になってしまっている私たちのノスタルジーの変形ヴァージョンなのかもしれないし、旅行会社のパンフレット的な、絵葉書的な、観賞の対象としてしか自然を感じられない視野の狭さにあるのかもしれません。  「妖精」とか「精霊」を羽の生えたちっちゃな存在と考える風潮もその延長線上にあるような気がするし、そんな「あっちの世界の住人」を善意の塊ででもあるかのように考えたがるのも、人間の可愛い、でも困った性癖のような気がします。  でもね、こういう古い神話・伝承をベースにした物語を読むとき、常に感じられるのは「美しいだけではない」「荒ぶれる自然」という、どちらかというとあまり有難くない姿だったりします。

この物語に出てくる「見張り」は言ってみれば自然の寓意でもあると思うんだけど、実は KiKi はティンカーベルみたいな妖精よりも、この「見張り」のような巨人系の「あの世のもの」の方にものすご~く興味を惹かれるんですよね~。  なんていうか、「荒々しさの中に真実がある」、そんな気がするんですよ。  そして、本当の美っていうのは、パステル調のもやもやっとした中ではなくて、荒々しい原色系の中にあるような、そんな気がするんですよ。  この「歌う石」の表紙の絵の、石造りのアーチの向こうに広がる薄青黒い世界と、そのアーチの配されている茜色の世界という、明確なコントラストの中に美の本質がある・・・・・・。  そんな気がします。

ちょっととりとめのない文章になってしまいました。  でもまあ、この本を読みながらかなり多くのことをあれやこれやと考えた証左として、このエントリーを残しておくことにも、まあ、何らかの意味があるかな・・・・・と(笑)。  

さて、このまま O.R. メリングの作品を読み続けたいところではありますが、今日から暫くはまた「岩波少年文庫」の世界に戻りたいと思います。  明日はキングスレイの「水の子」の予定・・・・・です。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年11月 2日 12:55に書いたブログ記事です。

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