ぼくがぼくであること 山中恒

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図書館の返却日までに読み終えなくちゃ!と頑張っていた最後の1冊を読了しました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

ぼくがぼくであること
著:山中恒  岩波少年文庫

514J04S36RL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

優等生ぞろいの兄妹のなかで、ひとりダメ息子の秀一。  小言ばかりの母親にいや気がさした秀一は、家を飛び出し、ある農家へ転がりこむ。  つぎつぎと起こるスリリングな事件、大人との激しいぶつかり合い - 力強く成長する少年の姿を描く。  (文庫本裏表紙より転載)

これは面白い!!  面白い・・・・のと同時に多くのことを考えさせられる物語でした。  でも正直なところ子供時代にこの本を読んでいたら、KiKi には秀一の気持ちが今ほどは理解できなかったような気がします。  なぜなら、KiKi は秀一タイプの子供ではなく、どちらかと言えば妹のマユミタイプの子供だったと思うので・・・・・。  つまり、そこそこ勉強もできるし、大人の気に入る子供を演じることもできる子供。  まあ、マユミとの違いがあったとすれば、「自分を可愛く見せる」というセンスには欠けていた(少なくとも KiKi は外見的な可愛さにはあまり重きを置いていなかった女の子だったので 苦笑)し、マユミほど陰湿じゃない(少なくとも告げ口をするのはあまり好きじゃなかった)ぐらい・・・・かも ^^;

母親のヒステリックさ加減はちょっとオーバーな気がしないでもなかったけれど、KiKi の母親世代(物語の母親と近い世代)の専業主婦で子供に期待の多くを寄せているタイプっていうのは多かれ少なかれ、この物語の母親と同じような部分を持っていたような気がします。  本人は子供と家族のために一所懸命なんですよ。  でも、ある意味で世間知らずで、ある意味で閉鎖的で、ある意味で理想主義者。  だからいわゆる「いい子」のステレオタイプには甘くて、秀一みたいなタイプの子供は大の苦手なんですよね~。  で、秀一が女の子だったら、親にも負けない口(物言いと言うか、お喋りと言うか)で自分を表現することもできたりするんだけど、残念なことに秀一は口下手な男の子なわけですよ。  だから、自分を、自分の考えていることや感じていることをどう表現したらいいのか、わからないんですよね~。  で、子供のほうが黙っていることをいいことに、親の方はガンガン押し込んでくるし、対する子供はとりあえず今この時点での嵐が通り過ぎるのを待っている・・・・・。

 

子供時代の KiKi だったらダンマリを決め込んで首をすくめているような秀一にイライラしちゃっただろうし、母親のヒステリーにはうんざりして終わっちゃったかもしれないけれど、大人になった今の KiKi には秀一の気持ちも痛いようにわかるし、同時に黙っている息子にイライラを募らせる母親の気持ちも何となく理解できるような気がします。  一所懸命、子供のためになること・・・・と本人は信じて疑わないアドバイス(というより小言? 苦笑)をしているのに、相手がのれんに腕押し、糠にクギじゃ、そりゃどんどん理性を失ってヒステリーおばさんになってしまうのも無理はないように思っちゃうし・・・・(笑)

でもね、同時に「家出願望」とか「親に秘密を持つ」とか、子供なら誰もが見に覚えがあるできごとを、実行に移している秀一に対する羨望にも似た気持ちも同時に湧き上がってくるところがこの物語の凄いところ・・・・・。  そして、家を出ることによって、日頃は鬱陶しいと感じていた家族に、実はありとあらゆる面で守られたり、軌道修正されたりしていることの有難さがわかるというのも素敵な筋立てだと思います。  実際、KiKi も高校生まで親と一緒に暮らしていて、大学から1人暮らしを始めたんだけど、1人になってみて初めてわかったことって一杯あって、そのときに考えたり感じたり悩んだり落ち込んだりしたことが今の KiKi の糧になっていると思うし・・・・・・。

ただね、この物語を読んでみてちょっと切ないなぁ・・・と感じてしまったのは、最後の最後、ふと気がつくと母親と秀一は立場が逆転しちゃっているんですよね~。  で、これが秀一の長兄の年齢だったりなんかすればそれはそれで「さもありなん」と思えちゃうんだけど、秀一は未だに小学生なんですよ。  まあ、長らく「家族の中のみそっかす」だった子であるだけに、成熟が早いという部分もあるだろうし、「家出」というスペシャルな体験やら、「ひき逃げ事件遭遇 & 悪人との闘い」というこれまた尋常ならざる体験のなせる業・・・・という部分もあるんだろうけれど、それでも小学校6年生という年齢でありながらも、ある意味、「子供時代の終わり」を迎えることになってしまった感のある秀一が頼もしくもあり、可哀想でもあり・・・・・。

おふくろさんはおれの顔なんか、見たくないって言うかもしれない・・・・。  でも、おれはこの顔を見てもらおう。  おふくろさんはおれをなぐるかもしれない・・・・。  でも、おれはよけないでおこう。  おれは、やっぱりおふくろさんの子だということを、わかってもらおう。  そしてやっぱり、おれはおれであることも、わかってもらおう!

こんなことを考えるのは彼が男の子だから・・・・なのかもしれません。  ある意味八つ当たりで母親からぶたれて拗ねまくっていた優等生の「マユミ」ちゃんとは対照的です。  秀一君のこの最後のモノローグを読んだとき、KiKi は小学生までは子供っぽくしか見えなかった同級生の男の子たちが、中学生になったら急に大人びてきたことを思い出しました。  と、同時に、昔からよく言われることだけど「母親と息子」という結びつきの強さも感じました。  ひょっとすると「母親と息子の結びつき」を強くするのは、小学校時代にはあまりにも頼りなくてひ弱感を漂わせている男の子が中学生ぐらいになるぐらいの頃に、いきなり成熟して男になって、立場が逆転し、互いを言葉ではない別の「肌感覚」とでも呼ぶべき何者かによって、結びつけることによるものなのかもしれません。  

学生運動華やかなりし時代に書かれた物語で、それにまつわるエピソードも出てくる割には、平成の現代にも通じる何かのある物語だと感じました。  ひょっとしたらこの物語、息子とうまく会話ができなくて「自分の子育てに自信が持てずに」悩んでいるお母さんにこそ読んで欲しい物語・・・・なのかもしれません。

いずれにしろ、KiKi はこのブログでも何度もお話しているように、常に「自分の立ち位置」というか、自分と他者を客観的に見つめながら物事を判断するものさしのようなものを持つことを自分に課している人間なんですけど、未だぼんやりとしているとは言え、それを小学生にして成し遂げつつある秀一に驚愕するばかりです。  でも、それが大切であることを悟ることが「自分が自分であること」を意識する第一歩なんですよね、きっと・・・・。      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年11月 4日 23:59に書いたブログ記事です。

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