ともしびをかかげて R.サトクリフ

| コメント(0) | トラックバック(0)

サトクリフのローマ・ブリテン四部作の三作目です。  ふぅ、何とか年内にこの4部作 & 岩波少年文庫のサトクリフ・ラインナップを読了できそうです ^^;  それにしてもこれは傑作だなぁ!!  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

ともしびをかかげて(上)(下)
著:R.サトクリフ 訳:猪熊葉子  岩波少年文庫

51m3TBdwMSL__SL500_AA300_.jpeg  51-Xzu+53DL__SL500_AA300_.jpeg
      (Amazon)                            (Amazon) 

衰退したローマ帝国は、450年にわたるブリテン島支配に終止符をうつ。  地方軍団の指揮官アクイラは、悩んだ末に軍を脱走し、故郷のブリテン島にとどまることを決意したが...。  意志を貫いて生きることの厳しさ、美しさを描く。  (文庫本裏表紙より転載)

山中にたてこもるブリテンの王子アンブロシウスのもとに集い、来るべき闘いにそなえるアクイラたち。  勢いを増す「海のオオカミ」ことサクソン軍との死闘の末、アクイラはなにを手に入れたのか。  ローマン・ブリテン四部作の三作め。  (文庫本裏表紙より転載)

前作「銀の枝」ではちょっと消化不良気味の感想しか抱けなかった KiKi。  そういう意味ではこの第3作を読み始めるまでは正直ビクビクものでした。  でも、「カーネギー賞受賞作品」だし、上巻の表紙の写真は KiKi 好み(?)だし、おっかなびっくりの期待を込めて読み始めたのですが、前作で感じた「中ダルミ感」は冒頭2章であっという間に吹っ飛び、この物語の世界観に吸い込まれていきました。  で、上下2巻を一気読み!(笑)  それぐらい面白かったし、魅せられたし、多くのことを考えさせられました。  「第九軍団のワシ」も KiKi の中ではかなり評価が高い作品だったんですけど、こちらの方がさらにそれを上回っている・・・・かもしれません。

前作でもケチョンケチョンの扱いだったサクソン人は今作でも引き続きケチョンケチョン・・・・ではあるものの、そこに主人公アクイラ(「第九軍団のワシ」のアクイラの子孫)の愛してやまない妹フラビアの存在と、彼女が略奪され不本意ながらも嫁ぐことになったサクソン人との間の息子、マルの存在があることにより、善 vs. 悪の対立軸からはちょっと離れ、もっと深い1人の人間の精神性・生き様というものが浮き彫りにされた、人間性回復の物語になっていることに感銘を受けました。  そいういう意味ではこれは「児童書カテゴリー」に入っている作品ではあるものの、大人が読むとさらに味わい深い作品になっていると思いました。  物語冒頭であまりにも呆気なくすべてを失ってしまうアクイラだけど、同時に彼がその冒頭で灯した「ともしび」が、物語全編で時に弱く、時に強く燃えているのが、感覚的にも視覚的にも感じられるのもすごいなぁ・・・・。  

 

今作では登場人物1人1人の人物造形も練りこまれているなぁと感じます。  主人公のアクイラは当然のこととして、彼の父親、彼の恩師、妹(フラビア)、アクイラが奴隷として仕えることになるジュートの老人ブラニ、更には空っぽになったアクイラに「生きる目的」を示唆するニンニアス修道士、アクイラが仕えることになるアンブロシウス、アンブロシウスの元に導くユージーニアス、アクイラの妻ネス、アクイラの息子フラビアン、そしてアンブロシウス軍のとっておき、クマの子アルトス、etc. etc.  この物語に登場する誰もが確かにそこに生き、暮らし、呼吸し、食し、眠っていて、誰もが「今」を必死に生きている、そんな姿がまざまざと目に浮かびます。

岩波少年文庫のサトクリフ作品(既読分)には必ず、著者と訳者とさらには第三者のあとがきがあって、これがなかなか興味深いのですが、今作ではそのあとがきを寄せている第三者が KiKi の敬愛する上橋菜穂子さんであったのは、本作を読了しての2重の喜びでした。  このあとがきも秀逸です。  上橋さんにとってはこの「ともしびをかかげて」は運命の本だったんですねぇ・・・・。  

そのあとがきの中で上橋さんはご自身のお気に入りの登場人物がフラビアとネスであることを明かされ、その理由として、KiKi がこれまた数年前からず~っと感じていたことを見事に言語化した文章を書かれています。

残酷な運命によって、温かい家庭の炉辺から強制的に引き離され、敵(あるいは異邦人)の妻にされ、子を産み、生きていかざるを得なかった2人の女たち。  子供の頃は、彼女らの「どんな状況の中でも暮らしていく」強さに打たれたのだけれど、読み返してみてはじめて、彼女らの「どんな状況の中でも暮らしていく」強さが、実は「あきらめること」によって生まれていたことに気づき、あらためてサトクリフの凄さを感じた。

「あきらめないこと」を大切なこととして描く物語は星の数ほどもある。  しかし、実際には「あきらめること」も同じくらい大切なときがあるのだ。

あきらめるのは、辛いことだ。  大切なものを手放していく決心をするのは、容易いことではない。  それでも、どうしてもままならないことに、いつまでもこだわらず、それを手放してやることで、はじめて新しいものが見え始め、心が楽になることもあるはずで、それもまた、とても大切なことだろう。

これって、以前 KiKi が「落ちこぼれ会計人の独り言」というブログで書いた「夢をもたなくちゃいけないという強迫観念症候群」に対する疑問・・・・というか、KiKi なりの意見を書いた内容と微妙にクロスしていて、特に上記太字部分なんかは使った言葉こそ若干の違いはあれども、ほとんど同じことを言っている言葉だなぁ・・・・と深く納得(笑)。  

「すでに持っているもの」を諦めて手放すというのも容易いことではないけれど、持っていもしないうちにある種の思い込みにより「拘っているもの」を諦めて手放すというのも案外人間は苦手なようで・・・・・ ^^;  でも意外と「自分がなぜそれに拘るのか?」という根源的なことに関しては無自覚だったりもするようで・・・・・ ^^;  

「夢を持つ」ことは素敵なことだし、「あきらめない」ことも素敵なことだけど、それだけが全てじゃないし、それがないからといって不幸とは限らない・・・・・。  結局、常に問われているのは「今をどう生きているか?」だし、死に際しては「いかに死ぬか?」なんだろうなぁ。

この作品は KiKi にとって、「折に触れて読み返したい作品の1つ」だなぁと思います。    

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/800

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年12月27日 23:41に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「今年のLothlórien_山小舎の三大ニュース」です。

次のブログ記事は「雪の朝」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ