ケルトとローマの息子 R.サトクリフ

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あんなに「どちらかというと苦手」と思っていたにも関わらず・・・・です。  人間っていうのはかくもゲンキンなものなのですねぇ。  今では KiKi はサトクリフ作品に嵌ってしまったみたい(笑)  まあ、これには吾妻郡図書館の影響もかなりあるんですけどね。  いえ、別にこの図書館がサトクリフ・コーナーを設けているとか、今月の推薦本みたいな形で斡旋しているというようなことではなく、1)状態のよい本を、2)KiKi の動線上に、3)見栄えよく陳列している・・・・・ただそれだけのことなんですけどねぇ(笑)  ま、いずれにしろ、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

ケルトとローマの息子
著:R.サトクリフ 訳:灰島かり  ほるぷ出版

5189163K8PL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

ケルトの戦士として育った少年ベリックは、じつはひろわれたローマ人の子どもだった。  不作と疫病の年、その原因として部族を追放され、ひとり父母の地ローマへと向かった少年を待っていた運命とは...?  自分と自分の居場所を求めてさまよう若者の成長を描く、カーネギー賞作家サトクリフ渾身の長編歴史ファンタジー。  (単行本扉より転載)

ふぅ・・・・・。  あまりにも没頭して読まされてしまったが故に、最後の1行を読み終え本を閉じた瞬間、KiKi は大きなため息をついてしまいました。  そのため息にはちょっとした安堵と、何かを成し遂げたあとに感じる充足感と、長大な歌を歌い終えた際の大きな呼吸に似たような何かが含まれていたように感じます。  この日本語のタイトルがいいですねぇ。  原題は「Outcast」(「追放者」とか「見放された者」とか上橋さん風に「流れゆく者」とでも訳せばいいのでしょうか?)。  確かに居場所を失った若者の放浪物語ではあるんだけど、「ケルトとローマの息子」というタイトルが一番しっくりくるような気がします。

この本を読んでいて KiKi はずっと昔、ある友人と語り合ったことを思い出しました。  その友人との出会いは KiKi がまだとある外資系企業でお仕事をしていた時のこと。  彼は在日韓国人。  日本で生まれ、日本語を話し(逆に韓国語はほぼ「できない」と言った方が正しいかもしれない)、ある年齢からアメリカに渡って学業を終え、日本にある外資系企業に入社した人でした。  たまたま KiKi とはとある Project で一緒にお仕事をしていました。  そんな彼とある日居酒屋で話をしていました。  そこで彼は「日本人でも韓国人でもない自分」について、さらっと語ってくれました。  たまたまその年はオリンピックだったかワールドカップだったか、そんな類のスポーツの祭典の催されていた年で KiKi は彼に聞きました。

「ねぇ、じゃあ、例えば今やっているオリンピック( or ワールドカップ)みたいな世界大会がある時、あなたはどの国を応援するの?」

これに対する彼の答えは「日本も韓国も応援しない。  応援するのは好きな選手であって、○○国代表ではない。」というものでした。  更に重ねて KiKi は

「ねぇ、じゃあ、周りがどうかは別にして、あなた自身は自分のことを何人だと考えているの?」

これに対する彼の答えは「強いて言えば Global 人かなぁ・・・・・。  僕にとって国というのは意味がないのと同じだから・・・・・・。」  というものでした。

 

同じ会社で出会ったもう1人の女性は国籍は日本にあり、今では日本で暮らしているけれど、彼女の日本での最終学歴は中学卒業で、それ以降はアメリカに渡り、向こうの大学を出て、向こうの会社に就職し、そこを辞めて件の会社で KiKi と同じ部門の所属になった人でした。  そんな彼女とこれまた居酒屋で話をしていた時のこと。

「私はパスポートこそ日本のものを持ち歩いているけれど、日本人でもなければアメリカ人でもない、いわゆる国籍不明人みたいなもの・・・・・。」

と言っていました。  彼らに共通しているのはこの物語の主人公ベリック同様に「帰属する集団がない」という意識です。  たまたま KiKi が出会った彼らはここまで Global 化した時代背景の中で、「個人主義」という考え方も浸透し、実業の世界で Manager 以上の職に就けるだけのバックグラウンドと力を持っているから生き生きと(とは言うものの、時に日本社会は彼らには息苦しいようにも見受けられるんだけど ^^;)人生設計ができるけれど、ベリックの時代にはそれが許されなかったんだなぁ・・・・と考えると、いい時代になったものだと思うんですよね。

KiKi は地方出身者で、大学生になったばかりの頃には東京生まれの東京育ちという人たちにちょっとしたコンプレックスのようなものを抱いていました。  着るものも持っているものも、会話の進め方もすべてが洗練されているように見える彼らに対して、自分はなんとどん臭いんだろう・・・・ってね。  でも、そんなコンプレックスは2年もすると消えてなくなり、社会人になってからは帰省ラッシュの混雑だけはいただけないけれど、それでも「帰る場所(田舎)がある」というその一事がどんなに素晴らしいことなのか、どんなに自分を支えてくれているのかを心の底から実感するようになりました。

どれもこれもベリックの放浪の旅に比べればちっぽけな話・・・・ではあるけれど、彼が心に抱え続ける恐怖心、猜疑心、空虚感を読めば読むほど、かつての自分が、そしてあの友人たちが思い起こされ、「頑張れ! ベリック!!」「負けるな! ベリック!!」という思いを強くしました。

それにしてもかくも重いテーマで、これでもかっていうほど主人公が痛め続けられている物語だったにも関わらず、どこかに希望を感じながら読み進めることができた秘密は何だったんだろう??  それはやっぱり彼が溺れ死んでいてもおかしくない赤ん坊だったのに生き永らえたという物語のスタートと、わずかな数とは言え彼の理解者が存在してきているという筋運びによるものだったのかなぁ。  物語の最終盤で描かれる堤防を守るための嵐との戦いが、鬱屈したベリックの内面の風景と奇妙にシンクロしながら、苦難を乗り越え克服していく姿は感動的です。  いや~、いい物語を読ませていただきました。  

はてさて、今となってみると KiKi のサトクリフ苦手意識の原因はどこにあったんだろうか??  それはやっぱり最初に手に取った「黄金の騎士 フィン・マックール」であまり楽しめなかったことと、彼女が描く「アーサー王関連の物語」がちょっと期待していたものと異なっていたことにあったのかなぁ・・・・。  何となくず~っと感じていたのは「サトクリフって題材はいいし、徹底的に調査したうえで作品をものしているのはわかるんだけど、何となく重すぎる感があって楽しむことはできないんだよなぁ」っていうことだったんだけど、あれは「若気の至り」とでも呼ぶべき傲慢な勘違いっていうヤツだったんでしょうかねぇ・・・・ ^^;

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年12月19日 12:23に書いたブログ記事です。

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