アネイリンの歌 ケルトの戦の物語 R.サトクリフ

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今日もサトクリフ作品です。  作品そのもののお話に入る前に・・・・この本の表紙って素敵だと思いませんか??  KiKi はこういう景色に何とも言えない懐かしさ、郷愁に似た思いを抱きがちなんですよね~。  樹齢何年とはわからないけれど、決して真新しい感じはしない森。  常に日が当たるわけではないから地表に生えるのは美しい苔とシダ。  1日のうちある一瞬だけこの世のものとは思えないような日差しが差し込み、凛とした空気が、大地が喜びの歌を奏でる瞬間。  こういう景色に感じるある種の安堵感故に、KiKi のLothlórien_山小舎暮らしが成立していることを改めて感じます。  ま、それはさておき、本日の KiKi の読了本はこちらです。

アネイリンの歌 ケルトの戦の物語
著:R.サトクリフ 訳:本間裕子  小峰書店

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戦にむかった三百人の兵のうち、生き残りはただひとり―。  吟唱詩人アネイリンによる、いまも伝わるケルトの叙事詩「ゴドディン」。  紀元六〇〇年のブリテンを舞台に、少年プロスパーの半生とともに、ゴドディンの世界を物語る。  (単行本扉より転載)

KiKi が高校時代の世界史で学んだ英国史では、ほんの数行で語り終えてしまっていたケルト民族(ブリトン人やピクト人)とゲルマン民族(アングル人やサクソン人)の戦い。  多くの戦の結果とその後に続く歴史以外には目を向けることさえなかった KiKi は不勉強のためこの物語のベースになっている「ゴドディン」という叙事詩の存在さえもこの本を読むまでは知りませんでした。  これで「大学時代は英文学を専攻していました。」な~んていうことは、恥ずかしくてとても言えないなぁ・・と反省することしきりです ^^;  この物語の主人公は「ゴドディン」を歌ったアネイリンでもアネイリンが歌った歌に登場する同胞隊300人の中の1人でもなく、その300人に付き従って戦場に赴いた従者のプロスパー。  この当事者でもあり傍観者でもある主人公が語るという体裁がまずは凄い!!  ある時はちょっと引きの目線で、そして又別の時は出来事真っ只中という目線で語るこの悲劇の全貌は力強いながらも、どことなく淡々としており、必要以上に感傷的にもならず、かといって他人行儀でもない不思議な魅力の文体と相まって胸に迫ります。

そしてもう1つ。  この物語の魅力を増しているのが、そのプロスパーと彼の付人奴隷、コンとの関係です。  この時代のちょっと落ちぶれたとはいえ村長(むらおさ)の息子に生まれながらも、付人奴隷と親友関係を築き、彼の口には出せない胸の奥に抑え込んだ「刀鍛冶」への道を勧めるエピソードには思わず胸が熱くなりました。  もっともこれはある意味で、プロスパーのような中途半端なポジション(付人奴隷を持ちながらも自身も300人の騎士の1人にはなりえない)に生きる者だからこそ持ち得た一種のバランス感覚の成せるわざだったのかもしれませんが・・・・・。

 

これが「ゴドディンの歌」だ。  われ、アネイリンが歌おう。

男たちはカトライスに乗りだした。  道すがらたわむれながら、
宴のあと、よろいをまとい、
われらのもとから勇ましく、朝のなかへと旅立った
死が来るより早く、その槍は死をもたらし、
その髪が白くなるより早く、死はやって来た
三百の騎兵が、ああ、ああ!
戦から帰ってきたのはただひとり

獅子のごとく、戦陣猛々しい、気高きうるわしのカナン、
かの雄たけびはどこまでも天翔け、味方を奮いたたす
その刃の前に、<海の狼(サクソン)>はイグサのごとくなぎはらわる、
その槍は電光石火
槍のむかうところ、二打の要なし、
敵の軍勢をつき破りかけ進む、石灰白色の盾をかかげて疲れを知らず、
馬は疾く走り、突進し続ける
その突撃に、刃は深く切り裂き、
誉れ欠くことなく、夜明けを迎う

これは文中にあるアネイリン作「ゴドディン」の習作(サトクリフの創作か?)なんだけど、こんな歌が竪琴のつまびきに合わせて歌われているさまを思い描くと、ことのほかこの出来事の悲惨さが胸に迫ってくるような気がします。  と同時に、哀歌(エレジー)とは本質的にはこういうものだったのかと改めて認識できたような気分です。

できれば「ゴドディン」そのものを読んでみたいなぁと思って Amazon で検索してみたんだけど、日本では(日本語訳されたもの)はないんでしょうか??  「ゴドディンで一致したものはありません。  ゴドウィンでは?」と、まったく見当違いの本を紹介されてしまいました(苦笑)

ただ1人帰ってきた戦士カナンが、それまで信じてきた自分を取り巻いていた世界に失望し、プロスパーと共にコンスタンティノープルを目指して旅立つ最後のシーンがいつまでも胸に残ります。  そしていつの日にかプロスパーのもう1人の幼馴染リネットを連れたコンが、プロスパーと共に彼の地にある姿が思い浮かぶようです。  そんな彼らを歌う歌は誰も作ってはくれないだろうけれど・・・・・・。

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2010年12月21日 10:41に書いたブログ記事です。

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