グリーン・ノウのお客さま L.M.ボストン

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さて、全6冊の「グリーン・ノウ物語」も折り返し地点を超え、第4冊目です。  そうそう!!  これこれ!!  これが子供時代にものすご~く強い印象を KiKi にもたらしたお話でした。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

グリーン・ノウのお客さま
著:L.M.ボストン 絵:P.ボストン 訳:亀井俊介  評論社

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密林に生まれたゴリラのハンノーとふるさとを追われた少年ピン。  このひとりと一ぴきが、グリーン・ノウの森で、深いきずなをむすびます。  カーネギー賞にかがやく胸にしみる名作。  (単行本扉より転載)

このシリーズを久々に手に取って、ページを追うごとに初読の気持ちをしっかり思いだせたのは、この巻が一番・・・なのかもしれません。  前巻「グリーン・ノウの川」で活躍した3人組の1人、オスカーがどこかの家に引き取られ、難民孤児収容所に1人残された格好になってしまった中国系孤児のピンと、 人間に何も害をくわえることもなく平和に暮らしていたジャングルから、ただ動物園に入れられるという目的だけのために、家族を殺され、故郷を奪われたゴリラのハンノーがロンドンの動物園で出会います。  ピンは、そのハンノーの中に自分をみてしまうのと同時に、自分とは異なり毅然として自分を貫き通そうとしている強い意思の力を感じ、畏敬の念を抱きます。  子供のころ、このシーンを読んだとき KiKi は思ったものでした。  「ああ、この子はトーリーと親友になれる子供だなぁ・・・・」と。  そして前作では旅に出ていたオールド・ノウ夫人が戻ったグリーン・ノウ屋敷の描写を読んだ時には、「ああ、やっぱりグリーン・ノウのお屋敷にはオールド・ノウ夫人がいなくちゃ!!」と。

中国系難民の子供であるピンには家族がいません。  強い絆を感じていたオスカーが去ったあと、この「所属する場所を持たない少年」が抱えていた寂しさは、ジャングルから理不尽な力で拉致されてきたハンノーの抱える寂しさと通じ合うものがあり、そうであるだけに人間とゴリラが摩訶不思議な友情のような親子のような関係を結ぶという一見荒唐無稽に感じられなくもないプロットに説得力が与えられています。  でもその説得力はともすると、胸がふさがれるほどの寂しさを伴います。  

 ピンにとって、ゴリラのハンノーって、なんだったんだろう??  「自由を感じさせるもの」?  「祖国を感じさせるもの」?  「家族を思い出させるもの」?  「野生を目覚めさせるもの」?  ひょっとしたらピンはハンノーに自由な時間を(たった3日間!)を与えることで、多くの現実にがんじがらめにされている自分の不自由さを解き放とうとしていたのかもしれません。  と、同時に、逆説的ではあるけれど、自分を縛り付けてしかるべき、つながるべき家族という概念(?)をつなぎとめようとしていたのかもしれません。  だから彼らは疑似家族ごっこを営むことができた・・・・そんな気がします。  人間って不思議なもので「自由でありたい」と願いつつも糸の切れた凧のようになってしまうとそれは不安で、「どこかにつながっていたい」と思う生き物だと思うんだけど、ピンのような立場であれば、どちらもがあまりにも危うく脆くて、この相反する2つをより強く求めるものなのかもしれません。

最後の章では、ハンノーの悲劇が描かれるわけだけど、その始まりのシーンの何と美しく静謐なことか!!  今の時代の光と音に溢れた世界では決して味わうことのできない世界。  でも、光と闇と、音と静けさが同居する世界こそが、真の世界の姿なんだということを感じずにはいられません。  どこにも居場所のなかった2人が秘密裏に築いていた世界がいま、崩れ去ろうとしている・・・・・。  結末を知っているだけにこの美しさが残酷すぎて、悲しくて、胸にこたえます。  ピンが内包していたハンノーと同種の野生。  その野生を、そしてハンノーと築いた疑似家族を失うことでピンはオールド・ノウ夫人とホンモノ(?)の家族を得るに至るわけだけど、ハンノーの死はあまりにも残酷なものでした。

「(略)ぼく、だれかがほんとうにくらしている家ですんだことがないんです。大きくなってからはそうなんです。そりゃあおとうさんの家はよくおぼえているけれど、六つのときにいられなくなっちゃんです」

「じゃあ、六つのときにもう大きくなったのね。アイダはあなたが年のわりにはおとなだっていってたけれど」

「じぶんの家を出れば、だれでもおとなになっちゃうんじゃないかしら」

 

ピンとオールド・ノウ夫人が初めて会ったときのこの会話が、実は物語全体を支配していた・・・・そんなことを感じた再読でした。  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年1月10日 12:12に書いたブログ記事です。

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