グリーン・ノウの石 L.M.ボストン

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新年企画で読み進めてきた「グリーン・ノウ物語」もとうとう最終巻です。

グリーン・ノウの石
著:L.M.ボストン 絵:P.ボストン 訳:亀井俊介  評論社

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ぶあつい石の壁でできた新しいおやしき。  ロジャー少年は、この家が誇らしくてなりません。  いつまでも建っていてほしいと願う心が、やしきの未来の姿を見せてくれることに・・・・・。  (単行本扉より転載)

おやしきのすべての秘密がここに!
12世紀、まだ石づくりの家がめずらしかったころ、「グリーン・ノウ」ができました。  ロジャー少年はここを愛し、時を超えて、代々やしきにすんだ人たちと出会います。  (単行本帯より転載)

 

時代は西暦1120年、イギリスがまだ戦争に明けくれていた頃のこと。  サクソン人を征服して新しい支配者になったノルマン人の貴族が、マナーと呼ばれた領地に、お城をかねた館を建てます。  ものすごく大きな石を積み、大きな窓や暖炉や煙突をそなえた、堂々たる家です。  貴族の息子ロジャーは、この家を誇りにし、心から愛します。  そしてこれがいつまでも建っていてくれることを願うのです。  (訳者あとがきより転載)

訳者が語るこの館(↑)がグリーン・ノウのお屋敷で、その初代当主の次男ロジャーが今号の主人公です。  そしてこのロジャーが丘の上の魔法の石(お石さま)の力を借りて、未来の世界と行き来することによって、トービー、リネット、アレク゛サンダー、スーザンとジェイコブ、さらにはトーリーとオールド・ノウ夫人と出会い、友情を結びます。  今まで読んできたグリーン・ノウの物語5冊のカーテン・コールみたい・・・・(笑)  中国難民の子供「ピン」だけは出てこないんですよね。  それはやっぱり「血縁関係のなさ」なのかもしれませんね。  

読んでいて一番強く感じたのは「石の文化」ということでした。  悠久の時の流れの中で、風景が変わり、生活風習が変わり、人々の話す言葉から暮らし方までが変わってしまっても、この石の家だけは深い知恵を秘めて変わらない姿で建ち続けているのをロジャーと共に喜ぶ KiKi がいました。  そして以前からヨーロッパの世界遺産と呼ばれるものを目にするたびに「石の文化」 vs. 「木の文化」を感じていた KiKi にとって、頑強な素材である石を使った文化のある種の堅実さ、それを守ろうとする保守性、ある種の頑なさに、羨望に近い想いを抱きました。

この物語をず~っと読み続けてきた KiKi には懐かしい「聖クリストファーの像」がどういう事情で作られたのか、(トーリーの時代にはない)礼拝堂がどういう事情で建てられたのかを知ることができるのも楽しかった!!  奉公に出たきり消息の知れないロジャーの兄が帰ってくる場面も、消息が知れる場面も描かれていないけれど、ここに礼拝堂があったという事実が彼の帰還を物語り、何だかほっとします。

 

さて、「石の文化」 vs. 「木の文化」についてだけど、木に比べて一般的には耐久性に優れる素材である石だけど、昨日観た「世界遺産 一万年の叙事詩 第4集 世界宗教」でちょっと認識を新たにしたことがありました。  その番組では仏師(!)の吉水快聞さんという若い青年が、韓国・伽耶山海印寺ヘインサを訪問し、日本のテレビ初公開となる仏教の経典「大蔵経」を紹介されました。  この「大蔵経」は経典を印刷する版木なんだけど、夥しい量の版木が木造の蔵に納められています。  現在も残る「大蔵経」は蒙古の侵略に対して仏様の力を借りて、国難克服を祈願する意味で高麗23年(1236年)から16年間にかけて完成したものとのこと。

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八万大蔵経を納め保管するために建てられた蔵経板殿は、修多羅蔵と法宝殿の二棟の建物から構成されている。  この建物は間口60,44m、奥行き8,73mの単層寄せ棟造りで1448年の建立である。  床は木炭と石灰そして塩を重ねて盛り上げたもので、版木の保存を第一に考えた工法が採られている。  つまり多湿時には湿気を吸収し、乾燥時には湿気を建物内に放つ事で、いつでも一定した湿度を保つように考案されているのである。  ここに納められている高麗大蔵経の版木は合計81258枚あり、これが八万大蔵経と呼ばれる由縁にもなっている。  これらの版木は高麗の高宗がモンゴル軍退散を祈願し復刻させたもので、版木は縦横23,9cm×69,5cmの大きさを計り、クスノキ科の木材が使用されている。

朽ちやすい、燃えやすいことにより、石と比べればどうしても軟弱(?)な素材に見えがちな「木」だけど、人の叡智と人の手のかけ方によって、決して弱いものではなく、悠久の時を繋ぐものとなりうるものだなぁ・・・・と感じました。  考えてみれば、何も韓国の例をひかなくても日本には世界最古の木造建築物、法隆寺もあるしねぇ・・・・・。

要するに人が「大切にする」心さえ持っていれば、多くのものは残るものだなぁ・・・と。  それを表すかのようなエピソードがこの物語の最後にも出てきます。  グリーン・ノウの屋敷に住まう一族を結び付けていた「お石さま」がトーリー & オールド・ノウ夫人の時代に博物館に収められるため・・・・とは言え、もともとあった場所からクレーンのついたトラクターによって取り払われます。  その様を目の当たりにしたロジャーは悲鳴をあげることさえできず、気を失います。  

暫くしてようやく気を取り直したロジャーは言います。

つまりね。  ぼくのときには、お石さまはまだここにあって、ぼくのほうはきみに会うことができるんだ。    

変わっていくものと変わらないもの。  最近の KiKi の1つのテーマ、「変化・進歩は必要 & 大切なことではあるけれど、それがすべて良いこととは限らない・・・・・」  そんなことを改めて感じたラストシーンでした。

 

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kikiさん、おはようございます。
すっかりご無沙汰していたDillです。

昨年末、余裕があると思っていた甘い見通しを、さっぱりうらぎり、この数週間は、英語での物書きに、あっぷあっぷしてました。
そんなわけで、ボストン夫人のことも、すっかり放り投げて、kikiさんの読書にはまったく追いつけなかったので、残念でした。kikiさんの感想や、パッチワーク元年の便りも、楽しく読ませていただきました。 
私も、これから春に向けて、急ぎのことをこなしつつ、ボストン夫人も読んでいき(聴いていくですが、私の場合)たいです。

Kikiさんの次は三国志なんですね、おもしろそう!
中国の歴史は、楽しいですよねぇ。

私の方は、相変わらず、読む時間は取れそうもないので、楽しみの読書はますます朗読に頼ることになりそうです。 ボストン夫人を買うために、Audibleに入会しなおしたので、これを機に、欲しかった朗読をいくつか買うつもりです。

まずは、ボストン夫人ですが、その次は、春でちょうどいいし、ウォーターシップダウンのウサギたちをもう一回、今度は朗読で聴きたいなぁ、と思っています。

そんなわけで、お声をかけたのに、いっしょに読めなくてごめんなさい! でも、これからもどうぞよろしく。

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