北風のうしろの国 G.マクドナルド

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せっかく岩波少年文庫でマクドナルド作品を読み始めたので、いくつか手持ちの積読状態だった「マクドナルド本」を読み進めています。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

北風のうしろの国
著:G.マクドナルド 訳:中村妙子  ハヤカワ文庫

612Q3KXPH4L__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

「北風と一緒なら誰だって寒くなんかないのよ」  ― 美しい女の姿をした北風の精は、ダイアモンド少年を幻想的な世界へと誘った。  夜のロンドンの空へ、嵐の海上へ、そして北風のうしろの国へ...。  その不思議な国から戻った少年は、想像力の翼を広げ、産業革命期の生活に疲れた人々に、優しさを取り戻させてゆく。  C.S.ルイスやJ.R.R.トールキンらによって開花した英国ファンタジイの、偉大なる先駆者による古典的名作。  (文庫本裏表紙より転載)

この本を購入したのは偏にこの表紙の美しい絵に魅せられたから・・・・と言っても過言ではありません。  と、同時に KiKi にとって意外性があったから・・・・・と言う理由もあります。  と言うのもね、KiKi の漠然と抱いていたイメージとして、北風の精っていうのは女性じゃなくて男性のような気がしていたんですよ。  これはイソップ童話の「北風と太陽」の影響もあるだろうし、ギリシャ神話の影響もあると思うんですけどね。  北風の神・ボレーアスと言えばちょっと獰猛で暴力的な男神だったように思うんですよ。  だから KiKi がイメージしていたのはこの挿絵は「北風」その人(?)ではなく「北風のうしろの国(ヒュペルボレイオス)に暮らす幸せな人々」の代表なんじゃないかと思っていたぐらい!(笑)  でも、この女性、実はこの物語で描かれる「北風」その人だったんですねぇ。

KiKi にとってこれは初読の物語だったんだけど、ここで描かれる死生観には正直なところ違和感を感じずにはいられませんでした。  ただこの物語はヴィクトリア朝のイギリス人が書いたものだと考えると、さもありなん・・・・と納得できる部分もあります。  やっぱり「死 ≒ 永遠の命」と捉えるあたりはキリスト教的だなぁ・・・・と。  そういう宗教性(精神性)には若干の抵抗を感じつつも、この物語、KiKi にはとても親しみのもてるものに感じられます。  と言うのはね、そこかしこに溢れる価値観の揺れみたいなものに覚えがあるということ。  そして、ダイアモンド少年というフィルタを通して、何の固定観念にも囚われず物事を素直に見つめてみるという疑似体験をしてみたことにより、現代人 KiKi の目を通して世界を見たときとは違う一面が見えてくるような感覚の体験・・・・とでも言いましょうか、それが居心地悪くはないんですよ。  

「北風」と言うとどうしても人はあまりよいイメージを持たないと思うんですよ。  これはイソップ童話の「北風と太陽」が描く通りで、身を暖かく守るすべを持たない人にとってはできれば出会いたくない存在だし、残念なことに出会ってしまえば震え上がっちゃう。  植物もじっと耐え忍んでいる存在だし、北風が勢力を増したら災害だってもたらしちゃう。  いみじくもこの物語にも描かれているようにある種の人の人生設計を狂わせることもあれば、生命力に満ち溢れているとは言い難い生物の命を奪うこともある。  でもね、この物語の主人公のダイアモンド少年はそんな北風に選ばれた少年で、同時にそんな北風を愛し心待ちにする少年なんですよね~。  それだけで、この少年の「幸薄さ」を象徴しているようにさえ感じられるんだけど、KiKi がどんな風に感じようがダイアモンド少年自身は北風と共にあることが幸せなんですよね~。  人の幸・不幸は見た目だけじゃわからない・・・・・ ^^;  と同時に幸・不幸を測る物差しは1つきりじゃないことに改めて気づかされます。

ダイアモンド少年が北風に連れられて旅するシーンはあまりにも美しくて息をのむようです。  その美しさにほぉ!とため息をついているうちに、物語は夢想的な世界からいきなり産業革命期のロンドンに飛び、貧しい労働層の生活を事細かに描き始めます。  最初はこの対比に正直面喰い、物語としての一貫性に欠けるような居心地の悪さを感じたんだけど、読了してみて今感じるのは「北風の向こう側」と「北風のこちら側」の両方が精密に描かれていることによって、ダイアモンド少年が単なる夢見がちな男の子ではなく、物語の中に登場する実在感の乏しい存在でもなく、あの時代のイギリスに現実に生きていた少年の1人なんだと納得させられた・・・・そんな感じがします。 (因みにロンドン時代のダイアモンドの生き様を読んでいるとディケンズの小説を読んでいるような錯覚に囚われます 笑)

「貧乏になるって、そんなに恥ずかしいことなの?」
「友だちって、自分に何かしてくれる人だけなの?」

ダイアモンド少年の、この純真な問いかけが KiKi の胸にグサリと突き刺さりました。  こっぱずかしくて、大人になってしまった今となっては口に出して言うのも憚られるような問いかけだけど、子供時代には KiKi もこんなことを疑問に思ったこともあったなぁ・・・・・。  それはある意味で理想と現実のギャップを知らなかったからこそ発せられる問いでもあるけれど、同時にその埋め方を本当の意味で問いかける質問でもあることに気がつかされたような気がします。

この物語。  一応、児童書の類の物語らしいんですけど、ある種の「人生問答」のようにも感じられます。  さすが、聖職者が書いた物語だなぁ・・・・と。    
 
 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年2月26日 11:41に書いたブログ記事です。

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