光をはこぶ娘 O.R.メリング

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O.R.メリングのケルトファンタジー第5作目、「光をはこぶ娘」を読了しました。

光をはこぶ娘
著:O.R.メリング 訳:井辻朱美  講談社

611JP4YY8ZL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

「夏の国」の危機を救うために、上王(ハイ・キング)のことづてをルーフ王に届けてほしい。  そのお礼に、あなたの願いをかなえよう。

少女ダーナは、ある日、森で妖精の貴婦人オナーに出会い、妖精国の上王からルーフ王へのことづてを託される。  やりとげれば、自分が幼いころに家出した母親に会える - ダーナはそう信じ、使命を果たすために、妖精たちのすむ世界へと旅立つが、とちゅうには、さまざまな困難が待っていた。  そして、やっとルーフ王のもとにたどりついたとき、ダーナに知らされた真実、それは思いがけないものだった・・・・・。  (単行本扉より転載)

前作、「夏の王」が KiKi にとってはちょっとだけ粗い作りの作品に感じられたので、正直この作品を読み始めるまではおっかなびっくりでした。  でも、物語冒頭にある次の言葉に魅せられ、一挙にこの物語の世界観に親近感・・・・のようなものを抱きました。  曰く

「大地は祖先から受け継いだものではなく、子孫から借り受けたものである」

「野生の自然の中でこそ、世界は生きのびられる」

「木のあるところ、生命あり」

メリング作品には珍しく環境問題という社会問題にも触れた作品でちょっとびっくりだったけれど、作中の環境運動家が掲げるこれら(↑)のスローガンは KiKi にとって深く納得できるものであるのと同時に、KiKi が都市生活に疑問を感じ始めた頃に考えていたこととも何気にシンクロしているように感じたのです。  特に KiKi のお気に入りなのは最初のスローガン。  子供のいない KiKi にとって、何か物事を考えるときに「子孫」という観点はどうしても抜けがちなんだけど、自分の存在を考えるうえで自分の先達と自分の後に続く者という長~い時間軸の中で、「たまたま今、この瞬間に、ここにいる自分」という捉え方をするのは本当に、真剣に、必要なことだと感じるんですよね~。

 

今回の主人公、ダーナはこれまでのヒロインと比較すると若干、年齢が若め。  そういう意味ではご本人のラブ的な要素はほとんどでてきません。  でも KiKi にとってはこれまでの物語のように妖精界と人間界の狭間で妙齢の別種族のものが出会って恋して・・・・というストーリーよりはこの物語のように、そういう出来事の末に両方の種族の血をひいた(でも本人にはその自覚がない)子供がいて、その子供が目覚めていく・・・・という物語の方がスンナリと受け入れられました。  それはひょっとしたら KiKi が無意識のうちに持っている「ファンタジー」とは別世界でもう何十年も生きてきた自分に対するある種の劣等感からかもしれないし、その間自分の中で夢見る夢子ちゃんから脱皮するために言い聞かせてきた「ファンタジー ≒ 子供っぽい夢物語」という公式が未だに KiKi の「知性 or 理性」とでも呼ぶべき世界にはびこっている後遺症なのかもしれません・・・・・ ^^;

でもね、そんな公式を自分の「理性」の世界では培ってきた KiKi であっても、やっぱり長い間心の奥底のどこかで妖精の存在を信じていたし、「妖精 ≒ 自然界の神秘」という捉え方をしていたのは否めない事実で、そうであるだけに、妖精界と現実世界が重なり合っているという考え方(≒ メリングさんの物語の世界観)には共感できるものがあるんですよね~。

今回の物語の中でダーナの冒険が達成された際に、妖精界の上王が語る言葉は KiKi にはとても説得力のある言葉でした。  曰く

「今日、人間たちが森を救ってくれた。  時の始まりより、つねに変わらず、人間こそが妖精国を救い続けてきた。  人間こそが「敵」の影と戦うものだ。」

ある意味で人間の思想こそが「妖精」という存在の生みの親である以上、これ(人間こそが妖精国を救う)は当たり前のことだけど、そうであったとしても人間が人間という種としての利己主義にのみ走らず、自分が生かされている環境、自分が育まれている自然に目を向けるために擬人化した存在として妖精が必要ならそれはそれでアリだと思うし、常に人が自然とどんな風に折り合いをつけて生きていくのかを考え続ける存在でありたいなぁと思うのです。

話はちょっと変わるけれど、KiKi は日本の写真家の今森光彦さんの「里山シリーズ」の写真が大好きで、彼の映像作品からは常に多くのメッセージを感じるんだけど、その今森さんの「心」と妖精を信じるケルトの心はとどのつまり同じものだと感じるんですよね~。  ある意味で KiKi が英文学を学び、外資系の会社に勤めるという経歴を持ちながらも、今、日本のとある山里(Lothlórien_山小舎)で欧化されすぎた生活ではなく、「日本人の山里暮らし」を追体験するようになったのは、英文学によって培われたある種の感性と今森さんの描く「日本の里山」を愛でる心への共感が帰結した生活・・・・のような気がするんですよ。

最後に・・・・・

ダーナの母、エデインが最後に選択したのが「人間界で生きる」ことではなく、「妖精国で生きること」だったのだけがちょっと疑問・・・・・。  いくらダーナの父親に新しい幸せの兆しがあると言えども、彼女のもともとの出自が妖精国だったと言えども、そして、妖精国のルーフ王のことも愛していたと言えども、彼女には「光をはこぶもの」という使命があると言えども・・・・です。  まあ、そのあたりが人間の感覚では理解できない妖精たちの気儘さ・・・・・の端的な例なのかもしれないんですけどね(苦笑)。      

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年2月 5日 19:24に書いたブログ記事です。

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