思い出のマーニー J.ロビンソン

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先日読了した「ホビット一族のひみつ」と一緒に図書館から借りてきた岩波少年文庫を読了しました。   KiKi はこと「岩波少年文庫」に関してだけは全冊読了、全冊コレクションを目標としているのですが、この本は未だに KiKi のコレクションには入っていません。  現在の絶版本はともかくとしてとにかく現在入手できる本に関しては早く全冊揃えたいところなんですけどね~。  因みにこの本は1980年に初版本が出たもののいったん絶版になり2003年に復刊したという歴史のある本です。  1度絶版の憂き目にあっているということは商業ベースで物を考えたとき、「ペイしない」という判断がなされたということの証左でもあると思うので、問題なく入手できるうちに購入しておかなくちゃいけません >_<  

思い出のマーニー (上)(下)
著:J.ロビンソン 訳:松野正子  岩波少年文庫

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養い親のもとを離れ、転地のため海辺の村の老夫婦にあずけられた少女アンナ。  孤独なアンナは、同い年の不思議な少女マーニーと友だちになり、毎日二人で遊びます。  ところが、村人はだれもマーニーのことを知らないのでした。  (文庫本上巻裏表紙より転載)

ある日、マーニーは、無人のさびしい風車小屋でアンナを置き去りにし、姿を消しました。  彼女をさがすうちにアンナは、マーニーの思いがけない秘密を知りました...。  ドラマチックな体験をした思春期の少女の物語。  (文庫本下巻裏表紙より転載)

この本が未だに KiKi のコレクションには入っていない理由。  それは簡単なことで、今回が初読、つまりこのブログで「岩波少年文庫全冊読破企画」をぶちあげるまで、そもそもこの本の存在を知らなかったことにあります。  コレクションって言うヤツは基本的にはその対象物に何等かの思い入れがあって、どうしても蔵書として取っておきたい!と感じさせる本が優先されるのは至極真っ当なこと。  存在さえ知らなければ「集めよう!」とは思わないわけです。  この企画をたちあげた際に KiKi は岩波少年文庫のリストを作成したのでその時に初めてこの本の存在を認識したわけだけど、未読だっただけに今日に至るまで相変わらず KiKi のDB上では「未所有フラグ」がたっているだけで「ウィッシュ・フラグ」も立たず、放置されてきました。

そしてこの本を読了した今、KiKi はDB上に大慌てでウィッシュ・フラグを立てるに至りました。  これは良い!!  すこぶる良い!!!

 

読み終えたあと、すぐにもう一度最初から読み直したくなるような、そういう素敵な作品でした。  上巻は情緒豊かで内面的な世界を丁寧に描いた感じ、下巻は止まっていた時間・モノクロ画像のようだった上巻の景色・心が動き出し、ミステリーでもないのに謎解きまであって、少しずつ彩色されていくような感じ。  神秘的で、ミステリアスな物語でした。

「自分の殻」という言葉がよく使われるけれど、この物語の主人公アンナはまさにその「自分の殻」から抜け出すことができずに苦しんでいる女の子です。  その殻は決してアンナが独り勝手に作ったものではないんだけど、その殻に苦しんでいることを自覚しているにもかかわらずそれを自力で割ることが出来ないほど固くしてしまったのはやっぱり、アンナ自身でした。  アンナは自分を「外側」にいる人間だと考えます。  

なぜかというと、ほかの人たちは、みんな「内側の人」---- なにか、目に見えない魔法の輪の内側にいる人だからです。  でもアンナ自身はその輪の「外側」にいました。  だから、そいういうことは、アンナと関係のないことなのでした。  (本文より転載)

アンナにはうまく説明できないものの、目には見えないある種の「自分とは相容れないもの」を「世間」とでも呼ぶべき集合体に対して感じています。  それはある種の疎外感みたいなもの。  でも、これってアンナのような生い立ちではなくても、多くの人が自我に目覚め始めた頃には感じるものだと思うんですよね。  でも、多くの場合その苛立ちは「自分のことがわからない苛立ち」であることが多いように思うんだけど、アンナの場合は少しだけ違っていて、彼女は自分のことをよ~くわかっています。  ただ、そこから踏み出したいと思うのにその術を、持たない・・・・  そんな感じの女の子なのです。  

それは「揺るぎない自分だけに向けられる愛情」を誰からも感じられないということによるものだと思うんですよね。  だから学期の途中で美しい海辺の小さな村リトル・オーバートンに転地療養に行くことになった際にもアンナはそのことを「どうにも手におえない子の厄介払い」だと感じてしまうのです。  でも、アンナが可愛そうなのはそう思って傷つきながらも、本当はそうではないことも心の奥底のどこかでちゃ~んと察しているのです。  

腫れ物に触れるように接してくる、本心を語ることのない大人たちには素直になれない。  独りでいても寂しくなんかないし、友達がいないことすら苦痛に感じない。  自分を残して死んでしまった母や祖母を恨み、その死の背景など知ろうという気にもなれない。  そう、アンナはある意味で鋭すぎるのです。  自分の事も自分を取り巻く大人の事もその根っこにある本質的なものを瞬時に見抜き、察してしまうのです。  そしてその「見抜いたこと」に傷ついてしまうほどに繊細な心を持っているのです。  だからこそ、自分を必要以上に傷つけないように、自分を守る殻を固くするために、無表情な「ふつうの」顔を保とうとします。

「いい子にしてね。  愉快にくらしていらっしゃい。  そして・・・、 そう、日にやけて、元気に帰っていらっしゃい。」こういうと、 ミセス・プレストンは片手をアンナの首にまわして、 さよならのキスをしました。  こうすることで、アンナが、「あたたかく安全に守られ、大切に思われている」 と感じてくれるようにねがいながら。   けれども、アンナには、ミセス・プレストンが、 そう感じさせようとして、そうしているのがわかりました。  「やめといてくれればいいのに」とアンナは思いました。  かえって、2人の間に壁ができてしまって、もう、普通にさよならがいえなくなりました。  (本文より転載)    

物語の前半は、海辺の洋館に住む不思議な少女マーニーとの出会いと、マーニーと過ごす秘密の時間の中で、アンナが少しずつ自分と向き合い、心がほぐれていく様子が描かれています。  ようやくできた心を許せる友達だったマーニー。  でも、村人たちは誰一人としてマーニーのことを知りません。  そんな中「風車小屋事件」とでも呼ぶべき事件が発生し、結果的にアンナはマーニーと別れ別れになります。  そして後半、マーニーと別れたアンナは彼女と一緒に過ごした時間の思い出を糧に、少しずつ少しずつ彼女が「内側」と呼んでいた世界とも向き合うようになっていきます。  

物語の後半、いなくなってしまったマーニーの正体や、 アンナが決して知ろうとはしなかった彼女の生い立ちの物語等々が明らかになります。  それら全ての謎の鍵をにぎるギリーさんというおばあちゃんが登場するのですが、そんな彼女が語る

「あなたがたがわたしぐらいの年になれば、これは だれのせいだとか、あれはだれが悪かったからとか、 そんなことはいえなくなりますよ」

という言葉は今の年齢になったKiKi の心にストンと落ちてくる言葉でした。  そしてそれに続いてアンナが感じるようになる

「自分が内側にいるとか、外側にいるとか、 それは、自分自身の中でどう感じているかによること」

という真理・・・・のようなものに思わずぐっときてしまいました。  これはKiKi 自身も折に触れ読み返してみたい物語だし、多くの人に読んでもらいたい物語だなぁと強く感じました。  良書です。

追記) 宮崎駿50選の中での宮崎氏のコメント

この本を読んだ人は、心の中にひとつの風景がのこされます。  入江の湿地のかたわらに立つ一軒の家と、こちらを向いている窓。  何年もたってあなたが大人になって、この本のことをすっかり忘れてしまっても、その家はあなたの中にずっとありつづけます。  そして、いつかその窓に出会います。  旅をしてはじめて見た家なのに、ずっと前に見たことがあるような気がして、なつかしいような、せつないような気持ちになって、とつぜんマーニーのことを思い出すのです。  これはそういう本です。  (2011年12月15日転記)

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年4月15日 18:59に書いたブログ記事です。

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