特定業界バッシング?

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KiKi は昔、飲料業界にお勤めしていました。  だから・・・・というわけではありませんが、今回の石原都知事のご発言には大きなショックを受けました。  正直なところをお話すると、KiKi 自身がその業界から去ることを決意した理由の1つには、まさに石原知事が今回仰っていたのと同じような思考を辿ったという部分もなきにしもあらずではあります。  でもね、それって KiKi みたいな個人が考えて自分の進退を考えるというレベルならいざ知らず、公権力がどうこう言う話ではないと思うんですよね。

自販機87万台、原発0.5基分 業界「節電に努力」 都知事は"不要論" 
清涼飲料水の自動販売機を停止させたら、どれだけ節電効果があるのか-。  東日本大震災の影響で、東京電力管内で電力不足が確実となるなか、自販機の節電をめぐる議論が起きている。  東京都議会では自販機の冷却機能を規制する条例制定の動きも出た。  一方、蓮舫節電啓発担当相は「経済活動に影響が出る」と条例制定を疑問視。  業界関係者らは、「すでに節電努力をしているのに...」と困惑している。

■条例案に戸惑い
きっかけは東京都の石原慎太郎知事が、10日の4選後に発した"自販機不要論"だった。  石原知事は「軒並み自販機が並んでいるバカな国は、世界中にない。  自分の家で冷やせばいい」とぶち上げた。  全国清涼飲料工業会によると、清涼飲料水の自動販売機は東京電力管内に87万台。  最大消費電力は約26万キロワットで、単純計算すると東電福島第1原発1号機の出力46万キロワットの半分以上に当たる。  条例で規制をかけようとする都議会民主党の案は、冷却機能を7~9月の午前10時~午後9時の間、停止させる内容。  6月の都議会に提出したいという。  だが、工業会からは条例案に戸惑いが出ている。  自販機には、午前中から午後1時に商品を冷やし、電力消費がピークを迎える午後1~4時の間は冷却機能を停止する「ピークカット機能」があり、7~9月の平日は、その機能が働いているからだ。  この間の使用電力は通常運転時の17分の1程度にまで落ちる。  工業会では、約20年前から節電対策も進めてきた。  照明を落としたり、断熱材を使用するなどして20年間で約60%の消費電力を削減したという。  担当者は条例化の動きに「節電に関する広報が足らなかったと反省している」と話す。  自販機メーカーや清涼飲料水メーカーからは、「省エネに取り組んできたのに、イメージだけで話が進んでいる」「ぬるいジュースは売れない」という声も出ている。

■さらなる削減へ
だからといって工業会や飲料水メーカーも、これまでの努力で十分とは思ってはいない。  清涼飲料最大手の日本コカ・コーラは15日、6月上旬から9月末にかけ午前10時から午後9時まで、東電管内の自動販売機約25万台の冷却運転をグループに分けて順繰りに2~3時間停止すると発表した。  ダイドードリンコ、サントリー、アサヒ飲料、キリンビバレッジもさらなる電力削減の方針だ。   日本自動販売機工業会によると、自販機による清涼飲料の売り上げは、全国で年間約1・9兆円にもなる。  経済規模の大きさに蓮舫担当相からは15日、こんな発言が飛び出した。  「経済活動に影響が出るものを権力で要請するのは国民がどう考えるか」

■「首都圏全体で」
ところが、これを聞いた石原知事は同日の会見で、「ばか言っちゃいけない。  工場止めるより自動販売機止めたほうがよっぽど国民の役に立つ。  そんなことも分からない大臣だったら悲しい話だな」とバッサリ。  「都の条例だけではこの国難は克服できない。  首都圏全体でやらないと」と、首都圏の9都県市で共通ルール作りを進め、国に導入を働きかける考えを示した。  知事は自販機だけでなく、パチンコ業界などの規制も念頭に置いている。  清涼飲料水業界、都議会、蓮舫担当相、石原知事...。  節電の必要性では一致するものの、自販機の規制をめぐる考えはすれ違いのままになっている。

◆財団法人省エネルギーセンターの判治洋一産業省エネ推進・技術本部長(電気工学)の話
「自販機は路上に冷蔵庫があるようなもの。  冷却機能を止めれば確実に節電効果はある。  しかし、一般論として冷却装置は起動したときに大量に電力消費する。  停止すればいいという単純なものではなく、全体のエネルギー使用の動きを見極めた上で、慎重に議論し、節電対策をとるべきだ」   (産経新聞4月16日(土)7時57分配信より転載)

いかに業界の努力があった・・・・とは言えども、自販機っていうのは目につきやすい存在だし、電気を消費しているのも事実だし、それらを稼働させなければ電力使用のそこそこの削減になるという事実は否定のしようがありません。  だから世の中で電力のことしか考えなくていいのであれば、まさに真っ先に廃止(撤去)すべきものなのかもしれません。  でも、この報道を見ていて KiKi が不思議で仕方ないのは「電力」という切り口以外では誰一人、何も声を上げていないことです。  マスコミ報道でも自販機1台の使用電力がどれくらい・・・・という話だけを繰り返しています。  考えなくちゃいけないことは本当にそれだけですか???

街頭インタビューでは自販機から商品を購入するお客さんだけにマイクを向けていて、「まあ、(自販機が)なくても我慢できます。  許容範囲です。」的な発言が取り上げられていたんだけど、皆さん忘れていませんか??  自販機がそこにあるっていうことは、あなたではない誰かがそこに商品を詰めたり、お金を回収したり、汚れをふき取るために暑い日も寒い日も雨の日も雪の日も台風の日も地震の日も作業をしているということを。  そしてその人たちはその仕事によって生活しているということを。  自販機は放っておけば自動的に物が詰まる便利な魔法の箱ではありません。  すでに87万台の自販機があるのだとしたら、その裏には1万人以上の雇用がそこにあるのだということを考えたことがありますか?

 

その1万人以上の人たちが自販機を止めることにより、いきなり失業者になってしまうかもしれないということがどうして一切語られないのか KiKi にはわからない。  確かに「自販機がここまで増えてしまった世の中はどこかおかしい」と、かつては飲料業界で食い扶持を稼いでいた KiKi でさえも思わなかったわけじゃない。(過去にはそう思ったし、もちろんそれだけが原因ではないけれど、それと同じ根っこにあると KiKi には感じられる数多の問題意識を熟考した結果として、KiKi は飲料業界を離れる決意をしました。)  でも、一方で復興支援のために増税もありうるな~んていう議論をしておきながら、これ以上失業者を増やしてどうしていこうというのか KiKi には正直まったくわからない。  失業者が増えるということは、税収が減るということと同時に、社会保障支出が増えることを意味するのに・・・・・。

それにね、自販機がそこにあるということは、そこで売られている商品(飲料、タバコ、雑誌、菓子等々)のメーカーだけに影響を及ぼすわけじゃなくて、自販機そのものを販売している機械メーカーに、その部品を作っている中小の部品メーカーに、さらには多くの自販機はリースで提供されている実態を考えると、そのリース会社に、そのリース会社のバックにある金融機関に・・・・と少なからず深刻な影響を及ぼします。  自販機を止めることにより、飲料メーカーの自販機投資が凍結され、結果として他産業へも影響を及ぼし、それら多くの会社からも失業者が溢れ出て(そこまではいかないまでも収入減に繋がったり)、ついでに回収不能リース残債が増えたらどの程度の経済インパクトになるのか?  

それに多くの人はご存じないかもしれないけれど、自販機にサービスを提供している大半の人は飲料メーカーの人ではないことも、もっと考えたうえで発言してほしいと思うんですよ。  自販機にサービスを提供する仕事はどちらかと言えば「3K」と呼ばれる類の仕事で、固定費(倉庫・車・人・在庫)も大きいため飲料メーカーは自前でオペレーションすることを避ける傾向にあります。(実際はちょっと違うけれど、東電とその協力会社の関係に似ていたりします。)  飲料メーカーからすると自販機というのは販売チャネルの1つに過ぎないので、いかに飲料販売全体に占める自販機チャネル販売シェアがそこそこあると言えども、他のチャネルまで全てを失うわけではないので、何とか持ちこたえることができるかもしれません。(実際には事はもっと複雑だけど・・・・・)  でも自販機オペレーションを専業としている会社がそれこそ山とあるのです。  そこで働く人たちは、自販機を止められたら本当に何もなくなってしまうのです。  

KiKi はあの計画停電が発表された際、そしてこのエントリーを書いた時点で正直、最悪シナリオの1つとして今回の「自販機停止論」が出てくるのではないかと危惧していました。  まして計画停電により病院や自宅で酸素吸入器等々の医療機器を使われている方々のご苦労をTVで観るたびに、「停電エリア外の自販機で使っている電力からこの方々に分けてあげられたら・・・・・」とさえ思いました。  それは素直に認めます。  でも、これから自販機をガンガン設置しようとしているという状況であるならば、「自販機設置反対!」と大きな声で言えるかもしれないけれど、これだけの自販機がすでに存在し、それに関る業務で生活を成り立たせている人がいることを考えると、事はそんなには単純ではないと思うのです。  そうであるからこそ KiKi 自身は「自主的停電」を自分に課したりもしていたわけで・・・・・。    

いずれにしろ、特定業界を名指しで公権力がスケープゴート扱いしている実態に、そしてその話に我が身には直接痛みを伴わない人が(ひょっとしたら巡り巡って自分のところにも痛みがくる可能性は否定できないにも関わらず)、「まあ、自分は(自販機がなくても)我慢できるからいいんじゃない・・・・」と言い始める国家って KiKi は正直恐ろしいと思う。  だってその話って、突き詰めていけば栄養失調にならない程度に全国民が食べられるだけの最低限の食料を生産する人(飽きるとか変化が欲しいとか、そんなことは無視!)と、必要最低限の衣類(ブランドだの色だの柄だのファッション的な要素は一切排除)を生産する人と、それらを流通させる人と、普通の人間が精神的に参らない最低限度のスペースを確保し、雨露を凌げるだけの居住空間を提供する人と、医療を担う人と、次世代を育成する人以外はいらない!と言うのとほとんど変わらないと思うから・・・・・。  (あれ?  そうなると政治家もいらない? 苦笑)

今ここに87万台の自販機があるということは、少なくとも今回の災害が訪れるまではその自販機を有難がり、そこで購入していた人間がいたということの証左です。  そういう状況に疑問を呈することさえしてこなかった私たちの価値観を見直すことは必要だとは思うけれど、その見直しに当たっては自分ではない誰かだけが苦渋を強いられる(特定業界バッシング)ことをよしとするのは、石原さんが仰るまさに「我欲」以外の何物でもないように感じます。  まあひょっとしたら石原さんの発言は「私たちの価値観を見直すための議論を起こさせるための確信犯的な暴言の一種」なのかもしれませんが・・・・・。  だからこそ、東京都が単体でやるのには反対・・・・みたいなことまで言い出しているのかもしれませんが・・・・・・。

電力ということだけを考えたら確かに「自販機 < 工場生産」という公式は正論に見えますし、こんなエントリーを書いている KiKi であってさえも同意せざるを得ません。  だから百歩譲って今の日本が好景気で、労働市場が売り手市場で、仕事なんていくらでもあるという状況なら、「自販機を止める?  まあ、仕方ないかもね。  そこで働いていた人も今は引く手数多なんだから、生活できなくなるわけじゃなし。」と言えるかもしれません。  でもそうじゃないんですよ。  電力を生産設備に回してそこで多くの追加雇用が生まれるわけでもないと思うんですよね。

KiKi 自身は上記のとおり、電力の事、ゴミの事、その他諸々のいわゆる「あふれかえっているモノ」に対する疑問が大きくなりすぎて、かと言ってそれが産業として成立している中では「やめちまえ!」という暴言は吐けないし、「そこそこ(要するにその産業に従事する人たちがそこそこ生活できる程度に)稼げればいいじゃない」とさえも言えないというジレンマの中で、ものすご~く苦しんで、その結果として「少なくとも自分がそれに加担しているという立場にはもういられない!」という思いの果てに(それだけじゃないけれど)Lothlórien_山小舎暮らしを指向し、今に至っています。  そういう意味では自主的落ちこぼれ経済人という自覚のもとに今の生活を営んでいます。  でも、人様にまでそれを強要する気はないし、KiKi 1人が脱落したからと言って何かが変わるわけではないことも認識しています。        

もちろん全国民が協力してこの夏を乗り切ることは絶対に必要です。  でも、飲料業界だって自販機業界だってバカじゃないんだから、今までと同じレベルのビジネスができるとは最初から思っていないだろうし、それなりの対策は考えているはずです。  多くの会社では、ある程度の経営難であってさえも覚悟しているはずです。  そんな彼らの対応が全産業界の平均節電努力よりも大幅に足りなかったというのであれば、お叱りを受けても仕方ない部分はあると思うけれど、今回のような特定業界バッシングにしか見えない議論にはどうしても再考をお願いしたいと考えてしまう KiKi なのです。  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年4月16日 09:40に書いたブログ記事です。

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