「里」という思想 内山節

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先日、「むらの原理 都市の原理」という本を読んでいて、何となく思い出したこの放置本。  根っこにある問題意識は恐らくかなり似通ってはいるんだろうけれど、あちらは「むら」と「都市」を2項対立的に考察しているので、解り易くはあるものの、論点がどうしても画一的になりがちで、どちらの原理も少しずつ持っている社会についての考察までは踏み出せない一種の限界のようなものを感じました。  そのあたりを考察するためにはもう一歩踏み込んだ、もしくは俯瞰した視点の話を読みたいと感じたことにより手にした1冊です。

「里」という思想
著:内山節  新潮選書

603554.jpegのサムネール画像  (Amazon)

グローバル化された社会へ警鐘を鳴らす、未来へ向けた哲学的論考。

世界を席巻したグローバリズムは、「ローカルであること」を次々に解体していった。  たどりついた世界の中で、人は実体のある幸福を感じにくくなってきた。  競争、発展、開発、科学や技術の進歩、合理的な認識と判断―私たちは今「近代」的なものに取り囲まれて暮らしている。  本当に必要なものは手ごたえのある幸福感。  そのために、人は「ローカルであること」を見直す必要があるのだ。  (選書本裏表紙より転載)

ああ、これだ!!  KiKi が落ちこぼれながらも会計人として行き詰ってしまった、あの時期に感じたモヤモヤしたものが全てここに言語化されている!!  これが KiKi のこの本の感想です。  

KiKi は過去にも何度かこのブログでお話しさせていただいているかと思うけれど、長らくとある米系の会社で管理職のお仕事をしていました。  その時、いやというほど考えさせられ、又実行を促し続けてきた「グローバル・スタンダード」と呼ばれるもの。  これって確かにわかりやすいし、ある意味で経済的だし、合理性はあるし、ロジカル(論理的)だし、この発想に初めて触れた30代の頃、KiKi は一発でノックダウンされ「これはいいことずくめじゃないか!」とさえ感じました。  この考え方の底辺にあったのは著者が言うところの「場所的普遍性」の徹底です。  人が変わっても、東京でも大阪でも九州でもアフリカでも、同じ1つの基準を物差し(スタンダード)とすることによる、効率性には正直目がくらみました。  そう、まさに、目くらましされちゃったんですよね~。

で、そのスタンダードを実現するために、実業との折り合いをつけながら、監査的にも問題が発生しないように「職務記述書」やら「業務標準手続書」を作成したり、グローバル・スタンダードでプログラムされたコンピュータ・システムにつなげるために「業務改革」なんかを行っている最中は、それは刺激的で仕事も面白く、それこそ寝食を忘れて仕事に没頭していました。  でも、ある日気がついちゃったんですよね~。  人が変わってもOKということは、人を機械と同様にしか捉えていないということに。  そして多くの「標準手続」が完成するたびに、人は思考停止に陥り安くなることに。  そしてその結果として「無責任」のドツボに嵌っていくということに・・・・・・。  

グローバル・スタンダードの徹底により KiKi が見たもの。  それは同じことだけを続けている限りにおいては効率的で生産性のあがる仕組だったものが、そこに新規事業の1つも加わった際には、「どうしたらいいかわからない僕たち」を数多く生み(つまりマニュアルに書かれていないことには対処できない)、「どうしたらいいか教えてください」という他力本願を生み、結果的には「だって、○○さんがこうしろって言いました」という無責任を無責任とも思わない発言を生むということでした。

時期を同じくして、KiKi は池袋駅のコンコースを歩いていました。  それはちょうど「クリスマス」を終え、「お正月ムード」も落ち着き、さあ、これからは「バレンタイン」という時期でした。  わずか数か月の間に駅のコンコースは赤 & 緑と電飾のデコレーション with クリスマス・ソングのBGMから 門松・お節・着物のデコレーション with 和琴の BGMへ、そしてピンクのハートが飛び交うデコレーションに変化していました。  それまでは1つの風物詩としてしか KiKi の目に留まらなかったこれらのデコレーションがある時異様なものに映りました。  町全体が「あれを買え~!  これを買え~!  買わなければ乗り遅れるぞ~!!  消費しないヤツは人じゃない」とでも叫んでいるかのように見えてしまったのです。  その途端、ハイセンスでオシャレなデコレーションが化け物のように感じられました。  「消費活動」が資本主義を前に進めるエンジンであることは百も承知です。  でも・・・・・。  

この誰かに作られたムードに乗っかって(自分もある分野においてはそのムードを作ることをやっていたので、ムードに作為的・人為的なものを感じずにはいられなかった)ホイホイ生きていていいのだろうか??

KiKi はいったい今まで何をしてきたんだろうか??  このままじゃ際限なく欲望だけが膨らんで、それを満たすためだけ(とまでは言わなくてもそれを第一義)に馬車馬のように働くことになるのだろうか??

これが、子供時代に KiKi が夢見ていた「幸せ」の形だったんだっけ?????

こうして、KiKi は消費に偏りがちな自分の生活に疑問を持つに至りました。  確かに KiKi は企業という場所で生産にも携わっていました。  でも、それを行っているのは KiKi 個人ではなく企業という法人です。  そして KiKi という個人に立ち返った時、「消費するだけの生活」をしている自分を発見しました。  更にタチが悪いと感じたのは、KiKi は労働者であって労働者ではない(つまり、経営側の人間;雇われ経営者)ということでした。  自分が加担しているものが何なのか、それを見つめ直す必要があると感じました。    

 

著者は言います。

近代社会が形成されてくると、人々は真理は普通的なものだという強い確信をいだくようになった。  自然科学が発見した「真理」が世界のどこでも通用するように、あらゆる真理は普遍性をもっている、と。

本当の普遍性には、「場所的普遍性」、あるいは「空間的普遍性」と「時間的普遍性」というべきものがある。  「場所的普遍性」とは、どこの場所でも通用するものであり、「時間的普通性」とはいつの時代にも通用する普遍性である。  このように分けるなら、近代社会とは、「時間的普遍性」に対する忘却を重ねながら、「場所的普遍性」を重要視することによって生れた社会だといってもよい。  たとえば今日のグローバル化していく市場経済とは、アメリカ的な市場経済のあり方が「場所的普遍性」を確立していく過程である。  近代社会におけるこの精神的雰囲気が、思想にも大きな影響を与えた。  すぐれた思想は「場所的普遍性」をもつと人々は考えた。

だが、本当にそうなのだろうか。  むしろ逆に、思想はローカルなものとしてしか成立しえないのではないか。 

 

KiKi はある時期から「正義」「真理」という言葉に懐疑的になってきました。  実は得体が知れないものであってもこの言葉の冠がつくと人は思考停止に陥り、「受け入れざるを得ない」と感じてしまうある種危険な言葉だなぁ・・・・と。  それからは「正義」という言葉を聞くと常に「誰にとっての?」を、「真理」という言葉を聞くと常に「どんな?  どういう世界に於いて?」を自問するようにしています。  これらの言葉の持つ「悪意なき排他性」とでも呼ぶべきものを恐ろしいと感じるようになりました。  

 

う~ん、やっぱり内山さんの本はいい!!  KiKi に考える視点を与えてくれたり、KiKi の感じていた漠然としたものを整理するには彼の言葉が助けになったりします。         

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年4月26日 23:34に書いたブログ記事です。

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