太陽の戦士 R.サトクリフ

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昨年末からの積み残し、岩波少年文庫に収録されているサトクリフ作品が全作読了できていないことを急に思い出しました。  たまたま先日「吾妻郡図書館」に行き、他の本も借りてきちゃったから必ずしもチャッチャと読み進めることができるわけではないけれど、やっぱり手がけたことはちゃんと完了しなくちゃいけません(笑)  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

太陽の戦士
著:R.サトクリフ  岩波少年文庫

51TNKZKFRCL__SL160_.jpeg (Amazon)

片腕のきかぬドレムは、愛犬ノドジロや親友にささえられ、一人前の戦士になるためのきびしい試練に立ちむかう。  青銅器時代を背景に、少年の挫折と成長を描いた、サトクリフの代表作。  (文庫本裏表紙より転載)

青銅器時代という歴史の教科書でも比較的アッサリと(少なくとも KiKi の学生時代はそうだった)、あくまでも鉄器時代への通過点のように扱われ、想像・イメージするのが困難な時代が舞台です。  まあ、道具が違うだけで鉄器時代初期と文化的に大差はないのかもしれないけれど、それでも人間がどんな風に自然の中で自分の居場所を築いてきたのかがサトクリフの筆致で繊細 & 詳細に描かれています。

KiKi は以前からイマドキの「自分探しブーム」というのにシニカルなスタンスを持ち続けているんだけど、この本には「自分探し」な~んていう言葉は出てこないものの「生き抜くこと」「自分の居場所を作ること」の本質が描かれていると思います。  この時代の人たちが真剣に探っていた「自分の居場所」はイマドキのそれとは大きく異なり、それを見つけることができない ≒ 動物的な意味での死(精神的な意味では決してない)を意味することだということが言えると思うんですよね。  まあ裏を返せば現代社会に於いては「死とは直結しない淘汰がある」とも言えるわけで、それはそれで厳しいものがあったりもするわけだけど、イマドキはどちらかと言うと「個人主義」の弊害とも言える社会における自分の存在位置の不明確化 → 幻想(理想ではなく)と現実のギャップ → 根拠の薄い「できるはずなのにできない」という思い込み → 苛立ち という構造が透けて見えるような気がして仕方ありません。

KiKi はね、「夢見る事」を否定する気はないんだけど、「夢を持てなければ生きているとは言えないと考える症候群」とでも呼ぶべき強迫観念には疑問を持っています。  「生き甲斐」「やり甲斐」という言葉が安直に使われるけれど、そもそも「甲斐」ってどんなもの?と辞書を引いてみると、そこに1つの答えが書かれていると思うんですよね。

  

甲斐(かい)

行動の結果としてのききめ。  効果。  また、してみるだけの値打ち。  (広辞苑より転載)

そもそも甲斐っていうのは「行動の結果としてのききめ」っていう意味があるわけですよ。  思いが先にあって行動する前に甲斐が出てくるわけじゃなくて、行動が先にあるわけです。  転じて「してみるだけの値打ち」っていう意味が出てきていて、要は「行動する前にアレコレ考えてやってみる意味があるかどうかを考える」みたいな発想が出てきて、賢くなったつもりの私たちはやってみることさえしない前にああじゃこうじゃと考える・・・・・。  そんな風になってしまったように思うんですよね。  でも本当に大切なことは「行動すること」にこそあって、「値打ちを考えること」にあるわけじゃない。  まずは「行動してみて、値打ちが低かったらどうすれば値打ちが上がるのかを考え、行動しなおしてみる」ことが一番大切なんじゃないかと思うんですよ。  だって人類はそうやって進歩してきたはずなんだから・・・・・。

念のために言い添えておくと、別に KiKi は考えもなしに猪突猛進、周りの状況にもお構いなしに行動すればいいと言っているわけじゃありません。  でもね、「○○甲斐」と言う以上はまずは「自分にできる事、自分の足元にあることを精一杯やってみる」が先にあるべきじゃないか?と思うんですよね。  これって大層なことではないし、今風なカッコよさもないし、ついでに言うと目先の儲けには直結しないので「地味でパッとしない」と思われがちだけど、やりながら自分の行動の意味を考え続けることによって何らかの価値を生み出していく・・・・。  いえ、価値を生み出すような行動に軌道修正が行われる。  それが「甲斐」につながるんじゃないか??  そんな風に思うんですよね。    

この物語の主人公ドレムはその時その時、自分に与えられている居場所でできる「最善なことと思える事」を黙々とやり続けます。  もちろんその過程では若さゆえの葛藤、恐怖、孤独、劣等感を抱えることになるわけだけど、そこで立ち止まったりはしません。  いえ、立ち止まることさえできない環境なんです。  言ってみれば「考えながら、感じながら走り続ける」姿が描かれています。  ドレムは片腕が使えないというハンディを抱えているだけに、とかく「特別な人」という印象を与えがちではあるけれど、そんな目くらましを取っ払って彼の一挙手一投足、一言一言を味わえば、彼が私たちと何ら変わることのない未熟な1人の若者にすぎないことがヒシヒシと感じられます。

そして彼が「緋色のマント」を纏うことができるようになるためには大きな回り道が必要ではあったけれど、結果彼が得ることができたものは「緋色のマント」のみではなくもっと大きな「特筆できる人間性」だったと感じられるのです。

それにしても・・・・・・

昨今では「荒れる成人式」な~んていうニュースがよく聞かれるけれど、この時代のイニシエーションは本当に神聖なものだったのですねぇ。  「少年として死に、部族の戦士として生き返る」という考え方の底を流れる「覚悟の強さ・真剣さ・凄まじさ」に感動を覚えました。  そして今ではファッションの一部に転落(?)してしまったイレズミの持つ意味を再認識し、ある意味で「その精神を今も受け継いでいるのはヤクザさん」だけなのかもしれないと考えると何とも不思議な気分になりました。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年4月 7日 23:03に書いたブログ記事です。

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