運命の騎士 R.サトクリフ

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「高山農園企画書づくり」のための読書に若干、時間をかけぎみの昨今ではありますが、同時進行でボチボチと読み進めていますよ~、岩波少年文庫。  昨年末に連続して読み続けていたサトクリフ作品はまだまだたくさん残っているので、合間の読書はそのうちの1冊でした。

運命の騎士
著:R.サトクリフ  岩波少年文庫

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犬飼いの孤児ランダルは、ふとしたことから、騎士ダグイヨンの孫、ベービスの小姓として育てられることになった。  ノルマン人によるイギリス征服の時代を背景に、二人の青年騎士の数奇な運命と、生涯をかけた友情を描く。  (文庫本裏表紙より転載)

サトクリフと言えばローマン・ブリテン四部作(既読の「第九軍団のワシ」「銀の枝」「ともしびをかかげて」「辺境のオオカミ」)が出世作なわけですが、そこからは時代がぐ~んと下った11世紀のイングランドとノルマンディを舞台にした歴史ロマンです。  ものすご~く大雑把に言ってしまえば第一次十字軍なんかがあった時代、「荘園」と「騎士」の時代の物語です。  

「騎士の時代」と言われるとどうしても「アーサー王」とか「シャルルマーニュ伝説」みたいなちょっとロマンチックな様子を連想しがちな日本人(それともそれって KiKi だけ? 笑)に、リアルな「騎士の生活」を感じさせてくれる物語だと思います。  領主以外は大広間の暖炉の傍で雑魚寝しているとか、その暖炉の煙突ではしょっちゅう煙が逆流するとか、オシャレ感のかけらもない生活がいきいきと描かれています。

物語としては孤児のランダルの成長物語なんだけど、KiKi はこの物語を読みながらそんな若者の成長物語・・・・というよりは、先日読了したばかりの「「里」という思想」にあった「時間的普遍性」(いつの時代も通用する普遍性)の本質・・・・みたいなものを感じていました。  と、同時に物語に流れる人生観には私たち日本人がかつては持っていた「人生とはすなわち無である」という思想に通じるものも感じました。  そういう意味では「場所的普遍性(どこでも通用する)と時間的普遍性(いつの時代も通用する)の合わせ技」的なものを感じていた・・・・とでも言いましょうか。

 

「時間的普遍性」の象徴として描かれていたように感じたのは、ランダルが古代の石斧を手にするシーンです。  その斧が、自分の左手にぴったりとはまることに気づいたランダルは、かつてこの場所で生きていたであろう「左利きか、片腕の男」を想像します。  この「片腕の男」っていうのはひょっとすると(というより多分)「太陽の戦士」のドレムのことじゃないかと思うんだけど、ここに2つの物語が数千年という時を超えて結びついていることを感じると共に、この斧によりそれまで折に触れほのめかされていた「ランダルは実はかつてこの土地を支配していた古い民族の末裔」という話に確証を与えてくれています。  

そのむかし、はじめてこの武器を握った人間にランダルは強い親しみを感じた。  その男は、今晩ランダルが一瞬みたように、子羊がこいの柵のむこうに跳ねるオオカミの姿をみたのにちがいない。  ランダルはこの青い、いきいきした火打石を通じて、過去との生きた絆を感じ取った。  その絆はランダルを過去の人間や羊やオオカミの一部にし、同時にそれらは今ランダルの一部でもあった。  それはとりもなおさずディーン(荘園の場所の名前)との強い一体感だった。

これこそ、内山さんが言う「時間的普遍性」の本質だと思うんですよね。  その場所に自分が属するという帰属意識。  そしてその帰属意識によって育まれる自分の存在感、実在性。  いわゆる「アイデンティティ」っていうヤツです。

「場所的普遍性」の象徴として描かれているように感じた(と言うより日本人的な死生観に近しいものを感じた)のは、物語の中でランダルを引き取った騎士ダグイヨンが亡くなり、そして、彼に引き取られたことにより親友になったベービスも亡くなり、ランダルがディーンの主として帰ってきたシーンです。  

「わたしたちはもっと古い歴史を持っているのですよ。  まだこの世が若かった頃、あの<イバラが丘>に墓を築いた古い氏族がわたしたちなのです。  わたしたちは征服者たちがやってきては、去り、またやってくるのをみてきました。  人々は結婚し、血を交えました。  でもわたしたち古い民は、すべてのものがイバラのやぶを吹き抜けていく風のように過ぎ去っていくことを知っています。」

かわらぬものは丘だけだった。  丘と、生活そのものだけだった。  そこに住む人に何がおころうと、かわらぬものはそれだけなのだ。  子羊囲いのそばにオオカミが跳躍し、槍をもった男たちが立っている。  ハロルド王はヘイスティングスで死に、ベービスはタンシュブレーで死んだ。  その間中小さな風が丘陵を吹き抜け、取り入れのあとには種まきがやってきた。  そして子羊の新たな生命が生まれてくるのだ。

この(↑)記述に KiKi は日本人が元来持っていたはずの死生観、無常観と同じものを感じたように思います。  要するに「人生とは、生きるとは即ち無である」という考え方に通じる哲学のようなもの・・・・です。

と同時に、この物語でのサトクリフの筆致には四季の風情に「心」を読み込んできた日本人の文化に近しいものを感じました。  良書です。

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