王のしるし(上)(下) R.サトクリフ

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野良仕事の合間、合間を縫って、とうとう岩波少年文庫に収録されているサトクリフ作品を制覇しました。  大学時代に英文学を専攻し、他の国よりはイギリス国に愛着をもってきた KiKi ですが、サトクリフが描く古い時代のブリテンに関してはほとんど無知だったと言っても過言ではないことに今更ながら気が付かされました。  せいぜいがクロムウェル以降あたりからしか知らず、世界の覇者となった以降のイギリスにばかり興味を持ち続けてきた自分が情けなくもあり、手遅れになる前(?)に気が付いたことに嬉しくもあり・・・・(笑)  ま、いずれにしろ本日の KiKi の読了本はこちらです。

王のしるし(上)(下)
著:R.サトクリフ 訳:猪熊葉子  岩波少年文庫

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およそ2000年前のスコットランド。  奴隷の剣闘士フィドルスは、不当に王位を追われ盲目にされたダルリアッド族の王マイダーの替え玉として雇われる。  氏族の運命をかけた戦いのなかで、フィドルスはしだいに「王」になってゆく。  (文庫本上巻裏表紙より転載)

マイダーから不当に王位を奪たカレドニア族の女王リアサンを、ローマ軍の砦に追い詰めたフィドルスとマイダー。  復讐はなし得るのか。  氏族を守るためにフィドルスが下した決断とは...。  人は何によって生きるかを深く問う衝撃作。  (文庫本下巻裏表紙より転載)

この物語を読んでいる間、KiKi は自身に起きたある出来事を思い出していました。  それは今から20年ぐらい前の事。  KiKi は当時外資系のとある会社にお勤めしていたのですが、その会社の組織はフラットでした。(要するに一番偉い外人さん;CFOがいて、その下に日本人の部門長さんがいて、その下にかなり多くのマネージャーと呼ばれるポジションの人がいて、その下はほとんど全員がスタッフという組織。)  当時、そんな組織の底辺のスタッフだった KiKi はたまたまある仕事で一番偉い外人さんの目に留まり、マネージャーに昇格していただくことになりました。  最初その話を聞いたときは「やっと今までの苦労が報われた・・・・。」と嬉しかったのですが、発表される組織図を事前に見せていただいたとき、KiKi は呆然としました。

その会社にはかなり多くの US CPA(アメリカの公認会計士資格)とかMBA(経営学修士)という資格保持者がスタッフとして働いていました。  そんな人たちとフラットな状態で普通の日本の大学卒という人もいたのですが、予定されている組織図を見ると、KiKi の部下になる人たちは全員資格保持者でした。  対して KiKi は資格とは無縁のいわば「現場たたき上げタイプ」の人材でした。  その組織図を見た瞬間 KiKi は恐れを抱きました。

「こんなすごい人たちを部下として使うなんて、KiKi にはできない・・・・・・」

と。  昇格を告げられた日の喜びはどこへやら。  すっかり自信喪失した KiKi は、思い余って一番偉い外人さんのオフィスを訪ねました。

「○○さん。  認めていただいたことはとっても嬉しかったし感謝もしています。  でも、私は普通の日本人で何一つ自分を支える資格のようなものを持ち合わせていません。  それなのにあんなすごい肩書を引っさげた人たちを部下として使うなんて、自信がありません。  この話はなかったことにしたください。」

と。      

その時、その外人さんはまるで父親のような優しい眼差しで KiKi の話に耳を傾けてくれていました。  そしてところどころではウンウンと頷くような仕草までしてくれていました。  自分の言いたいことだけを言い切った KiKi はその「ウンウンと頷く仕草」に満足し、その部屋を後にしました。

それから数日後、KiKi が当時尊敬していたとあるマネージャー職の方に食事に誘われました。  開口一番その方が KiKi に語ったことによると・・・・・

「○○から聞いたぞ。  今度の話、断りにいったらしいな。  俺もお前から自信がないと聞いていたから、本人がそう言っていると伝えたんだが、○○はあのまま辞令を出す気らしいぞ。  お前は資格保持者を部下として使う自信がないとか何とか言っていたが、そういうメンバーが部下の方がお前は仕事がし易いはずだってな。  それに○○はこうも言っていたぞ。  マネージャーっていうポジションはそのポジションを与えられてなるものではなく、その立場で仕事をしているうちに自然となっていくものだってな。  要するに、ポジションが人を作るんだってな。」

こうして、KiKi は不本意ながら有資格者を部下にマネージャーと呼ばれるポジションに着きました。  結果は・・・・と言えば、○○さんの言った通りでした。  結局、KiKi はこの経験により「マネージャーの仕事は何か?」を知ることができるようになりました。

この物語の主人公、フィドルスはただ単に見た目が馬賊の王マイダーに似ているというだけで、王位を追われたマイダーの替え玉として雇われました。  常に雇われて、人に使われる立場だったフィドルスが偽りの・・・・と言えども、「王」となり、「王」として振る舞ううちに、彼は「王」になっていきました。  これは彼がある意味で「あるべき王の姿」という一種の Vision をぶらすことなく、その役目を真剣に務めてきたからこそ得た境地だと思うんですよね。

最後に「王のしるし」を体現したのは、フィドルスであったけれど、同時にマイダーもであったところに物語の深みを感じました。  プロット自体はちょっと安っぽい感じがしないでもなかったけれど、最後の引き締めがあってその安っぽさが消えた・・・・そんな印象でした。  素敵な物語でした。

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コメント(3)

kikiさんこんにちは。
kikiさんのお話には、人生の教訓、というものをとても感じます。
又、都会暮らしから田舎暮らしへと、転換されたことも、素晴らしいと思います。

それから、エキサイトブログ『音楽の本棚』のリンクに、入れさせていただきました。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年5月 5日 23:10に書いたブログ記事です。

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