ムーミン谷の冬 T.ヤンソン

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ムーミンシリーズを読み始めて、6冊目。  正直なところここまでの読書の中では「彗星」が KiKi の一番のお気に入りで、それ以外は楽しいと言えば楽しい物語だし、深いと言えば深い含蓄のある言葉にハッとさせられるシーンがあったりはしたものの、もしも★で評価をするなら3.5っていう感じだったんですよね。  でもね、6冊目にして KiKi は★を5つの作品に出会いました。  今日はその作品のご紹介です。

ムーミン谷の冬
著:T.ヤンソン 訳:山室静  講談社文庫

4061380966_09.jpeg  (Amazon)

まっ白な雪にとざされたムーミン谷。  パパとママといっしょに冬眠にはいったのに、どうしたわけか春がこないうちにたった1人眠りからさめてしまったムーミントロール。  はじめて知る冬の世界で彼のすばらしい冒険がはじまった......。  冬のムーミン谷を舞台にヤンソンがつづるファンタジー童話の傑作。  (文庫本裏表紙より転載)

北欧という言葉に「雪と氷に閉ざされた大地」というイメージを持つのは KiKi だけかしら??  フィンランドの童話であるにも関わらず、そんな冬には主役を冬眠させちゃう(もっともそこにこそリアリティを感じたりもするけれど)このシリーズ。  そんな中で普通だったら冬眠しているはずの季節に、なぜかパッチリと目を覚ましてしまったムーミンを描いているのがこの巻です。  さすがに北欧の作家さんが描く冬の物語であるだけに、その冬の描写が何と言っても素晴らしい!!  雪の美しさ、厳しさ、静けさが描かれています。  そして春の訪れに伴い氷が割れる音が谷中に響く様なんかは、のめり込むように読んでしまいました。

ムーミン・シリーズにお馴染みのキャラの大半(スナフキン、パパ、スニフ、スノークのおじょうさん等々)はほとんど出てこないから、彼らのファンの人たちにとってはちょっと物足らない物語になってしまうのかもしれないけれど、彼らを全員登場させないことによってムーミンが直面する孤独さとその孤独さを克服していく姿には感銘を覚えます。

自分がよく知ってるつもりだった世界が冬の間にはすっかり様子を変え、馴染みのない多くの生き物がそんな冬のムーミン谷で生きているというお話の中に、今まで全然気に掛けたこともなかった他者の存在を認めるというメッセージのようなものを感じ、ああ、このお話には深いものがあるなぁ・・・・と。  

 

ムーミンの数多くの「気づき」を導いてくれる役割を果たすのが、ムーミン谷の冬の水浴び小屋に居を構える(?)「おしゃまさん」というキャラなんだけど、この人の語る言葉の多くがとっても意味深です。  哲学的でもあり、倫理的でもあり、ちょっぴり虚無的でもあり・・・・・。

「ものごとってものは、みんな、とてもあいまいなものよ。  まさにそのことが、私を安心させるんだけれどもね。」

「雪って、つめたいと思うでしょ。  だけど、雪小屋をこしらえて住むと、ずいぶんあったかいのよ。  雪って、白いと思うでしょ。  ところが、ときにはピンク色に見えるし、また青い色になるときもあるわ。  どんなものより柔らかいかと思うと、石よりもかたくなるしさ。  なにもかも、たしかじゃないのね。」

「あんたたちはいったい、あんまりいろんな物を持ち過ぎてるのよ。  思い出の中の物や、夢で見る物までさ。」

「この世界には、夏や秋や春にはくらす場所をもたないものが、いろいろといるのよ。  みんな、とっても内気で、すこしかわりものなの。  ある種の夜のけものとか、ほかの人たちとはうまくつきあっていけない人とか、だれもそんなものがいるなんて、思いもしない生きものとかね。  その人たちは、一年じゅう、どこかにこっそりとかくれているの。  そうして、あたりがひっそりとして、なにもかもが雪にうずまり、夜が長くなって、たいていのものが冬のねむりにおちたときになると、やっとでてくるのよ」

「死んだら、死んだのよ。  このりすは、そのうち土になるでしょ。  やがて、その体の上に木が生えて、新しいりすたちが、その枝の上で跳ね回るわ。  それでもあんたは、悲しいことだと思う?」

「ものごとというものは、何でも、楽しい方に考えるものよ。」

「どんなことでも、自分で見つけ出さなきゃいけないものよ。  そうして、自分ひとりで、それを乗り越えるんだわ。」

どうやらこんな意味深なセリフを吐くのは、スナフキンの専売特許ではなさそうです(笑)。

ムーミンと同じように何故か冬眠から目覚めてしまったミィがこの作品でもいい味を出しています。  親しいものがすべて冬眠中で、孤独をたっぷり味わっているムーミンを尻目に次から次へと自分の楽しみを見つけ出し、思う存分楽しんじゃうミィの姿に、身体はちっちゃいかもしれないけれど、大きなものを感じました。  彼女みたいなのが「自立」の真の姿なのかもしれません。  スナフキンも確かに自立したオトコっぽいけれど、彼の場合は「自立」を通り越して「孤独を愛するニヒルさ」みたいなのが漂うのに対し、ミィは常にムーミン谷でみんなと一緒にいるのに、己を貫いている感じがします。

さて、ムーミン・シリーズも残すところ3冊です。  次は「ムーミン谷の仲間たち」。  この物語も「冬」同様、★5つがつけられる物語だといいなぁ。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年8月15日 10:17に書いたブログ記事です。

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