ピスタチオ 梨木香歩

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9月28日までに返却しなければならない吾妻郡図書館から借りてきている本全6冊のうち(うち1冊は友人名義で借り出し うふ♪)、最後の1冊を読了しました。  今回は先日ご紹介した 「f植物園の巣穴」と今日ご紹介するこちらが梨木作品です。

ピスタチオ
著:梨木香歩  筑摩書房

51opKLAFLoL__SL500_AA300_.jpeg (Amazon)

なにものかに導かれてやってきた、アフリカ。  棚は、すでに動きはじめたこの流れにのるしかない、と覚悟をきめた...。  待望の最新長篇小説。  (Amazon より転載)

以前にもこのエントリーで書いたことだけど、梨木作品の装丁ってホントに KiKi 好み 266.gif  KiKi の読書の楽しみの最大のものはもちろんその本で詳らかにされる何らかの物語だったり、1つの視座だったりするわけだけど、同時に結構大事なのはその本の頁をめくる前の「本」としての姿である部分も決しておざなりにはできない要素なだけに、梨木作品に関しては「この装丁の本を手にしているこの瞬間の満足感」みたいなものもあるんですよね~。  そういう意味では岩波文庫みたいな本は「大事なのは中身でしょ」的な合理主義が徹底しすぎていて、時に物足りなくなることもあるんですよね~。  もちろん岩波文庫のラインナップには大満足 & 長年とってもお世話になっているので、装丁だけで離れることはないんですけどね(笑)

でも、この装丁に対するこだわりがあるからこそ、「岩波少年文庫 特装版」も「岩波少年文庫 復刻版」もあちこち探し回って、今となってはかなりお高いのにそれこそ清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入したりもせずにはいられないのです(笑)  

ま、それはさておき、本作もまさに KiKi の好みストレートど真ん中の梨木ワールド満載の物語でした。

冒頭で主人公「棚(実は本名ではなく、この主人公がライターとして使っているペンネーム)」が感じる気圧の変化と体調のくだりで、同じように気圧の変化が体調に及ぼす影響を日々感じている KiKi は「うんうん、わかる、わかる」とある種風変わりな連帯感のようなものを感じ、ぐっと主人公に親近感を覚えました。  もっとも KiKi の場合はだからと言って天気図を日課のようにきちんと見て体調管理に役立てたり、春一番の湿った風を浴びて「ああ、これは亜熱帯に出自をもつ空気なのだろう。」な~んていう地球規模の風の流れに想いを馳せたりするような能力(?)は持ち合わせていないんですけどね(苦笑)

でもね、この物語の核の1つである「自分はこの大自然の一部であり、生かされている存在なんだ。」というある種の哲学みたいなものは、この気圧配置による体調不良を経験している人間であればこそ身に染みて感じざるを得ない1つの感覚であることは間違いないような気がするんですよね~。

そもそも KiKi が現代の文明社会を謳歌しつつも、山小舎暮らしを指向するに至った最初のきっかけはこの「気圧配置による体調変化」が年齢を重ねるにつれ激しくなってきたことに端を発していたりするのです。  それまではまるで「人知」を万能であるかのように錯覚し、「人類の進歩」を最善であると感覚的に捉え、現代経済社会の中で「能力のある人」と見做されることに躍起になっていたようなところがある(もちろんそれだけの人生ではなかったけれど ^^;)KiKi が「何だ、私って大した存在じゃないんじゃない。  この時代のこの大自然の中で生かされているちっぽけな『人類』という種に属する生命体にすぎないんじゃない。」と考えるに至ったその第一歩・・・・・。

物語の最初の方でこの「棚」の飼い犬が患い、動物病院に通うあたりの描写は現代の都市生活の一辺ではあるものの、彼女が日頃感じているある種の「自然体の自分が属する世界」との隔絶感(とは言え、そういう中で日常生活は営まれているのだけれど)を端的に表すエピソードだなぁ・・・・と絶妙な説得力で KiKi に迫ってきました。

中盤から彼女が本人の意思とは関わりがないかのように流される状況変化の中でアフリカに向かうあたりでこの都会の描写の必然性とアフリカでの描写の対比が生かされます。

彼女はずっとあたかも「傍観者」であるかの如く、何者かに導かれてきた「被験者」の如く構えているんだけど、KiKi にはそうは感じられませんでした。  確かに彼女は友人と呼ぶにはあまりにも希薄な関係だった「片山海里」という青年の著作(?)とたまたま出会い、その彼の「死」というニュースを知るタイミングの微妙さに何か「自分をつき動かすもの」を感じただけ・・・・のつもりなんですよ。  しかもそこにたまたま仕事のオファーとしてアフリカ行きの話が出てきただけ・・・・・のつもり。  で、彼女本人があのアフリカで遭遇、巻き込まれていくスピリチュアルな世界に積極的な興味を持っていたわけじゃない。  

でも、彼女は本人の自覚している「意思」とは全く離れたところで、自分の五感を解放する場所としてのアフリカを知らず知らずのうちに内包していたし、その先にあるものは「地球規模の風の流れに想いを馳せる力」「自宅近くの公園にいる渡り鳥たちの渡りの声を聴きとる力」という能力によってもうすでに能動的に動いている存在になっている・・・・・・そんな風に感じました。

KiKi はまだ彼女の作品の1つ「渡りの足跡」を未読なんだけど、恐らく彼女がこの作品で描きたかった世界観はこの「ピスタチオ」と「渡りの足跡」と、そしてもう1冊「水辺にて」の3冊を読んで初めてジワジワと伝わってくるものではないのかな?・・・・・という予感めいた想いがあります。  

それにしても本作でも大事な役割を果たすのが「水」。  梨木ワールドとは切っても切れない関係のあるモチーフ、「水」。  レオナルド・ダ・ヴィンチが思い描いた「終末と水のイメージ」。  生命の源であると言い古されている「水」。  今年はまるで「水難の相」でもあったかのように「水」「水」「水」・・・・・・と水にまつわる大災害に見舞われている日本。  

何だか「水道の蛇口をひねれば出てくる水」という私たち日本人にとってはある種恵まれすぎるほど恵まれている「水」について、もっともっと堅実にそして誠実に向き合う必要性を改めて感じました。

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