白鳥異伝(下) 荻原規子

| コメント(0) | トラックバック(0)

ヤマトタケル伝説を下地にした「和製ファンタジー」の下巻。  元々がヤマトタケル好きの KiKi にとってはなかなか楽しめる物語でした。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

白鳥異伝(下)
著:荻原規子 絵:佐竹美保  徳間 Novels Edge

515VUSjor6L__SL160_.jpeg   (Amazon)

「そなたの胸にはすでに4つの勾玉がそろっている・・・それ以上になぜ望むのだね」 「剣の力を滅ぼすため、そして同時に剣の主を救うためです・・・5つをそろえなくてはできないのです。  日高見(ひだかみ)の勾玉は、なぜ見つからないのでしょう・・・」  「日高見の勾玉はある」  岩姫はいい、一度目をつぶって考えてから再び遠子を見た。  「だが、そなたからはへだてられている。  そなたも菅流(すがる)もじゃ。  御統(みすまる)の主にそれを見つけ出すことはかなわぬ。  ・・・だがそなた、おそらく玉の御統の最後の主となるであろう橘の末裔(すえ)の娘に、これを言ってやることはできる。  勾玉は、勾玉だけを力とするものではない・・・・」  (本裏表紙より転載)

上巻のエントリーでも書いたように、これは結構面白かったです。  難があるとすれば、若干「ハーレクインっぽさ」が鼻につくあたりでしょうか(笑)  せっかく日本の古典、それも記紀で描かれる世界を舞台にしているわりには記紀を読んで感じる素朴さ・荒々しさとか万葉集を読んで感じる大らかさはなりを潜め、現代っぽい「綺麗さ」が大手をふるっているように感じられ、ちょっと嘘っぽい(苦笑)  でも日本神話とはあんまり接点を持たずに育っているだろう(よくは知らないけれど)現代の中高生あたりにこの物語を読むことによって日本神話に興味を持ってもらうきっかけにはいい本なんじゃないかなぁ・・・・と。

作品のプロット自体にはさほど独創的なものを感じないのですが、「大蛇の剣」や「勾玉」と言った小道具類の扱い方が見事だなぁと感じます。  個人的には歴史の教科書なんかで「勾玉」の写真を初めてみたとき、「これのどこがよかったんだろうか??」と感じていた KiKi ですが(とは言いつつも、大人になってからはあの太極図(下図↓ 参照)の片割れみたいな形に魅せられていたりする)、こういう形で出てくると「ああ、そういうこともあったかもしれない・・・・・」と妙な納得感みたいなものが得られます(笑)

200px-Yin_yang_svg.png     

5つ目の勾玉を登場させなかったのは、やっぱり三部作の次作を意識して・・・・・のことだったのかなぁ。  神話の世界に出てきた小道具が後々の世で起こる様々な騒動に関係するというのは KiKi の大好きな「指輪物語」と同じ構造なんだけど、「指輪」はどうしても異文化的(≒西洋文化的)な香りが付きまとうのに対し、「大蛇の剣」や「勾玉」は和風(と言うか、東洋文化的)な香りがするのが嬉しいところです。

それにしても、この作品を読んでいて KiKi が一番感銘を受けた事は実は物語そのもの・・・・というよりは「日本語の美しさ」だったように感じないでもありません。  5つの勾玉の色の表現からして、何だか背中がゾクゾクするような日本的な美意識の象徴みたいに感じるんですよね~。  嬰(みどり)、生(き)、暗(くろ)、顕(しろ)、明(あか)。  現代の私たちが知っている、緑、黄、黒、白、赤とは別の色(と言うか同系色かもしれないけれど、ちょっと異なる色)だったのかもしれないけれど、何だか神秘的であるのと同時にその名前でイメージされていただろう色が頭に広がり、日本人の自然観が伝わってくるような気がします。

そしてもっと面白いなぁと思ったのは地上に散ったこれらの勾玉が実は上代の女神の胸を飾った首飾りであり、そもそもは8つの勾玉が連なっていた・・・・というお話。  8つの玉ってまるで南総里見八犬伝みたいじゃないですか!!  あちらは「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」だったけれど、こちらは「明(あか)、暗(くろ)、幽(あお)、顕(しろ)、生(き)、嬰(みどり)、輝(かぐ)、闇(くら)」。  この2つに関連があるのかどうかはよく知らないけれど、「八」という数字に対する日本人の独特の感覚(すえひろがり とか)も思い起こされ、興味深いです。

KiKi がもっと若ければ主人公の「遠子」や「小俱那(おぐな)」、そして「菅流(すがる)」なんかに惹かれるものがあったかもしれませんが、この年齢になった KiKi にとってもっとも魅力的に映った人物は「七掬(ななつか)」でした。  脇役も脇役、最初の登場は「御子の従者」で、次は「小俱那(おぐな)の指南役」、最後に本人が出てくるときには遠子と菅流を襲う「盗賊」なんだけど、その「生き抜く力」みたいなものに感銘を受けました。  まあ、こんなイケメンとは言い難い山賊みたいにむさくるしそうな♂に興味が沸くあたり、KiKi もやっぱり歳だなぁ(苦笑)

どちらかというと苦手意識のある荻原作品の中で、これは結構ヒットな作品でした。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/999

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年9月30日 11:07に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「白鳥異伝(上) 荻原規子」です。

次のブログ記事は「2011年9月の読書 メディアマーカー」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ