ジーンズの少年十字軍 上・下 T.ベックマン

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吾妻郡図書館から借りてきた残り2冊。  さほど期待していなかった本だったんだけど、あまりにも面白くて一気に読了してしまいました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

ジーンズの少年十字軍 上・下
著:T.ベックマン 訳:西村由美  岩波少年文庫

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オランダの少年ドルフは、知りあいの博士が発明したタイムマシーンに乗って13世紀へ―。  思いがけず彼は何千人もの子どもたちの真っただなかに巻きこまれてしまう。  この大集団は、羊飼いの少年ニコラースの率いる少年十字軍だった!  (文庫本上巻裏表紙より転載)

一行は、イタリアのジェノヴァをめざして険しいアルプス山脈を越える。  寒さや飢えや病気でつぎつぎと倒れていく大勢の子どもたち...。  ドルフは、この少年十字軍には恐ろしい陰謀がひそんでいることをかぎつける。  ドルフの運命は?  (文庫本下巻裏表紙より転載)

この本、たまたま KiKi の岩波少年文庫ライブラリーの蔵書にはまだなっていなくて、それを図書館でたまたま見つけたので借りてみたんです。  まだ購入していない理由も、図書館で見つけた際にさほど期待しなかった理由も、その両方が同じものでした。  つまりね、「ジーンズ」という言葉と「十字軍」という言葉があまりにもミスマッチで奇をてらったもののように感じられて仕方なかったんですよね~(苦笑)  「なんじゃ、そりゃ」っていう感じ。  でね、読み始めて最初の2章くらいまでは正直さほど心を動かされることはありませんでした。

時を旅するというテーマは古今東西、あちこちに様々な物語があるけれど、この物語の旅立ちは正直なところ、かなりいただけない・・・・・。  ハリウッド映画の「Back to the Future!」のエメット・ブラウン博士(通称ドク)よりも魅力に欠ける2人の博士が開発したタイムマシーンに乗って過去へ旅したいと渇望する主人公のドルフの姿にも、さほど感情移入することができなかったし・・・・・・。  更には「タイムマシーン」みたいな複雑怪奇な機械を発明できるほどの頭脳を持った人たちが、フランスとドイツを間違えちゃう(機械の不具合だったのかもしれないけれど)な~んていうのは、どう考えても物語として破綻しているように感じられました。  

ところが・・・・・です。  彼が巻き込まれたのがニコラースという本人曰く「神の啓示を受けた」少年が引率する少年十字軍の行列だったというあたりから、物語の世界がグググッと迫ってくるようになりました。  これはハチャメチャな説得力に欠ける冒頭とは大違い!!  この少年十字軍の有様が語られるあたりから、KiKi は完璧にこの物語の世界観の中に引き込まれてしまいました。

 

この物語の魅力の1つは主人公であるドルフがその他の少年たちとはまったく異質の文化の中で育っているという点にあると思います。  周りの人たちと服装が違う、言葉が違う(古代語なんかしゃべれません)、価値観が違う(迷信、異端呼ばわり、何でも神の思し召し。)、常識が違う。  そんな異質な彼が、ふと気がつくとみんなのリーダーになっているんですよね。  

現代的な合理性と平等社会で育った彼の言動は中世の人たちの目には時に「異端」と映るんだけど、確実に生きのびる方策を考え実行に移すことができるのが、この齢15歳の少年ただ1人なんですよ。  無秩序で「信仰心」だけの寄せ集め集団(もっともこれが本当の意味での信仰心なのか、単に苦しい今の生活から逃避できるという希望のようなものなのかは、定かじゃないけど)だった「少年十字軍」を、ひとかどの組織にしちゃうんだから、本人が生き抜くための苦肉の策と言えどもやっぱり凄い!!

始めは疲労、飢餓、怪我病気でバタバタ道端に死んでいった子供たちだったけれど、ドルフの働きかけにより組織が系統だち、そこに適材適所で人を配し、ふさわしいリーダーを置いてやることにより、乞食集団と変わらない団体が機能的に動き始めます。

ドイツからイタリアに抜けるためにアルプスを越えようとしているのに、装備もお粗末極まりありません。  イマドキの「山ガールファッション」な~んていうのは望むべくもないけれど、裸足に近い足(しかも傷だらけ)、ぼろきれと言ってしまいたいような服、保存性が悪く量的にも充分でない食料を持って「神の施し」だけを頼りに、7000人からの大所帯にアルプス越えをさせるなんて、現代人の感覚からすると悪夢以外のなにものでもないけれど、無知な少年少女はただひたすら「神の国」を信じて進軍しようとします。  これでドルフがいなければどうなってしまったことやら・・・・・・。

他にもいっぱい「そんな~!!」と言いたくなるような事件が起こるし、最終的にはドルフ君の奮闘虚しくかなり多くの少年少女が不幸な最期を遂げたりもするんだけど、そこまで描き切って「個人にできる限界」やら「付け焼刃の組織の暴走」やら「暴徒と化した子供の怖さ」等々まで触れているので、ホント、一気に読まされてしまいました。  この手の物語って、世界描写が薄っぺらだったり、学術的に傾き過ぎたりしていると、面白さに欠けたり飽きちゃったりしがちだけど、この物語には大満足でした。

冒険のスタート同様、エンディングも唐突で、ご都合主義を感じないでもなかったけれど、それを吹き飛ばして余りある中間部があるがゆえに魅力的な作品になっていると思いました。

物語の最後、いよいよ少年十字軍が事実上の解散をし、ドルフも現代社会に戻ろうか・・・・という時に、タデウス修道士と交わす会話と、その後のモノローグが心に残りました。

「甲冑に身を包んだ白馬の騎士や、美しい姫君、それに吟遊詩人とか・・・・・に会えるから、この時代は美しいんだと、ずっと僕は思ってた。  きれいな教会が建てられるのを見たり、ギルドのパレードをすごいと思ったりできると思ってた。  でも、ぜんぜんちがった。  お城を中から見ることもほとんどなかったし、馬上槍試合を見たり、武装した騎士に道をゆずることもなかった。  けれど、田舎や農民、物乞いや道に迷った子供たちを見た。  本で読むような身分の高い人たちではなく、ふつうの人たちと知り合った。  そして、その人たち・・・・・ときには残酷で愚かな人もいたけれど、とてもいい人たちもいた・・・・・僕はたくさん学びました。  タデウス修道士、あなたからも。」
「わたしから?  いったい何を?」
「善良さ。  同胞たちへの愛。  誠実さ。」
「息子よ、それは、われらキリスト教徒の義務だ。」
「あなたは、義務で行動していません。  愛で行動しています。」

・・・・・そして、その愛をのちの世紀では忘れてしまった、とドルフは思った。  いや、すっかり忘れてしまったわけではない。  20世紀、人々は社会制度の全体系を作り上げた。  おかげで、病人や貧しい人々、障害者が、この13世紀のように飢えで死ぬことはもはやない・・・・・。  だが、愛でやっていることがあるだろうか?  タデウス修道士のあの素朴な、時には手段を選ばぬほどの愛で・・・・・?  僕たちはそれを忘れ、5倍もややこしい書類にとって代わらせてる。

 

先日、震災後の日本をどのように復興していくべきか?という討論番組(TVでお馴染みのパネラーが喋るのではなく、いわゆる視聴者参加型の討論番組)をチラッと見たんだけど、その時、討論に参加している若い女性の1人が「日本人は今までと同じような繁栄を享受しようと考えるべきではない。  もっと貧しくなることも覚悟してもう一度生活のあり方を見直すべきだ。」というような趣旨の発言をし、恐らくその発言に対する反応と思われる Twitter の書き込み(ひょっとしたらHPから?)がテロップで流れました。

「本当の貧しさを知らない若い人は安易に貧しくなってもいいからと言うべきではない。」  

と。  ドルフの言葉を噛みしめているときに、何故かそのシーンを思い出しました。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年9月 6日 11:24に書いたブログ記事です。

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