さよならドビュッシー 中山七里

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先日、東京のマンション近くのブックオフに「岩波少年文庫」の物色に行った際、この本と一緒にみつけて衝動買いしてしまった本を読了しました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

さよならドビュッシー
著:中山七里  宝島社文庫

51Kq+DEWMjL._SX230_.jpg  (Amazon)

ピアニストからも絶賛!  ドビュッシーの調べにのせて贈る、音楽ミステリー。  ピアニストを目指す遙、16歳。  祖父と従姉妹とともに火事に遭い、ひとりだけ生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負う。  それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。  ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する―。  第8回『このミス』大賞受賞作品。  (文庫本裏表紙より転載)

基本的に KiKi の読書傾向の中で「ミステリー」っていうやつはあんまり嗜好度が高いほうではないんだけど、この本に関してはこの(↑)文章にある「ピアニストからも絶賛!」に思わずつられて手を出してしまいました。  冷静になってよくよく考えてみると「絶賛したピアニストって誰よ??」っていう感じもなきにしもあらず・・・・で、それだけで手を出しちゃうあたり、KiKi もまだまだ修行が足りないなぁと反省することしきりなんですけどね(苦笑)

でもじゃあ手を出しちゃったことを後悔する本だったか?と言えばそれはそうでもなくて、KiKi には結構楽しむことができました。  クラシック音楽のブログを書いたり、音楽鑑賞を日常的な趣味にしていたり、長い年月をかけて音楽を聴きながら妄想想像力を膨らませてきた人間にとっては、この本で描かれる音楽描写にはスンナリと馴染むことができたし、ついでに言えば身に覚えもあったりもするので楽しく読むことができました。  ま、肝心要のミステリーとしてのできがどうか?と問われると、ミステリーにさほど造詣が深いわけではない KiKi であっても「え?  そんなのってアリ??」って感じちゃったぐらいだから、どうなんでしょうか??


ま、後は登場する楽曲とそのステージのミスマッチがちょっと気になっちゃったっていうのも少しだけ「どうよ??」っていう部分ではありました。  もちろん主人公が被った大事故とそれによって背負い込んだ厳しいリハビリ生活という設定と比べると、選ばれた楽曲はある意味自然だと思うし、曲の難易度と芸術性とは別物だから、ラストがコンクールではなくコンサートという設定だったらやっぱりこの選曲に疑問は一切湧かないんです。  でも、コンクールっていうやつの性格はそういうもんじゃない。  しかも一次審査の曲がショパンのエチュード2曲なのに対し、本選の曲がドビュッシーの「月の光」と「アラベスク」っていうのはちょっと不自然極まりない・・・・というか、バランスが悪すぎる感じがしちゃうんですよね~。  これが最低でも「映像」とか「版画」の中の曲か、そうでなければのだめちゃんじゃないけれど「喜びの島」を選んでくれていたら KiKi のこの違和感はなかったと思うんですよね。 

と言うのもね、このエントリーでお話した全音の楽譜のカテゴリーで言うなら、ショパンのエチュードは青帯の上級コース。  「月の光」が含まれるベルガマスク組曲は黄色帯の中級コースの上の方(もっともそれは組曲としての難易度ランキング」であって、「月の光」単体だと恐らく中級コースの下の方、「アラベスク」はやっぱり黄色帯の中級コースの下の方なんですよ。  どちらの曲もドビュッシーらしい音色で芸術性高く演奏するにはそれなりの研鑽が必要なのは事実だし、中級だから簡単だとまでは言わない(実際、KiKi は大人になってからこの「アラベスク」に挑戦したけれど、テクニック的には割とスンナリいけちゃったけれど、音色を作り上げるのにものすご~く時間がかかった)けれど、正直なところ「コンクール」という舞台に向いた曲じゃないことだけは確かだと思うんですよね~。

まあ、それはさておき、彼女のリハビリの効果には目をみはるばかりです。  もちろんもともと子供時代からの研鑽があったということが大きいのはわかっているけれど、事故後、あんなに凄い怪我(と呼んでいいかどうかわからないけれど)を負ったにもかかわらず、本当にわずかな期間で初級者用とは言えどもブルグミュラーの「アラベスク」を弾き、あっという間にR.コルサコフの「熊蜂の飛行」を弾き、さらにあっという間にショパンのエチュードとは!!  

演奏シーンの音楽を言語化する部分の筆力は圧巻でした。  そしてもう一つ、いろいろ考えさせられたのは彼女のピアノの先生となる岬さんの以下の言葉でした。

現代は不寛容の時代だ。  誰もが自分以外の人間を許そうとしない。  咎人には極刑を、穢れた者、五体満足ではない者は陰に隠れよ。  周囲に染まらぬ異分子は抹殺せよ。  今の日本はきっとそういう国なんだろう。  いつ頃からか社会も個人も希望を失って皆が不安がっている。  不安が閉塞感を生み、その閉塞感が人を保身に走らせる。  保身は卑屈さの元凶だ。  卑屈さは人の内部を腐食させ、そのうち鬱屈した感情が自分と毛色の違う者や少数派に向けられる。  彼らを排斥しようとする。  そうしているうちは自分の卑屈さを感じなくて済むからだ。  立場の弱い者を虐めたり差別するのも多分にそういう理由だろう。  不正を糾弾された人間に問答無用で罵声を浴びせる、頂上を極めた者の転落を悦ぶ・・・・・全部、同じ構図だ。  無抵抗な人間には際限なく悪意が降りかかる。

これって、若干厭世的に過ぎる感もある言葉だとは思うけれど、ある面での真実をついている言葉だと思うんですよね~。  そして、もう一つ。  やっぱり同じ岬さんの言葉なんだけど、

人は障害者とか病人怪我人をじろじろ見ようとしない。  いや、見たくないと思っている。  だから視界に入ってきても、さっさと視線を逸らせるか遠ざかろうとする。  とにかく関わり合うのが嫌なんだね。

これ、別に「見たくない」わけでも「関わり合うのが嫌」なわけでもないけれど、「ジロジロ見るのが失礼にあたるんじゃないか?  相手も好奇の目に晒されているような気分になって嫌だろうな・・・・」と勝手に思い込んでいるようなところがあるのは事実で、もっと言えば「見るだけで何もできない自分」を認識するのも辛いということもあって、確かに視線を逸らせている傾向はあるような気がしてちょっとドキッとしました。  でもね、そういう方と遭遇した場所が駅やなんかだと片目の端にはその姿をずっと捉え続けていて、一応 KiKi の自己認識としては「何か危険が迫ったら助太刀しに飛び込もう!」と思っているつもり・・・・ではあるものの、別の見方をすれば「善意を装った好奇心かもしれないなぁ」なんて感じることもあってねぇ。  で、要するに結果としては「できるだけ見ないようにしている自分」に気が付くわけで・・・・。

元はと言えばカエサルの言葉であり、この物語の中で主人公のおじさんが語る言葉でもあるけれど

人は見たいと思うもの以外は実際には見えていても見ようとしない

は本当に事実だなぁ・・・・と思うことしきりです。

ま、それはさておき、個人的には彼女の今後がかなり心配・・・・。  20年足らずの人生の中でこんなにも大きな、普通の人なら滅多に遭遇しない大事件(水害、火災、殺人)にいくつも見舞われちゃった彼女、この先精神的に大丈夫なんだろうか??  しかもねぇ・・・・の終わりかただし・・・・。  それでも「負けない」人っているんだろうか??  う~~ん・・・・・。      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年12月13日 11:22に書いたブログ記事です。

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