映像の功罪

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今、KiKi は東京に来ています。  今回上京する予定がなければ「岩波少年文庫」を読み進めているはずだったのですが、中距離移動が伴う際に岩波少年文庫を読み進めようとすると持ち歩く本の冊数が増えてしまい、常にパソコンを持ち歩く KiKi にとってはちょっと辛い・・・・(苦笑)  ま、てなわけで得意の浮気心(?)を発揮してここ2日ほどはPHP文庫の「伝説の名参謀 秋山真之」を読み進めているのですが、残念なことにまだ読了できていません。  ま、てなわけで今日はちょっと雑感めいたエントリーを書いてみたいと思います。

昨日のエントリーで「青矢号」について書いた際にもちょっと感じていて書きたかったことだし、以前読了して既にエントリーを書いてあった「ハイジ」に宮崎さんの「岩波少年文庫50選」のコメントを転記した際にもちょっと感じていたことをこの機会に整理してみたいと思うんですよね。  まずは「ハイジ」に寄せた宮崎氏のコメントを転載しますね。


ぼくらがまだ若くて、たぶんあなたが生まれるずっと前に、ぼくらはこの本を原作にして、52本のテレビアニメを作りました。  ぼくらの先頭にいたのは、ひとりの若い演出家でした。  もちろん今はおじいさんになっていますが、その人が有名なわりにあまり読まれなくなっていた原作に新しい生命を吹きこんだのです。  アニメより原作を本で読んだ方がいいという人がいます。  ぼくも半分位そう思っていますが、この作品はちがうと思っています。  見、読み比べてみてください。  ぼくらはいい仕事をしたと、今でも誇りに思っています。


このコメントを転載している間、KiKi がどんなことを感じていたかをまずお話ししようと思います。  このアニメがTV放映されていたのを KiKi はリアルタイムで観ていました。  あれは KiKi が中学1年生ぐらいの頃のことでした。  そして KiKi が「ハイジ 完訳」を初めて読んだのは小学生の頃のことでした。  だからアニメを観ていて、とっても懐かしかったのと同時に、アニメの美しさに、声や音が聞こえる臨場感にワクワクし、感動しました。  でもね、ワクワクしつつも感じていたのはちょっとした違和感だったんです。  じゃあ、その違和感の正体は何かっていうとね、KiKi には KiKi なりのハイジ像があり、おじいさん像があり、ペーター像があり、クララ像があり、ロッテンマイアさん像があったんだけど、その全員とは言わないけれど何人かは KiKi が子供心にイメージしていたそれぞれの人たちの風貌・声・動作とはあまりにも違っていたっていうことなんですよね~。

もちろんその違いを必ずしも「悪いもの」と断じるつもりはないんだけど、少なくとも KiKi の中に息づいていた「自分が思い描いていた自分だけの」ハイジやおじいさんやペーターやクララ、そしてロッテンマイアさんはあのアニメを観たことによって消滅してしまい、その後これらの名前を耳にするたびに思い出すのはあのアニメのあのキャラクターに取って代わられてしまった・・・・ということは否めないんですよ。  そしてそこに大人になった KiKi は一抹の寂しさを感じるのです。

幼き日に KiKi が読んだ完訳本にもところどころ・・・・ではあるものの「挿絵」がついていました。  そうであるだけに KiKi が思い描いていた彼ら、彼女らはその挿絵に引きずられたイメージだったことは否めません。  そういう意味では「自分が思い描いていた自分だけの・・・・・」と言うのは言い過ぎだということは承知しているんです。  でもね、「挿絵」が「アニメ」と異なるのは「挿絵」は「静止画」であり、アフレコもついていないし、効果音もないということなんです。  更には「絵本版ハイジ」ではないからその挿絵の登場頻度も何十頁かに1枚という程度だったから、物語の大半の部分は「文字を読んで、想像力をたくましくして、自分なりに頭の中で描いた人物像、風景、音、風、匂い、食べものの味」だったのは紛れもない事実なんですよね~。

どっちのキャラが秀逸だったかな~んていうことを言いたいわけじゃありません。  でも、はっきりしていることはアニメで与えられた情報よりも、自分が想像力のありったけを使ってイメージした情報には「自分」がいるんじゃないかっていうことなんです。  もちろん文学作品それ自体は人様から与えられたものではあるんだけど、本を読んで感じる感動は「提供してもらった感動」ではなく「自分が取りにいった(もしくは自分が作り上げた)感動」だったような気がするんです。  でも、アニメにしろドラマにしろ映画にしろ、効果音付きの動画で見せられるとそこには自分が入り込む余地があんまりなくて、「与えられた感動」で満足しちゃう手軽さがあって、そこに寂しさがあるような気がして仕方ないんです。

確かに宮崎さんたちの仕事は素晴らしかったと KiKi も思います。  そして、彼らがあのアニメを作った頃には「ハイジ」という物語が廃れ始めていたのも事実だったんだろうと思います。  あの名作に新たな光を当て、認知度を高めた功績は称えられるべきものだとは思うんです。  あのアニメを観て本も読んでみようと思った子供もいたかもしれません。  でも、あれで十分満足しちゃってあの作品に描かれていた「言葉による風景の美しさの描写」を知らない子供も多いんじゃないかしら。  それほどまでによくできたアニメだったし・・・・・。  そして、あのアニメを観た後、アニメの出来が良すぎたこともあって、KiKi のロッテンマイアさんは宮崎さんのロッテンマイアさんに追い出されてしまったのです。 

「岩波少年文庫50選」のこのコメント(↑)の中で宮崎さんは仰います。  「アニメより原作を本で読んだ方がいいという人がいます。  ぼくも半分位そう思っていますが、・・・・・」と。  KiKi もある意味では半分位・・・・というよりは8割がたそう思っているんだと思うんですよね。  

でね、面白いのは同じ「岩波少年文庫50選」の中で宮崎さんは「シャーロック・ホウムズ」に関してはこんなことを仰っているんですよ。


これは名作です。  文字で読まないとこのおもしろさは判りません。  映画やTVがあっても観てはいけません。  まず本で読まなければ・・・。


「シャーロック・ホウムズ」と「ハイジ」の違いは何なんだろう??  違いがあるとすれば、アニメーション作家として宮崎さんが創った作品なのか否かだけ・・・・のような気がしないでもない(笑)  そういう意味では今の彼を支えている自信の1つがこの作品にあったという心情告白・・・・なのかな??  それはそれで素晴らしい事だと思うし、何度も言うように KiKi はあのアニメ作品それ自体を批判するつもりは毛頭ありません。

「青矢号」を読んだときに KiKi が感じたもの。  それは今日のこのお話に通じていて、KiKi の子供時代に王道だったおもちゃの数々っていうのは、今の時代にそれを見ると作りはさほど精巧じゃなかったし、ちゃっちいものだっただろうと思うんだけど、そうであるだけにそのおもちゃを介在させながら本物をイメージしながら「ごっこ遊び」をしていたようなところがあったように思うんですよね~。  そんな遊びをした人はそのちゃっちいおもちゃを前にしてもその人なりのホンモノのイメージがちゃんとできあがっていたような気がするんです。  そしてそれは「その人が思い描いていた、その人だけの、その人のものと呼べる」イメージになるような気がするんです。  そしてその個人に属するイメージこそが「当事者意識」を醸成する土壌のようなものなんじゃないかと・・・・・。

与えられた感動は確かに感動という意味では同じ(やっかいなのは目、耳を通るので同じというより勝ることも多い ^^;)なんだけど、与えられたものであるだけに有難味も少なければ、「当事者意識」というよりは「傍観者意識」を醸成する温床になりやすいんじゃないか・・・・そんなことを考えちゃったんですよね~。 

ま、とは言っても・・・・です。

正直なところ、KiKi も映像文化には多大にお世話になっている世代だし、例えば「風と共に去りぬ」な~んていう作品は本→映画の順に出会ったけれど、映画で初めて理解できたこともかなり多かったし、「ティファニーで朝食を」な~んていう作品も本→映画の順に出会ったけれど本と映画は別物として KiKi の中で共存しているし、「ロード・オブ・ザ・リング」に至ってはやっぱり本→映画の順で本の方が好きなのは変わらないけれど「PJ、映像化してくれてありがとう!!」っていう感じなので、映像がとにかくよくないというほどは映像蔑視なわけじゃないんですけどね(苦笑)

でもやっぱり映像の功罪についてはもっともっと慎重になってもいいんじゃないか・・・そんな気がして仕方ありません。  


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2011年12月20日 19:28に書いたブログ記事です。

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