小公女 F.H.バーネット

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先日読了した「小公子」に引き続き、バーネット夫人の傑作「小公女」を読了しました。  今回 KiKi が読了したのは古本屋さんで入手したイラスト入り表紙・函入・ハードカバー本です。  (下記の Amazon Link とは異なる版です。)  因みに「岩波少年文庫創刊60年 おすすめブックガイド 昔も、今も、そして、これからも」という小冊子によれば、この版が発売開始になったのは1967年のことだったようです。  そして1974年にオイル・ショックの影響を受けて、簡素なソフトカバーの軽装版に変更となり、それと同時に新刊活動を開始されたとのこと。  この本(↓)の発刊情報によれば岩波少年文庫の「小公女 初版」は昭和29年3月で、このKiKi の手持ち本そのものは昭和47年(1972年)10月の第16刷とのこと。  当時の販売価格は400円となっています。

小公女
著:F.H.バーネット 訳:吉田勝江  岩波少年文庫

2012_Jan06_001.JPG  (Amazon)

大好きな父と別れて、ロンドンの寄宿学校に入学したセーラは、プリンセスとよばれて大事にされます。  しかし、父の死により、無一文のみなしごに―。屋根裏部屋での、つらい毎日が始まります。  ところが、ある日、夢のようなできごとが起こったのです!  逆境の中でも、やさしさと勇気を失わないセーラの姿を、豊かな想像力で細やかに描き、永遠の名作として親しまれている物語。  (Amazon より転載)

子供時代(小学校低学年~中学年)のKiKi を魅了してやまなかったこの物語。  当時の純粋さ(?)を失った今の KiKi が読むと「う~ん、なんかなぁ・・・・・・(ため息)」っていう感じです。  子供時代には幸福の絶頂から不幸のどん底に落ちたセーラが自尊心を持ち続ける姿に感銘を受け、そんな彼女の強さや気高さに見習うべきところが多いように感じたものだったのですが、大人になった今 KiKi がこの子を前にすると正直なところ「何て可愛げのない、何て物質主義に犯された、何て生意気な女の子なんだろう」と思わずにはいられなかったんですよね~。

確かにセーラは「優しい心根」の子供だったらしい・・・・とは思うんだけど、その優しさは多分に恵まれた私 vs. 可愛そうな○○ というある種の優越感あってのもののように感じられるし、貧乏のどん底にあった際にも「もしも私が本物の公女さまだったら・・・・・」というのも、ある意味で「本来の私はこんな身分の者ではない」というある種の選民思想の表れのように感じられるし、要するに上流社会出身者の見栄っ張りの屈折バージョンに見えちゃうんですよ(苦笑)


「小公子」を読んだ際に危惧(?)していたほどにはミンチン先生に感情移入することはなかったけれど、唯一彼女の気持ちが何となくわかると感じたのは「ミンチン先生はセーラが嫌い」という感情で、実際にこんな子供を目の前にしたら、嫌いとまではいかないにしても好きにはなれないような気がしました。  そして今回の読書で KiKi が一番「セーラって何となく好きになれない」と感じたのは、あの屋根裏部屋での「ごっこ遊び」のシーン。  確かにむき出しの床、穴だらけの壁、壁の中にはねずみの一家な~んていう環境はうら寂しいし、そこでの楽しみとして「暖かな居間」を連想するのはわからないじゃない。  でも、彼女の空想は KiKi には度が過ぎるような気がしちゃうんですよ。  「レースのハンカチで作ったお皿を金のお皿」と呼び、「湯呑を彫刻をした葡萄酒の瓶」と呼び、「石鹸入れを本物のアラバスター(雪花石膏)」と呼び、「毛糸の束と紅白の薄紙で作ったものを燭台の飾り」と呼ぶ。  

有物で精いっぱいのデコレーションをして、少しでも場を盛り上げようとする女性心理はわからないじゃないけれど、別に「金のお皿」じゃなくても「お皿」で充分だし、葡萄酒の瓶に彫刻なんかしてなくてもいいだろうし、アラバスターに拘ったり燭台に飾りを欲しがる時点で、結局は「金持ち意識が抜けきらない鼻持ちならない小娘」に見えちゃったんですよね~。  結局のところ彼女の自尊心が満たされるのは、そういう資力をベースにした物質に囲まれてこそ・・・・・のような感じがしちゃってねぇ。  何せしょっちゅう出てくるんですよ、「お金持ち」「お金持ち」っていうフレーズが・・・・・。

セーラの父親がどんな身分の人だったのかは詳細には描かれていないけれど、まあ、あの時代のイギリスで生まれ、イートン校に進学し、帝国主義真っただ中のインドに駐在していた大尉さんというだけで、要するにどういう人だったのかは察しがつくわけです。  そしてそのインドの地で彼女はイギリス将校の娘というだけで、インド人奴隷を何人も傅かせていた人種だったということも・・・・・。  そんな生まれの割には「できた娘」だったのはそうかもしれないけれど、やっぱり彼女の中に悪意なく巣食っている選民思想を感じずにはいられません。

セーラは屋根裏部屋の隣の囚人である、ベッキィ対してまだ裕福だったころにこんなことを言います。

「私たち、全然同じでしょう。  私はあなたと同じような、ただの女の子なの。  私があなたでなくて、あなたが私でないっていうのは、ただの偶然の出来事なんですもの。」

私(≒ セーラ ≒ 上流階級)、あなた( ≒ ベッキィ ≒ 超下流階級)という対立軸がここにあり、それはセーラが言うように「たまたまそこに生まれつく」ことに全てがかかっているわけだけど、それでも彼女は最後の最後にミンチン先生に言い放ちます。

「私は・・・・私は、いつも、そのつもりでおりました。  寒くって、おなかがすいて堪らないときでも、そのつもりでいたのです。」

今回読んだこの本ではこのセリフはミンチン先生の捨て台詞、「これでまた、王女様になったような気がしているんでしょうね。」に答えたセリフなんだけど、「そのつもり」とは「王女様」というよりは、「上流階級に生まれついたもの」「あるべくしてあるもの」ということなんだろうと思うんですよね。(原文を確認したわけじゃないけれど、ハムレットの有名なセリフにある to be が使われているんだろうと思います。)  つまりはそれこそがセーラのアイデンティティであり、それが一番大切なものなんだろうと思えるんですよ。  口では「ただの偶然」と言いつつも、「その偶然によって立つ者」であると自分を規定している・・・・そんな風に KiKi には感じられます。  そして、「でも、それって・・・・・・」と思わずにはいられない。  まあ、それがあの時代の大英帝国の姿そのものだったんでしょうけれど・・・・。

子供の頃は幸福の絶頂から不幸のどん底に突き落とされた可愛そうな娘が、最後にはやっぱり幸福(つまりはお金持ち)になるというシナリオに胸ときめかせたものだったけれど、大人になった今、この物語を読み返してみると、「結局のところ彼女の幸せって何だったん(or 何なの)だろう?」と思わずにはいられません。  確かに父親の親友の億万長者に引き取られ物質的には恵まれた生活に戻れたかもしれません、  でも、結局のところ彼女が父親も母親も亡くした子供であることには変わりはないし、「公女さま然と振る舞う」という以外には彼女が大事にしているものが伝わってこない・・・・・。  

結局 KiKi がイメージできるセーラのその後の人生は「同じ上流階級の殿方の奥さまになり、使用人には親切なのでそこそこ愛され、晩餐会やら社交のセンスは抜群で彼女のサロンは大盛況。  ある種の自己満足的な奉仕の精神を発揮し、慈善活動にも熱心で、崇拝するマリー・アントワネット同様に最期の時まで威厳を保ち続けるし、蔵書数を誇る図書室を持ち多くの本を読むけれど、どうしてフランス革命が起こったのかは結局理解しないままに亡くなる」っていう感じでしょうか(苦笑)。

もっとも・・・・・

主人公のセーラに対してあまり好感情を抱くことのできなかった物語・・・・・ではあるものの、この作品はやっぱり名作だと思います。  この年齢になってこの物語を読むと、当時のイギリス社会が抱えていた(そして今も実は根強く残っていたりもするんだけど)「階級社会」の実態が、実に丹念に描かれている物語だと感じられるからです。  そしてこの「階級社会」が抱える対立構造も・・・・・。

ミンチン先生は相変わらず悪役だけど、セーラ(上流階級) - ミンチン先生(中流階級) - ベッキィ(下層階級)という構図がこれほどはっきりと描かれ、それぞれの階級に属する人たちがどんな想いを抱えて生きていたのか?を描ききっているというところに「名作たる所以」があるように感じました。  そういう意味ではこの物語、単なる「子供向けのお姫様物語」と片づけてしまうには惜しい作品だと感じました。


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年1月 6日 13:19に書いたブログ記事です。

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