日本沈没(上)(下) 小松左京

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今回の群馬⇔東京移動時の読み物として昨年末に購入した電子書籍にダウンロードしてあった小説を読了しました。  昨年3月のあの大震災の記憶がまだまだ生々しいこの時期にこの物語を読むのは正直なところ恐かったりもしたんだけど、同時に「今ならばあの物語を荒唐無稽の絵空事」としてではなく読むことができるのではないか? な~んていうことも感じていました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

日本沈没(上)(下)
著:小松左京 小学館eBooks

51OS8tp1FLL._SX230_.jpgのサムネール画像 (Amazon)

51C+-EJB6AL._SX230_.jpg (Amazon) (Sony ReaderStore)

伊豆諸島・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。  現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。  折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。  日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせ、日本人を全員海外へ移住させるべく、極秘裏に世界各国との交渉に入った。  小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。  そして日本沈没の日は予想外に早くやってきた。  日本人は生き残れるのか。  全国民必読。  (Amazon より転載)

子供時代に父親の本棚から失敬して一度は読んだことのある作品だったはずなんだけど、正直なところどんな物語だったのか全くと言っていいほど記憶に残っていなかったこの作品。  元々女の子受けするような作品じゃないし、「地球物理学」な~んていう訳のわかんない話がポンポン出てくるし、世界情勢はおろか当時のクラス・メイトの中にも確実に存在していたはずのパワー・バランスにも無頓着だった KiKi が理解できていたはずもないわけで・・・・・ ^^;  ただ単に「活字に飢えていた」というそれだけで読み切るだけは読み切った(というよりは活字だけは追って終わってしまった)物語だったんだろうと思います。

大体において当時の KiKi は親の懐でヌクヌクと毎日を過ごし、贅沢こそはさせてもらえなかったけれど衣食住に事欠くことだけはなく、ついでに「大地は揺るぎないものである」というある種の無条件の信頼を持っていたお子ちゃまだっただけに、このお話はどこかのちょっとぶっ飛んだおっさんの妄想だらけのお話だと思っていたようなところがあります。  一応静岡県という地震のメッカで育った KiKi だけど、それでもこの物語で描かれているような大震災も津波も現実味はなかったし、まして日本列島が沈没するな~んていうことは「ありえないお話」だと勝手に思っていたんですよね~。  「ありえないお話」であればこそ、ひとたび大震災に見舞われたらそれまでの自分の生活が一変するな~んていうことは想像もできなかったし、百歩譲って「何か」が起こったとしても両親がしっかりと自分を守ってくれるとお気楽に考えていたあの時代。  今にして思うと幸せな時代だったよなぁ・・・・・。


でも阪神淡路大震災と昨年の東日本大震災を大人になって社会人として経験した今の KiKi にとって、この物語は「絵空事」でも「作り話」でも「どっかのおっさんの与太話」でもなく、現実の問題として迫ってくるものがありました。  もちろん日本が沈没しちゃうな~んていうことが実際に起こりうることなのかどうかに関しては大人になった今であってもまったくわかんないし、あれら2つの震災を経験し、そのニュース報道をたっぷり観て、さらにはこんな本まで読んでみてもなおチンプンカンプンであることには変わりないんだけど、子供時代と大きく異なるのは「少なくとも大地は揺るぎないものではない」ということが、わかっているということ、そして大いなる自然の力の前では人間なんてほんのちっぽけな存在で、まさにこの物語の中で小松氏が論破されていらっしゃるように「日本列島という名前の龍に寄生しているちっぽけな存在」に過ぎないということはちゃんと理解できているということぐらいでしょうか・・・・・。

それにしてもこの物語が書かれたのが1973年、今から40年ぐらい前であることに驚かされます。  そして、「大地震が起こった際にはそれに引き続きどんなことが起こるのか?」「大きな災害に遭遇すると人はどんな行動をとるようになるのか?」に関して、あまりにも的確な描写をされていらっしゃることに舌を巻きました。

でも、この小説で小松氏が一番書きたかったことは、そういう災害時のお話ではなく、「アイデンティティ」のことだったんじゃないかと思うんですよね。  本当の意味でそこに辿りつく前にこのお話は終わっちゃっているから、何となく「パニック小説」のような、この未曾有の事態に直面する「仕事人小説」のような色彩の濃い物語になっちゃっているような気がするんだけど、本当のところ彼が書きたかったことは「自分が属する国を失ったら人はどう生きていくのか?」がテーマのような感じがするんですよ。  そう、ユダヤ民族のように・・・・・・。

第二次大戦で行き過ぎた「軍国主義」「愛国主義」に走り過ぎたと猛反省した日本人が、今度は「愛国心」とか「同族愛」をどんどん蔑ろにし始めた時代(少なくとも KiKi は自分がそれらの意識のかなり希薄な日本人だという自負があったりもします 苦笑)に、著者にはそれに対する憂いみたいなものを持っていらしたような気がするし、「帰る場所がある」ということが人間にとってどれだけ大切 & 生き抜いていくうえでのパワーの源になるのかを思い出してほしいという願望もあったような気がするし、しかもその日本列島が山あり河あり海ありで本当に美しい姿をしており、そこで培われてきた長くて誇らしい歴史のある国であることも再認識してほしいという想いもあったのではないか??  読んでいてそんなことを感じました。

いざ日本が沈没する・・・・ということが確定的になったときの世界各国の動きの部分に関しては、今回の読書で初めて意識を向けることができました。  ま、書かれた時代を反映して、ソ連(ロシアではない)がまだまだアメリカとガチンコしているあたりはちょっと笑えなくもないけれど、ここにもアメリカ一辺倒だった日本の外交政策へのちょっとした皮肉が隠されていたりもして、小松氏の懐の広さ(地球物理学、人間心理学、外交問題、社会問題と多元的な視野)を感じさせます。  日本列島が沈没しちゃうという KiKi にはあまりにも突拍子なく感じられるプロットのために、正直、小松氏のこともSF小説のこともさほど評価していなかった KiKi なんだけど、この小説を今回ちゃんと読んでみて、正直「ガツンとやられた気分」です。  

この小説をベースにした映画の方は相変わらず観てみたいとは思えないし、SFというジャンルにも相変わらずそんなにはそそられない KiKi ではあるけれど、小松氏の他の作品であれば読んでみてもいいかもしれないなぁと思い始めています。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年1月24日 18:46に書いたブログ記事です。

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