グレート・ギャッツビー F.S.フィッツジェラルド

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今年からのこのブログの新しいテーマ、「光文社古典新訳文庫」の1冊です。  この物語を読むのは大学生時代以来。  前回読んだのは新潮文庫の1冊だったように記憶しています。  確かタイトルは「華麗なるギャツビー」だったような・・・・・。  そして冒頭にはR.レッドフォードが主演した映画の写真がいくつか掲載されていたような・・・・・。  親友の1人の薦めで読んだことを覚えています。

グレート・ギャッツビー
著:F.S.フィッツジェラルド 訳:小川高義  光文社古典新訳文庫

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絢爛豪華な邸宅に贅沢な車を持ち、夜ごと盛大なパーティを開く男、ギャッツビーがここまで富を築き上げてきたのは、すべて、かつての恋人を取り戻すためだった。  だが、異常なまでのその一途な愛は、やがて悲劇を招く。  過去は取り返せる―そう信じて夢に砕けた男の物語。  (文庫本裏表紙より転載)

KiKi が初めてこの物語を読んだのは上記のように大学生の頃。  当時、日本はバブル景気に沸き、田舎からぽっと出てきた女の子だった KiKi は都会のきらびやかさに目くらましを食らわされ(って別に人のせいにするわけじゃないけれど)、浮かれまくっていた時代でした。  そんな時代に読んだギャッツビーの暮らしぶり(前半)はそんな都会生活の延長線上にあるきらびやかな世界で、「豊かさ」の1つのプロトタイプにさえ感じられたものでした。  ギャッツビーもトムもデイジーも、登場人物の誰にも共感はできない(ついでに語り部であるニックにも)にも関わらず、一つだけ感じられたのは「今の流れの目指している先にある1つの形がここにある」ということでした。

人工的に「美」を演出した世界。  そんな世界を表現する美しく耳触りだけはよい修飾語。  浮かれムードを煽る言葉のリズム感。  そんなものを強く感じたものでした。  と同時に日本人が憧れていた「アメリカ的豊かさ」の本質・・・・・みたいなものを感じ取り、ギャッツビーの末路を知るのと同時に「何かが間違っている・・・・・」ということを感覚的に掴んだ作品でもありました。


貧しい家に生まれ小さい頃から自分の力だけを頼りに生きぬいてきたギャッツビーに対して、彼が恋い焦がれつづけたデイジー(そして彼女の夫トム)は、名門の大金持ち出身でした。  彼らは現在の私たちの目から見ると、身体は大人でもその精神は子供じみていて、極論すれば「自分たちがどんなことをしでかしてしまったとしても、必ず他の誰かがその尻拭いをしてくれることに慣れ過ぎた人たち」でした。  そうであるだけにデイジーのどこかフワフワした現実感が薄すぎる生き方は、現代の私たちには「軽薄」にこそ見え、「魅力的」には映りません。  ギャッツビーの悲劇は、自分がデイジーたちとは異なる世界の人間であることを知りながらも、そんな世界にどっぷりつかってそのことに疑問さえ感じない女性に恋をし、その延長で彼らの世界に憧れを持ってしまった人間の悲劇だと思うのです。

トムもデイジーも、いいかげんにできている。  まわりにあるもの、生きるものを、すべてぶち壊しにしておいて、金銭というか、いいかげんな態度というか、ともかく二人を結びつけている原理に戻って、ごたごたの後片付けは人まかせ・・・・・。

この物語を初めて読んでいた頃、巷では「シンデレラ・シンドローム(もしくはシンデレラ・コンプレックス)」な~んていう言葉が流行っており、ここに描かれている世界こそその心理の神髄だ!と思ったものでした。  と、同時に西部出身者であったニックやギャッツビーが東部の文明社会に強く憧れて出てきたのと同じように KiKi 自身も静岡県の田舎町から東京の文明社会に憧れて出てきたことに思い至り、「これは自分なりの明確な立ち位置というか、羅針盤のようなものをしっかりと持たないとギャッツビーの二の舞を踏むことになるかもしれない」という危機感を感じたりもしました。

そういう意味では「都会に出てきて浮かれ気分の KiKi に初めて冷や水を浴びせかけてくれた物語」と言っても過言ではありませんでした。  正直なところ、さほど面白いプロットのお話だとは思わないけれど、読むたびに「何か」を考えさせられる物語であることは事実です。  自分の手が届きそうにないものを目指し、精一杯手を伸ばし、何とか届かせる方策を必死で模索しあれこれ試してみる。  そうこうしているうちに、それが現実に手に入りそうに感じられるようになり、さらに頑張ってみる。  そんな努力の過程は本人にとっては充実感に満ちた時間であり、ある意味では幸せでもあるものです。  でも、実際にその「何か」を手に入れてみたらそれは己の憧憬の念が創作した「何物か」とは実は異なっていたりもする・・・・・。

初読の時からこの物語のタイトル「グレート・ギャッツビー」の「グレート」とは何なのか、ず~っと考え続けています。  昔はそれが「華麗なる」だっただけに絢爛豪華に見えた中身のないギャッツビーの暮らしぶりを皮肉的に指した言葉なのかとさえ思ったほどだったけれど、今の KiKi にはこの「グレート」はギャッツビーの上昇志向、楽観主義を貫いた生き様を形容する言葉だったのかなぁと感じられます。  言ってみれば「よくやった!」「あっぱれ!」ぐらいの意味合いで・・・・・。  葬儀には誰も来てくれなかったギャッツビーだったけれど・・・・・。  

前回の読書の際には結びの文言はさほど胸に迫ってこなかったんだけど、この歳になってようやくギャッツビーに(というよりギャッツビーを回想するニックに)共感できるようになったと感じました。  これは恐らく KiKi 自身が何かを求め、東京で30年という時を過ごし、「自分の力」でのし上がれる限界を知り、そんな東京を捨てる決心をしたことによって共感できるようになった心情なのかもしれません。

私は砂に坐って、遠い昔の未知の世界に思いを馳せながら、デイジーの家の突堤に初めて緑の灯を見たギャッツビーの感動を思った。  青々とした芝生にたどり着くまでには、長い道のりがあったはずだ。  ここまで来たら、ほんの少しで夢に手が届きそうで、つかみ損なうことがあるとは考えなかったろう。  夢が後ろにあるとは思いもよらなかった。  もう夢は、都会の向こうに広がる巨大な闇、この国の暗い原野がうねって続く夜の世界へ行っている。

ギャッツビーは緑の灯を信じた。  悦楽の未来を信じた。  それが年々遠ざかる。  するりと逃げるものだった。  いや、だからと言って何なのか。  あすはもっと速く走ればよい、もっと腕を伸ばせばよい・・・・・そのうちに、ある晴れた朝が来て・・・・・・。  だから夢中で漕いでいる。  流れに逆らう舟である。  そして、いつでも過去へ戻される。

因みにこの物語、どうやら現在映画化が進行中のようです。  もちろん既にR.レッドフォード & ミア・ファーロー主演で映画が作られているのですが、今度はあの「レオ様(≒ ディカプリオ君)がギャッツビーを演じるらしい。  恐らく KiKi は観ないだろうけど・・・・・(笑)    


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月 1日 11:45に書いたブログ記事です。

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