吾妻郡図書館で書架とは別に平積み(と、図書館でも言うのかどうか知らないけれど ^^;)コーナーができていて、ふと目に留まったので借りてみました。 たまたま Sony Reader を購入したばかり・・・・ということもあって、そろそろこの辺りの事情にも通じておく必要があるかなぁ~なんて感じたもので。 ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。
電子書籍の衝撃
著:佐々木俊尚 ディスカヴァー・トゥエンティワン
私は年に数百冊も本を購入し、たぶん百冊以上はちゃんと読んでいる活字中毒者です。 そして同時に、年に四~五冊も本を出している書き手のひとりでもあります。 その意味で、キンドルやiPadのような電子ブックリーダーが出てくることによって、本の世界がどう変わっていくのかは自分にとっても切実な問題としてとらえています。 本文中で何度も書いていますが、間違えてはならないのは、「電子ブックの出現は、出版文化の破壊ではない」ということです。 何千年も同じような活字形式で人々に愛されてきた本は、そう簡単には崩壊はしません。 そこがたかだか数百年の歴史しかない新聞や、あるいは登場してから数十年しか経っていないテレビとは違うところです。 でも活版印刷が十五世紀に発明されて本の流通と読まれ方が劇的に変わったように、電子ブックも本の流通と読まれ方を大きく変えるでしょう。 (新書本裏表紙より転載)
BookReader を購入したのはよいものの、肝心要のソフト(要するに本そのもの)を買ってみようと Reader's Store を訪ねてみても現段階での出版冊数は少ない(とくに KiKi のアンテナに引っかかってくるものは少ない)うえに、紙もインクも流通も必要ない割には高く感じられる価格設定に疑問を抱かずにはいられない昨今。 電子書籍の登場で今後何が起こり、世の中がどんな風に変わっていくのかを考えてみたくてこの本を手に取ってみました。 でもね、そういう KiKi の知りたい「これから」のことに関してはさして示唆があるとは思えない本でした。
まあ、このての本には賞味期限があるのは致し方ないことだけど、2010年に発刊されたばかり・・・・ではあっても網羅されている情報が今となっては古くなっちゃっているので、どうしても新鮮味には欠けるうえに、著者の経歴がジャーナリストであってアントレプレナーではないためか、将来のビジネスモデルに関する示唆のようなものは皆無(要するに現状分析程度)で終わっちゃっているんですよね~。 この本の副題が「本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」となっている割にはその崩壊の過程も、ましてやその後不死鳥のように蘇る可能性に関してもまったく触れていない・・・・・と言っても過言ではないように感じました。
著者はどうやら音楽好きの方のようで、iPod & iTunes の登場とその後のアップル社のビジネスモデルについて何かと言及していらっしゃり、それを「音楽と言うソフトが本というソフトに変わる前哨戦」とでも言わんばかりに話を進めていらっしゃるんだけど、個人的にはそのあたりの記述も肌感覚として納得できるものではありませんでした。 確かに KiKi も実際に自分で使ってみて iPod & iTunes の世界の素晴らしさは体感しているつもりだけど、著者がこの本で得々と述べられているほど音楽の世界で iPod & iTunes のビジネスモデルに人々が転向したとも考えていないし・・・・・。 まあこれは KiKi の音楽趣味がクラシックに偏っているせいもあるかもしれないけれど、KiKi にとって iPod は手持ちのCD Library をほぼ全て持ち歩くことができるツールという存在以上の価値はないうえに、KiKi の周囲ではiPod を持ち歩いている人ばかり・・・・・・というような状況はついぞ経験したことさえありません。
KiKi が電子書籍に手を出したのは、今すぐは無理としても iPod の音楽と同じように手持ちのお気に入り図書をすべて持ち歩き、その日の気分で好きなところから読み始めることができたりすることを夢想していたようなところがあるんだけど、現状では音楽データはデータ転送をすればCDそのものも以前と同じように大切に保存することもできるうえにデータの方は持ち運びも自在となるのと比較して、本の場合は今のところ手持ちの本をばらして「自炊」するしか手はないみたいで、そうなるとせっかく装丁も含めて美しい存在だったはずの本が単なる紙屑になってしまいます。 このあたりを解決してくれるツールが生まれると電子書籍はもっともっと便利なツールになるとおもうんですけどねぇ。 手持ちが無理ならどこかの図書館の本はダウンロードできるようにするとか・・・・・・。 もっともそうなると本を買う人(実際の本であれ、データであれ)がますます減っちゃって、街の本屋さんのみならず、作家の方々の収入を脅かすことになっちゃうかしら・・・・・。
ま、それはさておき、この本に戻って・・・・・
現在の日本の本の流通がどのように行われてきたのかに関する記述は興味深く読むことができました。 なるほど、こういう流通システムだったら日本全国どこの小型の本屋さんも変わり映えのしない品揃え、変わり映えのしないレイアウトになってしまうのもさもありなん・・・・・。 要するに KiKi が興味を持つタイプの本はほとんど置かれておらず、ベストセラーとノウハウ本とタレント本だけが幅を利かせている没個性の店しかない・・・・・と。 つまり「本」はマス・セールスには向かないっていうことですよね。 それは同感です。 でも、だからと言って著者のその後の論旨の展開はどうなのかなぁ。 何となく「ひとりよがり」感が漂っているような気がしないでもない。
もう一つ。 「落ちこぼれながら会計人」として興味深く読んだのは、「壮大なる自転車操業と本の『ニセ金化』」の章でした。 著者曰く
書店と取次、出版社の間でのお金のやりとりは、さまざまな条件があって非常に複雑なのですが、(中略) 重要なのは、売れた分だけ取次からお金をもらうのではなく、取次に委託した分すべての金額をいったん取次から受け取れるということです。 (中略) 仮に、1万部のうち書店で5,000部しか売れず、残り5,000部は返本されたとしましょう。 そうすると出版社は、この5,000部分の代金を、取次に返さないといけないことになります。 そこで出版社はあわてて別の本を1万部刷って、これを取次に委託します。 そうするといったん(新しい本の1万部 - 返本分の5,000部)5,000部分の収入になるので(中略)入金が発生します。 これこそが、本のニセ金化です。 出版社は返本分の返金を相殺するためだけに、本を貨幣代わりにして刷りまくるという悪循環に陥っていくのです。 (本文より転載 一部文面を変更)
ここで触れているのはキャッシュフローの話なので、よもや妙チクリンな「売上計上基準」を使っているとは思わないけれど、これってどういうビジネスなんでしょう?? 出版社の会計監査報告を一度見てみたいものです。 まあ、だいたいの察しはつきますけどね・・・・・。 こんなことばかりしているようでは、本の質は落ちることはあっても上がることは望めそうもありませんねぇ・・・・・。 それにここで発生する様々なビジネスリスクをどんな風にモニターし、どんな風にマネージしているのか、一度内情を覗いてみたいものです(苦笑)
ま、いずれにしろこの本のタイトルで抱くイメージ(これは KiKi の個人的なものだけど)と本の中身には大きな乖離のある本だった・・・・・というのが正直な読後感でしょうか。 まあ、ちょっと古いけれど現状を理解するにはそこそこ役立つ本だったとは思っていますけどね。







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