魔性の子 小野不由美

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本来なら「ハリポタ」を読了したところで、このブログのメイン企画「岩波少年文庫」に戻るべきところ・・・・・ではあったのですが、昨日は群馬→東京の移動という月に1度の大イベントがあったため、在来線の旅の友としてはとっても都合の悪い「岩波少年文庫」には戻ることができませんでした。  じゃ、代わりにどうするか??ということでいろいろ考えた結果、ず~っと積読状態だった小野不由美さんの「十二国記シリーズ」に手を出してみることにしました。  

上橋菜穂子さんと出会って以来、日本ファンタジー界の三羽烏と呼ばれていた(らしい)小野不由美さんの「十二国記」はいずれは読んでみようと待機させてあった作品群です。  今回、これを機会にこのシリーズを読み始めてしまうので、ここから暫くはこの作品群が続く予定・・・・です。  ま、てなわけで「十二国記シリーズ」の第1作でありながらも外伝扱いのこちらの作品からスタートです。

魔性の子
著:小野不由美  新潮文庫

51EKD3VDBHL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

教育実習のため母校に戻った広瀬は、教室で孤立している不思議な生徒・高里を知る。  彼をいじめた者は「報復」ともいえる不慮の事故に遭うので、「高里は崇る」と恐れられているのだ。  広瀬は彼をかばおうとするが、次々に凄惨な事件が起こり始めた。  幼少の頃に高里が体験した「神隠し」が原因らしいのだが...。  彼の周りに現れる白い手は?  彼の本当の居場所は何拠なのだろうか?  (文庫本裏表紙より転載)

これは何とも不思議なテイストの作品ですねぇ。  どことなくホラーの香りがしつつも、ファンタジーっぽさもあって、同時に社会風刺的な骨太さもある・・・・・。  ちょっと死者の数が多すぎるのが個人的には苦手っぽいし、若干筆致の粗さみたいなものも感じられないじゃないけれど、広瀬 & 高里の心理描写には思わず引き込まれ、楽しく読み進むことができました。

身近なところに高里みたいな子がいたら確かに不気味だし、できることなら関わり合いになりたくはないけれど、どんどん追い詰められていく広瀬 & 高里コンビの姿には思わず気持ちが寄り添っている自分を発見して驚いたことも数知れず・・・・・。  でも、それと言うのも戸惑い、悲しみ、心を閉ざさざるをえない彼らの姿を読者として見ている(読んでいる)からこその感情であって、そうでなければ自分もきっと先陣を切って積極的に・・・・とまではいかないにしろ、やっぱり彼らを糾弾する側にいることになるんだろうなぁと思うと、これもまた人間の持つエゴの1つの形であることに改めて思い至り、同時にそういう感情が自分にもしっかりとあることを認めざるを得ません。

著者がこの物語の中で「故国喪失者」と呼ぶ「己が属するもの」を見失っている感覚は、案外誰にもある感覚のような気がします。  一般的には「家族」という群れがその「寄る辺なさ感」を払拭してくれるもっとも力強く身近な存在のはず・・・・・ではあるものの、その「家族」が都市化・核家族化・個人主義の浸透に伴って「運命共同体」から「単なる同居人」へと変貌を遂げている現代社会においては尚更だと感じます。

今、KiKi の目の前の飾り棚の中には父親の家族写真(つまり KiKi の祖父母、曾祖母、伯父、伯母の集合写真)が飾られています。  被写体の総勢11名。  そのうち9名が既に亡くなってしまいました。  中に1名、写真撮影当時その家に寄宿していたいわゆる書生さんが写っています。  父の話によれば親戚筋の人とのことですが、この方と KiKi は面識がありません。  戦災を免れたただ1枚の写真をリマスターしたうえで、KiKi の世代(KiKi & 従兄弟たち)に配られたものです。

思えば、KiKi の子供時代、今と比べるといわゆる「親戚づきあい」というのはもう少し密だったし、「親戚」というのは「両親・兄弟姉妹」に次いで身近に感じる「自分が属する群れ」だったはずなんだけど、KiKi の世代になるとそんな親戚も「年賀状だけの付き合い」「冠婚葬祭で辛うじて顔を合わせる」になってしまったように思います。  住んでいる場所も、従事している仕事も、価値観も異なり、唯一「血が繋がっている」という、凡そ実感には乏しい縁だけが頼りの他者になってしまった・・・・・そんな気がしないでもありません。

ひょっとしたら現代のツィッターをはじめとするツールはそんな人々の喪失感を埋めるために存在しているツールなのかもしれません。  本当だったら血という縁で結ばれているはずの、己の最大の理解者・受け入れ者になりうる可能性のあった群れとの関係性の希薄さを埋める(もしくは忘れる)ために新たな「群れの錯覚」を生じさせ、安堵させてもらうためのツール・・・・・・。  言葉を尽くして語ればそこにどうしても露呈してしまう「差異」を感じさせないために、略語・感覚語を多用する「つぶやき」という手段・・・・・・。   

自分が異質であると感じるのは辛いことです。  本当は自分だけが異質なわけではなく、誰もが異質なんだけど、自分というフィルターを通したときには、確固たる存在として立っているのは自分だけで、他者は「その他大勢」として括ってしまっていることにはなかなか気が付かないものなんですよね。  だから人は自分を群れに馴染ませるために、似たような服を着、同じような物を持ち、同じような生き方をしたがるんだろうと思います。  そして「マスコミ」と呼ばれる一団がそれをリードしている・・・・・。  彼らはそれを「社会的使命」と考えている・・・・・・。

この物語ではその「喪失感」の原因を「臨死体験」と「神隠し」に求め、ついでにその「尋常ならざる体験」を異世界と結び付けファンタジックな世界(とは言え、それは妖精が舞うようなパステル調のものとは異なり、ダークな世界)を絡ませて紡がれているけれど、実はとっても社会的なテーマを扱っている作品だと思います。  つい先日読了したばかりのハリポタにも描かれていた「集団心理」を扱い、現代人の誰もが心の中に内包している「喪失感、孤立感」を扱い、ついでに現代の「価値観」を揺すぶる「別の価値観」をも扱っています。   

なるほど~、この社会性(骨太さ)ゆえに彼女は現代日本のファンタジー界を牽引する「三羽烏」の1人と目されていたのですね。  この作品(十二国記)がアニメ化されていたとはちょっと信じがたい・・・・・ ^^;  まだ小野不由美作品はこの1作のみなので評価するには早すぎるけれど、今のところ KiKi のお気に入り度としては 上橋 > 小野 > 荻原 っていう感じでしょうか??  早速、次の作品「月の影 影の海」に進んでみたいと思います。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月21日 07:01に書いたブログ記事です。

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