昨日Lothlórien_山小舎に帰ってきました。 もちろん在来線の旅の友は先日から読み始めた「十二国史シリーズ」です。 てなわけで、本日の KiKi の読了本はこちらです。
月の影 影の海
著:小野不由美 講談社文庫
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謎の男、ケイキとともに海に映る月の光をくぐりぬけ、高校生の陽子がたどりついたのは地図にない国―巧国。 おだやかな風景とは裏腹に闇から躍り出た異形の獣たちとの苛烈な戦いに突きおとされる。 なぜ、孤独な旅を続ける運命となったのか、天の意とは何か。 『屍鬼』の著者が綴る愛と冒険のスペクタクル。 (文庫本上巻裏表紙より転載)容赦なく襲いかかる妖魔に水禺刀で応え、裏切りに疲れた旅の果て、陽子は唯一の親友となる半獣の楽俊と出会う。 二人は豊かな隣国、雁の国に向かい延王に謁見。 そして、なぜ陽子が過酷な試練をへて異界へ旅立つことになったか、真実が明かされるのだった。 地図にない国 - 十二国の大叙事詩が今こそ始まる。 (文庫本下巻裏表紙より転載)
まだ、シリーズ中2冊しか読んでいないけれど、どうやら KiKi がこのエントリーでつけた三羽烏のお気に入り順位はほぼ確定した感があります。 荻原作品に感じるほどの「こそばゆい感」はないものの、世界観のリアルさはちょっと薄め・・・・・・。 もっともこの手のファンタジーにリアルさを求めること自体が間違っているとは思うんですけどね(笑)。 ま、恐らくは KiKi がホラー系がかなり苦手なゆえに感じる彼女の「ホラー筆致」になかなか馴染めないっていうのがあるのかもしれません。
特にこの上巻は読んでいてちょっと苦痛でした。 主人公の陽子同様に、わけもわからないまま形相からしてあんまり美しくはなさそうな(というよりおどろおどろしいような)化け物相手にひたすら戦いまくっている(しかもその戦いのパワーはこれまた得体の知れない幽霊みたいな存在に憑依されたことによあって与えられている)シーンばかりで「なんじゃ、これ?」という感じ・・・・・。 でもそのうちに巧国に住む人間に騙されたりしているあたりからは、少しずつこの世界観に馴染んでいきました。 やっぱり人間(というより KiKi 個人なのかな?)っていうのは他の動植物を相手にするよりは人間相手の方が、仮に「騙される」というシナリオであっても安心感があるみたいです(笑) これは恐らく人間の形さえしていれば感情が推察できるような気がするという単なる思い込みによるものなんですけどね。
突然、それまでの日常生活から切り離され、見たことも聞いたこともない世界に放り込まれてしまった主人公だから上巻ではひたすら受け身で主体性を持てず、自分の運命を嘆いてばかりいます。 読んでいるこちらも何が起こっているのかさっぱりわからないので、主人公と一緒になってただ混乱して、よくわからないままに戦闘シーンに目をそむけたくなったり、飢餓に耐え忍ぶ姿に心痛めたりしつつ進んでいき、何となくそれ以上は読み進むのが苦痛に感じられ始めるころ(上巻もほぼ終わろうかというころ)、ようやくいわゆる日常生活を送っていた頃の陽子がどんな子だったのかが明かされ、そのあたりからこの物語が何を語りたい物語だったのかがおぼろげながら見え始めるような気がしてきます。 ふと感じたのですが、この上巻での陽子の過酷な運命はいわゆる「イニシエーション(通過儀礼)」だったのかもしれません。
まだまだこの物語は続くので早とちりをしてはいけないと思うけれど、著者は現代社会では、そして現代社会の親の庇護下にある子供では、まったく切実感がない「人として生きる」ことの真の意味を問いかける物語が書きたかったのかなぁ・・・・・と、KiKi には感じられます。 「個性」とか「人とは違う自分(≒ 優越感)」を求めているようでいて、「異端扱い」されるのはいやで、本当に欲しいものが何かはわからないままに多くの物質を求める現代人の姿が凝縮されているのが現世に生きる陽子の姿だったのではないか?・・・・・と。 それらから唐突にではあるけれどきっぱりと切り離された世界に投げ込まれたことによって、はじめて自分と正面から向き合わざるをえなくなってしまった主人公と共に、読者は否応なく自分自身と対峙せざるをえなくなる・・・・・そんな物語だと感じました。
まだまだこの「十二国」の世界がどんな世界なのか、わからないことばかりだし、少なくとも都市化された現代日本の常識だけでは理解不能な要素が多々ありそうだけど、漠然と誰もが感じている「人とは違うものになりたい心理」と現実社会の中で感じている「自分とは相容れない価値観」やら「これが自分だと言い切れる確固たるものがない浮遊感・不安定さ」みたいなものを、異世界に持っていくことによって言ってみれば「甘ったれ心理」と切り捨てるような潔さ、強さ・・・・・みたいなものも感じました。
どことなく「中国風」を感じさせる世界観がちょっと新鮮です。 恐らくは古代日本人が中国文化と触れた際に感じた新鮮さは今 KiKi がこの物語を読んでいて感じる新鮮さに近いものがあったのではないかしら・・・・・。 万物の上に君臨する「天」がいながらも、それが「唯一絶対の存在」ではなさそうな雰囲気なのも何となく嬉しい♪ アジア系民族が古くから感じ、時に信仰し、時に物語ってきた「この世ならぬ者」の世界観を堪能しながら、次作「風の海 迷宮の岸」へ進みたいと思います。







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