風の海 迷宮の岸  小野不由美

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今日も十二国記を引き続き読んでいます。  この作品、単体で読んでもそこそこ味わい深いものがあるのですが、シリーズを追うにしたがってようやく世界観が馴染んできているような気がします。  今日読了したこちらの作品は「魔性の子」の裏(表?)の物語、あの「祖国喪失者 高里君」が神隠しにあっていた間、何をしていたかの物語です。

風の海 迷宮の岸
著:小野不由美  講談社X文庫

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麒麟(きりん)は王を選び、王にお仕(つか)えする神獣。  金の果実として蓬山(ほうざん)の木に実り、親はいない。  かわりに、女怪(にょかい)はその実が孵(かえ)る日までの十月(とつき)を、かたときも離れず、守りつづけるはずだった。  しかし、大地が鳴り、大気が歪(ゆが)む蝕(しょく)が起きたとき、金の実は流されてしまった!  それから10年。  探しあてた実は、蓬莱(ほうらい)で"人"として生まれ育っていた。  戴国(たいこく)の王を選ぶため連れ戻されたが、麒麟に姿を変える術(すべ)さえ持たぬ泰麒(たいき)──幼ない少年の葛藤(かっとう)が始まる!  (文庫本扉より転載)

とてつもない妖(あやかし)と対峙(たいじ)した泰麒(たいき)は、身動(みじろ)ぎもせず、その双眸(そうぼう)を睨み続けた。  長い時間が過ぎ、やがて発した言葉は、「使令に下れ」。  異界(ここ)へ連れてこられても、転変(てんぺん)もできず、使令も持たなかった泰麒は、このとき、まさに己れが「麒麟(きりん)」であることを悟(さと)った!  しかし、この方こそ私がお仕(つか)えする「ただひとり」の王と信じる驍宗(ぎょうそう)を前に、泰麒には未だ、天啓(てんけい)はないまま。  ついに、幼い神獣が王を選ぶ──故郷(くに)を動かす決断の瞬間(とき)が来た!  (文庫本扉より転載)

普通だったらこの表紙を見た瞬間に決して KiKi は手を出さないだろうなぁ・・・・・(苦笑)  大の大人の読み物としてはあまりにも子供っぽい。  それなのにこの本が手元にある理由ははっきりしていて、ことこの「十二国記シリーズ」に関しては、評判を聞いたあとで eBookOff(現在のNetOff)で出物があったさいに買い揃えたためです。  つまり装丁にはまったく拘らず、とにかく出てきたもので揃えちゃったんですよね~。  だから現在 KiKi の蔵書は大半が「講談社文庫」なんだけど、この「風の海 迷宮の岸」と「図南の翼」だけは「講談社X文庫」というアンバランスさ・・・・・・ ^^;  まあ、実際に読むときには革製のブックカバーをかけちゃっているのであんまり気にならないんですけどね(笑)

さて、この物語ですが、冒頭にも書いたようにあの「魔性の子」の主人公(?)、高里君が神隠しにあっていた間、どこで何をしていたか?という物語 & この「十二国記シリーズ」の中で「麒麟」というのがどういう存在で、「麒麟と王の関係」がどういうもので・・・・・というあたりの解説にあたる作品となっています。  もっとも読了した段階で KiKi の頭を渦巻く1つの大きな疑問が置いてけぼりを食らっちゃっています。  それは、一度は十二国の世界に引き戻されて「麒麟」となり、自分が王を指名するところまで成長したはずの高里君(というより「泰麒」)が、いつ、いかなる事情で、再度蓬莱(日本)に流されることになっちゃったのか?ということです。  まあ、そのあたりはシリーズ全作を読了すればわかってくるお話なのかもしれませんが・・・・・・。    

蓬莱でも蓬山でも自分が何者なのかに確証が持ちきれない泰麒の姿にちょっとウルっときちゃいました。  小野作品の中にあるホラー色部分がちょっと苦手な KiKi にとってはとても読みやすい、優しいお話だったと思います。

この物語を読んでいて、KiKi の脳裏をよぎったこと。  それは以前働いていた外資系の会社での友人との会話でした。  その会社には日本生まれ、アメリカ育ちの日本のパスポートを持つ人たちが何人も働いていました。  多くの場合彼らは US CPA とか MBA といった有資格者で、KiKi のように無冠でペーペーからスタートするキャリアの持ち主ではなく、いきなりマネージャーに抜擢されるという幸運(?)に恵まれていて、当初はそんな彼らをうらやましく感じないでもなく、「別の人種」と遠巻きに観察しているきらいもあった KiKi なのですが、周りを見回せばそんな人ばかり(特にその会社では KiKi の入社した頃からはそういう人しか中途採用されなかったから、KiKi 自身が途中入社した時も諸先輩方に「KiKi さんもアメリカの大学出?」とか「KiKi さんは何の資格を持ってるの??」と聞かれたものでした。)で、ふと気が付くとそんな人たちと妙に仲良くなっている自分がいました。  そんな友人たちがよく漏らしていたセリフがありました。  曰く

「私は日本人でもなければ、アメリカ人でもないの・・・・・」

「私は日本にいれば外人扱いされ、アメリカにいても外人扱いされるの・・・・・・」

彼・彼女らは総じて Native ばりの英語を喋り、外資系の会社の中では生き生きと、颯爽と、カッコよく生きているように見えたし、年齢の割には高サラリーを得て物質的・金銭的には恵まれていたけれど、この物語の「泰麒」同様にどこか根無し草的で、自分が属するものを確信できない寂しさみたいなものを漏らしていました。  そう、泰麒がようやく自分が属する世界を見出したにも関わらず

「僕は病気の麒麟なんです。」

とつぶやくのとそっくり同じように・・・・・・。  当時の KiKi はまだそんな彼・彼女らのセリフに秘められた彼らの「寄る辺なさ感」を正確には理解できていなかったように思います。  特に KiKi の意識の中には日本は単一民族国家で排他性が強い傾向があるかもしれないけれど、アメリカみたいな多民族国家では「外人扱い」と言えどもそれは恐らくソフトなものだろうと思い込んでいたようなところがあったからです。  と同時に、KiKi にしてみれば周りはみんな有資格者の中で1人無冠のまま同じ土俵に立つことを余儀なくされている自分の抱えている孤独感もあったから、素直に言ってしまえば

「ああ、みんな孤独なんだ・・・・・。  颯爽としているように見える彼らも孤独。  私も孤独。」

と言うような感覚の方が大きかったんですよね~。  そしてその時、思ったのです。  結局人は自分の居場所を自分で作っていくしかない・・・・・と。  誰かが与えてくれるのはその居場所を作るために最低限必要なシャベルぐらいの小道具でしかないのだと。  KiKi にあるのは「日本生まれの日本人」というアイデンティティと「日本の普通大学の文学部の卒業生」という肩書(?)のみ。  彼・彼女らにあるのは「海外生活経験者」という経験値と「MBA or CPA」という肩書のみ。  それらのシャベル並みの小道具をどう使いこなし、自分の足場を固めるかは結局のところ自分次第。

泰麒はこの物語の中で「麒麟」という特別な存在であることを先天的に与えられているかのように見えるけれど、彼が「麒麟として生まれた」というのは KiKi が当時感じていた「日本生まれの日本人というアイデンティティ」とほぼ同じような意味合いでしかないだろうし、彼が麒麟として潜在的に持っているはずの能力は KiKi が持っていた「日本の普通大学の文学部の卒業生」という肩書と実際のところは大して変わらなかったんだろうなぁ。  だからこそ、彼はあるきっかけを待たなければ「転変(人の形から麒麟の形に変身する)」もできなかったし、麒麟ならば当然持っていなければならなかった「使令(配下に置く妖獣)」を持つこともできなかったのだと思います。  

それらに必要なものは「絶対にこうありたいと真剣に欲する強固な意思」であって、それ以外の何ものでもなかったというのは、とても説得力のあるプロットだと思いました。

さて、次は「東の海神 西の滄海」です。  文庫本の裏表紙に書かれている情報によれば、今度は「月の影 影の海」で陽子を助けてくれたり、王を選んだあとも自分の選択をくよくよと思い悩む泰麒の迷いを払拭させるのにひと肌脱いでくれた雁(えん)国の延王と延麒の物語のようです。  どことな~くヤンチャ坊主色の強い彼らの物語がとても楽しみです。


追記)

実際にはこの物語の世界観としては十二国の物語があるはずなわけだけど、こうやって1国ずつ扱っていくとなると、現在出版されている冊数だけではどう考えても足りないですよねぇ。  著者は蓬莱(日本)からの海客が麒麟もしくは王になっている国だけの物語を書こうとしているのかしら??         

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月24日 10:03に書いたブログ記事です。

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