災路を行く者 上橋菜穂子

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絶対に素通りすることができない上橋菜穂子先生の「守り人シリーズ」の外伝です。  Amazon やら読書メーターやらから新刊発売のお知らせを頂戴し、何度本屋さんで手に取って「もう買っちゃおうか??」と思ったことか。  でも、守り人シリーズは「軽装版」で揃えている KiKi (但し同じく外伝の「流れ行く者」はハードカバーで買っちゃった ^^;) & プ~太郎の身としてはやっぱりハードカバーの単行本には手を出しづらく、とりあえず図書館で借りて読むことにして「購入依頼」を提出し早半月。  ようやく「貸出OK」の通知をいただいたので、大急ぎで借り出しに行ってきました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

災路を行く者
著:上橋菜穂子  偕成社

61KmLIINMJL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「蒼路の旅人」でチャグムをさらったタルシュの鷹アラユタン・ヒュウゴ。  ヒュウゴはなぜ、自分の祖国を滅ぼした男に仕えることになったのか。  そして、バルサは、過酷な日々の中で、思春期をどう乗りこえていったのか。  題名のみ知られていた幻の作品「炎路の旅人」と、バルサの少女時代の断片「十五の我には」が収められた、「守り人」読者待望の作品集。  (単行本扉より転載)

「蒼路の旅人」 & 「天と地の守り人」で大活躍した時から興味深い人物として心に残っていたのが「タルシュの鷹 アラユタン・ヒュウゴ」でした。  もっとも、KiKi が「守り人シリーズ」にどっぷりつかっていた頃からは随分時が流れてしまったので、今となってはこの2つの物語も詳細までは覚えていないんですけどね(苦笑)  ただね、これまで「守り人シリーズ」「旅人シリーズ」そして「流れ行く者」という一連の作品の中で、シュガ、タンダ、トロガイ、ジグロというような脇役ながら興味深い人物に関してはかなり書き尽くされてきていた感があった中でただ一人、まだまだ不十分な印象を拭いきれない人物がヒュウゴでした。  

人は誰もがどこかの分かれ道で何かを選び取って今の自分に繋がる道を歩み始めるわけだけど、このヒュウゴという人物に関しては、いつ、どこで、何を選び取ったのか、何となく匂わされていることはあったように思うけれど、KiKi にはまだまだ薄ぼんやりとしていて、ちょっとした「忘れ物」のように心に残っていました。  そんなヒュウゴの物語と言われたら読まずにいられるわけがありません。 

読み始めて最初の2ページで、あの「上橋節」に引き込まれ、一挙に物語の世界に没入していきました。  簡潔でリズミカルな文章でありながら、その場の情景のみならず匂い・温度・緊張感や穏やかさまでが伝わってきそうな筆力はやはり圧倒的です。  彼女の描く人物は仮にそれがどんなに突拍子もないような人物像であれ、常にリアリティが感じられるのは、誰もが意思を持って生きていることがそこはかとなく感じられるからなんだと思います。  要するに「何となく」「無為に」は生きていないんですよね~。

今回、「災路の旅人」を読んでみて感じたのは、ヒュウゴってどことなく「獣の奏者」のイアルと「守り人シリーズ」のチャグムを足して2で割ったような人物だったんだなぁ・・・・・ということです。  「帝の楯」(つまりは上流階級の武人)の子として育ち、英才教育を受け、ある種の「誇り」と歩むべき道が決まった中で迷うことなく精進していた少年が、ある日突然その全てを奪われ、残っていたのは我が身1つと目の前の現実とは相容れない「精神」のみ。  そんな中で何者にもなれず、ただ生き延びるためだけの生活に倦み荒んでいくヒュウゴの姿は、痛ましいだけではなくそう言っちゃなんだけど滑稽ですらあります。

生きる延びるために市井に身を隠しながらも、捨てきれない「誇り」と「民を守る立場にある者」という気概。  でも精神論だけじゃどうにもならない現実と、捨て鉢な生き様によって消費されていく時間。  その時間に弄ばれながら募らせていく焦燥感。  あるべき道を外れてしまったことだけは判っていても、行くべき道もそこへたどり着く道も見えない閉塞感。  そして彼から全てを奪った人々に対するのみならず、状況に応じてしなやかに生きていく(ことしかできない)市井の人々に対してさえも向けられていく怒り・・・・・・。  ヒュウゴのリュアンに対する叫びは青臭いと言えば青臭いけれど、彼がどうしても捨てきれないものが何なのかがとてもクリアな、純粋な叫びです。

でも彼は縁が欠けたお椀の中でジタバタしているバッタを見て、自分が囚われている価値観の外殻・・・・みたいなものを突き破るきっかけを得ます。  と、同時に「視点を変える」、「立ち位置を変える」ことを選択するに至ります。  なるほど、そうであればこそのあの「守り人シリーズ本編」のヒュウゴになっていくのですね。  自分がそれまで閉じこもっていた価値観の世界よりも、はるかに不確かな世界に踏み出すことは、己の心の中の羅針盤のみを信じ抜く覚悟をすることと同意だったことがヒシヒシと伝わってきました。

もう一篇は15歳のバルサを描いた「十五の我には」なんだけど、こちらはバルサ以上にジグロの物語という風情が強い作品です。  否、ジグロ & バルサの親子愛の物語っていう風情でしょうか?  この物語の白眉は何と言ってもタイトルにも使われているジグロが口ずさむ「十五の我には」の詩でしょうねぇ。

十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ
二十歳(はたち)の我の この目には、 なんなく見える ふしぎさよ・・・・・ 

人は誰もがある時期には見えなかったものが時を経てみるとよく見えるような気がするという経験をするものだけど、それがズシッと心に沁みてくるとてもシンプルな詩だと思います。  でもね、ふと思ったのは

二十歳の我には 見えざりし、 日の香りと 風の色
十の我の この目には 見えてた気がする ふしぎさよ

な~んていう歌も成立しちゃうんですよねぇ・・・・・(苦笑)  ま、要するにカエサルさんも昔仰っていたらしいけれど、

人は己が見たいと思うものしか見ようとしないもの

っていうことでしょうか?(笑)  さて、せっかくヒュウゴの人となりがよりはっきりしてきたところで、もう一度「守り人シリーズ」を読み返してみようかしらん、いえ、最低でも「蒼路の旅人」と「天と地の守り人」だけでも・・・・。

もっとも・・・・・・

今回、この「災路を行く者」と一緒に図書館からたつみや章さんの「月神の統べる森で」、「血の掟 月のまなざし」、「天地のはざま」、そして「月冠の巫王」を借り出してきていて、これも以前から一度は読んでみたいと思っていた作品ばかりなんですよね~。  う~ん、迷うところです。         

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月27日 13:08に書いたブログ記事です。

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