月神の統べる森で たつみや章

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今日も図書館本のご紹介です。  この物語は以前「大人のファンタジー読本」でその存在を知り、以来いずれは読んでみようと考えていた本です。  ファンタジーという外来ものの概念(? カテゴライゼーション?)と日本文化の融合という取り組みには少なからず(・・・・と言うより強烈に)興味のある KiKi なのでこの本に出会える日を楽しみにしていました。  今のところハードカバーしか出ていないので、なかなか購入してまでして読む気にはなれなかったんですけどね(苦笑)  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

月神の統べる森で
著:たつみや章 絵:東逸子  講談社

51K49AMMWNL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

はるか太古の昔。  山も、川も、木々も、獣も......みな、心をもった存在だった。  人もまた、月神の統べる森の恵みを受け取って生きていた。  ある時、海からきたヒメカの民は、土地をかこってクニとし、敵意をむき出しにしてムラに襲いかかった。  そして、ムラの若き長(おさ)アテルイと、美貌の巫者(ふしゃ)シクイルケは、流亡(りゅうぼう)の旅の途中、翡翠(ひすい)色の目をもつ少年ポイシュマと運命的な出会いをするのだった......。  かつて語られることがなかった神秘の縄文時代に光をあて、人々の愛と闘争を描く、たつみやファンタジー待望の新作!  (単行本扉より転載)

まずは、この表紙の東さんの絵に10点!(因みに10点満点ね 笑)  何とまあ幻想的かつ美しい絵なんでしょうか!  この表紙の絵だけで、KiKi の頭の中には様々な妄想が渦巻きます。  特に素敵だと思うのが後姿のポイシュマと思しき少年が座っている月の船と思しき曲線とその向こうに見える森が素晴らしい!!  まあ実際のところ、この絵の主役はシクイルケと思しき上半分を占めている神秘的な人物なんだろうとは思うんですけど・・・・・(苦笑)

そして肝心の物語の方ですが、世界観は8点、ストーリーテリングは残念ながら5点っていうところでしょうか??  こういうアニミズム的な世界を描く物語は大好物だし、一応著者 & 出版社の意図としては「縄文時代」を扱っているつもり・・・・・ということで、そこは素晴らしいと思うんですよ。  そして、著者があとがきで述べていらっしゃる以下の言葉(↓)には心の底から賛同・共感するし、「頑張って!!」とエールを送りたい気分がムラムラなんです。  

夜空を照らす月というのは、昔の人々にとっては、たいへんたいせつなものであったにちがいないのに、『古事記』や『日本書紀』の中には、月の神様の話はほんのちょっぴりしかありません。  このお話は、月にまつわる神話が消えてしまった謎を、私なりに考えてみたいと思って書き始めました。  それと同時に、私たちの先祖の歴史である縄文と弥生という2つの文明が出会った時代を描きだすことで、私たちの現在と未来を考えてみたいという思いもあります。  なぜなら、縄文時代には、人間と自然は共生していたからです。

ただねぇ、この「月神シリーズ」第一巻の描き方がどうにもこうにも納得がいかないんですよね~。  KiKi も「縄文時代人」と「弥生時代人」は別の人種だっただろうと思っているし、結局は「縄文時代人」が「弥生時代人」に敗北し、現代はその「弥生時代人」の延長線上にあるというおおまかな世界観については著者と同じ思いを持っています。  でも、彼らの邂逅早々に「善良 & 敬虔な縄文時代人」 vs. 「野蛮な弥生時代人」というスタートのさせ方はいかがなものかなぁ・・・・・と。  異なる価値観が対立するわけだから、どちらか一方の目線に立てば当然相手の正義は見えないものだけど、見えないなりの描き方っていうものがあるように感じちゃうんですよね~。


自然と共に生き、狩猟採集を生活の糧とする人々の描き方としては、以前読了した「クロニクル 千古の闇 全6巻」の方が読ませられたと感じるし、まだまだ第一巻だから仕方ないのかもしれないけれど、「月神」の存在感が薄いというか、どんな風に森を統べているのかが伝わってこないというか・・・・・・。  作者のこの世界観の中では「縄文人≒月神信仰 & 八百万の神信仰」 vs. 「弥生人 ≒ 太陽神絶対信仰」みたいな描き方をしているように感じられるんだけど、そうであるならば月神 vs. 太陽神の戦い(但し神様自体が戦うわけじゃなくて、それらを信じる人々の精神的な戦い)に至る背景がもっと描かれていてもいいんじゃないかなぁ・・・・・と。

縄文人 & 縄文人寄りの人物が主役に据えられているから仕方ないのかもしれないけれど、これに対峙する弥生人の営み、そこから育まれた精神性の物語が掘り下げられていないだけに、何となく薄っぺらい対立軸でしかないのが本当に残念です。  縄文人の暮らしぶりから生まれる価値観、人生観と弥生人の暮らしぶりから生まれる価値観、人生観をもっと描いてくれれば、それぞれの正義も、それぞれの信仰にももっともっとスポットが当たって深い物語になるだろうに・・・・・と思わずにはいられません。  お月様というのは約1か月の間で満ち欠けをして、それが「再生」をイメージさせるものだったという記述には説得力があるけれど、縄文の人たちが「太陽ではなく月を優位に置いた信仰を持っていた」とするならば、なぜ月の優位性を信じていたのかの背景にもっともっと言葉を尽くしてほしかったなぁ。

著者が仰るように古事記 & 日本書紀の世界では天照大神(要するに太陽神)がど~んと存在感を主張しているわけだけど、その一方で「月に帰っていくかぐや姫」な~んていうおとぎ話もあれば、「お月見」な~んていう文化も持っている日本人の心の底にある月のイメージについても、もっと物語って欲しかったんですよね~。  いきなり一度は死んでしまった「ワカヒコ」を再生させる力を発揮したりして(但し、シクイルケを介してだったけれど)神様らしさは確かに出ていたんだけど、これもちょっと唐突に過ぎる。  そもそも「弥生人」であるワカヒコを助けることができたのが彼らの信じる「太陽神」ではなく、「縄文人の神たる月神」だったというテーマだけでもこの2神をもっともっと掘り下げられるきっかけになっただろうに・・・・・・・。

まあ、とは言ってもまだまだ1冊目です。  シリーズものに関してはもっと先でそのあたりが深く掘り下げられている可能性も多々あるわけで、次作の「地の掟 月のまなざし」に期待したいと思います。


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月28日 11:46に書いたブログ記事です。

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