地の掟 月のまなざし/天地のはざま  たつみや章

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今日も「月神シリーズ」を読み進めています。  1冊目では「ちょっとなぁ・・・・」と感じられていた部分が少しずつ解きほぐされてきていて、もともと好きな世界観のお話だけに俄然楽しくなってきました(笑)  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

地の掟 月のまなざし
著:たつみや章 絵:東逸子  講談社

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すべての自然には神が宿り、人はその恵みによって生かされている、と信じられていた縄文の時代。  数千年続いたその平和を脅かす、新来の弥生の民との闘いの火ぶたが、今まさに切られようとしていた、その時―。  縄文のムラと、弥生のクニに、それぞれの時代の命運を握る、ふたりの少年が現れた。  動物のカムイに育まれ、ムラの救い主になるべく宿命づけられたポイシュマ。  女王ヒメカの甥であるにもかかわらず、クニを逐われるワカヒコ。  ふたりの出会いが、また新たなる運命の歯車を回していく―。  第37回野間児童文芸賞に輝く「月神の統べる森で」に続く長編第2弾!  (単行本扉より転載)

天地のはざま
著:たつみや章 絵:東逸子  講談社

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悠久の昔。  国土は月神の統べる深い森におおわれ、ムラびとたちは自然の恵みに感謝してくらしていた。  あるとき、海の向こうから日の神を奉じる民がやってきてクニをたて、数千年の平和が破られた。  戦乱の予兆のなか、いにしえの予言どおりふたりの少年が、それぞれの宿命の道を歩み始める。  「星の子」であるしるしの翡翠色の目をしたポイシュマと、高貴な血を引きながらクニを逐われたワカヒコ。  敵味方をこえ友情を結んだふたりだったが、交易の旅に出かけた塩のムラで、アヤのクニで、また絶体絶命の危機におちて―。  「月神の統べる森で」(野間児童文芸賞受賞)、「地の掟 月のまなざし」に続くシリーズ第三弾!  (単行本扉より転載)

前作、「月神の統べる森で」の Review で書いたいくつかの否定的なポイントに関して、まだまだ十分とは言えないけれど少しずつ解き明かされてきている感があって、KiKi には楽しい読書となりました。  縄文側のポイシュマと弥生側のワカヒコがそれぞれの世界に帰ってからの生活の描写が描かれるのと同時に、前作では一方的な悪役扱い(?)だった弥生側の事情も少しずつ明らかになってきたのが何よりも嬉しい2冊でした。

月と蛇が出てくるあたりは日本古代史を舞台にしたファンタジーでありながらも、ファンタジーのお膝元のケルトっぽさも感じさせ、人間っていうのは所が変わっても案外同じような感性を持って暮らしていたんだなぁと何だか嬉しくなってしまいます。  第2巻にして、この段階ではまだまだ物語も動き始めたばかりだったんですねぇ。  運命的な再会を果たしたポイシュマとワカヒコのこれからに期待が持てそうな終わり方が「地の掟 月のまなざし」。  それぞれがそれぞれの負うべき宿命に向かって歩み出すのが「天地のはざま」です。  

基本的にはだんだん面白くなってきているこのシリーズですが、やっぱりストーリー・テリングの面で弱いなぁと感じるのは善 vs. 悪の対立軸にこだわり過ぎている感がある点じゃないかなぁ?  悪役の「クニの民(≒ 弥生人 ≒ 日の神の民)中にワカヒコという純粋な心を持ちつつ、賢くも勇敢なキャラ(但しこの時点では単なるクニを追われた放浪者に過ぎないけれど)を持ってきて、弥生人は悪い奴ばかりじゃないとでも言いたげな展開なんだけど、ワカヒコを追い詰める人間たちが揃いも揃って碌なヤツじゃないような描き方になっているのでどうしても、縄文人≒善 vs. 弥生人≒悪 というシンプルな構図に落ち着きがちだと思うんですよね~。

今、KiKi は最終作「月冠の巫王」を読み始めようとしているわけだけど、そのまえがきを読んでみて思ったんですよ。  ああ、ここに書かれているこの言葉の背景が語られていないから、善 vs. 悪に向かいがちなんだなぁ・・・・と。  そのまえがきっていうのはこんな感じです。

すべての自然には神が宿り、人はその恵みによって生かされている、と信じる「月の神の民」と、巫女ヒメカに率いられ、自然を征服すべき対象と考える「日の神の民」-。 (以下略)

そうなんですよ。  この物語で描かれている弥生の権力者たちは、ただただ非道、残虐、狡猾、強欲なんじゃなくて、農耕民族の性として「自然を征服すべき対象と考えている」ことがポイントで、その延長線上で自然から与えられるものを分かち合いながら生きているムラの人々(≒縄文人)を「遅れた野人」と考え、そんなムラの人たちのその日暮らしの生き様を「現状に甘んじ進歩を求めようとしない怠惰の人々」と侮蔑し、進歩を求めないような動物的な生き方をする輩であれば支配されて当然と考える思想に行きついている・・・・・と KiKi は思うんですよね。  同時に、彼らは後からこの大地へ乗り込んできた「新参者」なわけで、逃れてきた彼らの故郷には帰れないし、ここで定着できなければ「居場所のない人々」となってしまうんだと思うんです。  そんな彼らの「後には引けない」という意識が彼らの残虐性・攻撃性に拍車をかけていると思うんですよ。  そのあたりを感じさせる記述が全くと言っていいほどない。  

一方、ムラの人々の生き様の厳しい面(飢え、狩猟中の事故等々)の記述が甘いのであたかも縄文人の生きていた世界が桃源郷みたいなホンワカムードを醸し出しているのも、綺麗ごとすぎてリアリティがない・・・・・。  

まあ、ここまでの感想からすると著者は日本人が忘れ去ってしまった(≒ 思想的に滅びてしまった)、人は自然と共に生きているという感覚、そんな中で育まれたアニミズム的な宗教観に基づく風習といったものを賛美し再認識したいという思い入れと、言葉も考え方も価値観も異なる2つの文明がぶつかったときに争い以外の解決策は本当にないのか?という命題を問いかけたいがためにこの物語を書いているんだろうなぁと感じられるんだけど、もしもそうであるならば尚更もうひとひねりが欲しい所だと思わずにはいられません。  現代はそんな時「誰にも理解されやすい正義を振りかざした力の強いもの」が支配していくという帰結しか持っていない時代なのですから・・・・・・。

「天地のはざま」でいきなり「オオモノヌシのミコト(大物主命)」が出てきちゃったのにはビックリ!でした。  でも、なるほど、であればこそ「幸魂(さきみたま)奇魂(くしみたま)」であるオオモノヌシと「災いを呼ぶものであり、その災いをおさめる英雄でもある」と言われたポイシュマとが重なるわけです。  でも、大国主であればまだしも、大物主な~んていう子供向けの日本神話の物語集にはほとんど出て来ないような神様をここでいきなり登場させちゃうっていうのも唐突だよなぁ・・・・・・。

でもまあ、日本の神話の神様の名前って、長ったらしいし、漢字で書かれると難しいし、ついでに数が多いから覚えにくいし・・・・・ということで、かなり廃れちゃっているわけだけど、こういう物語で「そういう神様もいる」ということを子供時代にカタカナでもひらがなでもいいから知っておくっていうのは、素敵なことなのかもしれません。  少なくとも KiKi なんかは日本神話に関しては「因幡の白ウサギ」と「海彦・山彦の物語」ぐらいしか大人になるまで覚えていたお話はなかったけれど、なぜか「コノハナサクヤヒメ」という名前だけは覚えていて、神社なんかの入り口にある縁起を伝える立て看板なんかで「木花咲耶姫」とか「木花之佐久夜毘売」な~んていう文字を見てもそれが「コノハナサクヤヒメ」だっていうことがわかって嬉しかったし・・・・・・(笑)

さて、余すところ「月冠の巫王」1冊です。 (・・・・・と思っていたら、「裔を継ぐ者」っていう外伝が今では出版されていたんですねぇ。  これは吾妻郡図書館にあるんだろうか??)  どんな結末が待っているのかとても楽しみ♪です。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年2月29日 12:23に書いたブログ記事です。

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