月冠の巫王(ふおう) たつみや章

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「月神シリーズ4部作」の最終作(外伝を除き)を読了しました。  う~ん、何とも不思議な読後感の物語ですねぇ・・・・・。  ま、何はともあれ、本日の KiKi の読了本はこちらです。

月冠の巫王(ふおう)
著:たつみや章 絵:東逸子  講談社

61ZR30YZR2L._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

遠いはるかな昔。  月の神を敬い、すべての自然にカムイをみてくらす縄文びとと、日の神を奉じて海の向こうからやってきた弥生びとの間に、血で血をあらう烈しい争いが起こった。  信ずる神も、言葉も、生活様式も、何もかもがちがう二つの文明の相克は深く、和解はまったく不可能に見えたのだが...。  戦乱の世に平和をもたらすべく共に行動するふたりの少年たちの熱い友情と数奇な運命を、いにしえの日本を舞台に描く。  『月神の統べる森で』(野間児童文芸賞受賞)に始まる長編四部作、ここに完結。  (単行本扉より転載)

この物語。  結局のところ、主役は誰だったんでしょうか??  物語の流れからするとポイシュマっぽさが強いんだけど、ひょっとしたら登場回数は少なかったけれど最後はポイシュマと一緒にオオモノヌシになったシクイケル??  それとも準主役っぽさが漂うワカヒコ??  まあ、KiKi 自身(というより現代日本人)がワカヒコの属する弥生系の人々が持っていた文化をベースに持ち続けている民族であるせいか、結局のところ一番感情移入できた人物はワカヒコだったように思います。  対してポイシュマに関しては彼が纏う「必要以上に理想化された人物像」の胡散臭さばかりが印象に残って、ついでに彼が「美しく清らかで優しいキャラである」と連呼され続けたことによって抱くイメージと現代的に言うなら切れちゃって半端じゃない災厄を引きおこした時の落差が激し過ぎて、正直なところちょっとついていけない感がありました。  もっとも「オオモノヌシ」とはそういう存在なのかもしれないし、自然同様に「美しくも残虐なもの」であるということを著者は謳いたかっただけなのかもしれないのですが・・・・・・。

いずれにしろ KiKi にとって最後まで残念だったのは、何となくとってつけた感が漂う 善 vs. 悪の対立軸という構図で、「ムラ」を理想化しすぎる筆致だったように感じます。  扱っている主題は壮大かつ深みがあるし、配した人物のおおまかなコンセプトは悪くないとは思うんですけどねぇ。  ついでに言えば結構 KiKi 好みの世界観ではあるし・・・・・(苦笑)

結局は人間のみならずこの世に生きとし生けるものはすべて他の生き物の命 or 領分を食らい、侵すことによってしか生きていけないのだから、そこに現代的な価値観である「純粋」だの「穢れない」だの「善意」だのを持ち込むことに居心地の悪さ(読み心地の悪さ?)を感じました。  どうせならもっと開き直ってその穢れに首の中までどっぷりつかって、その中で「清きもの」を求めて工夫をこらす人々の努力や葛藤を描いてくれた方が、KiKi には感銘できたように思います。

もう一つ全作を読んでみてどうにもはっきりしないのが、「神」と「カムイ」の位置づけなんですよね~。  万物に宿る西洋的な表現をするなら「精霊」とでも呼ぶべきものが「カムイ」なのか、それとも「神(但し一神教の神とは異なるもの)」とほぼ同義のものが「カムイ」なのかがよくわからない・・・・・。  これはシクイケルを「カムイ」と呼んでみたり、「月神の息子」と呼んでみたりするうえに、地上にある宿るべきもの(川とか木とか石とか)のそば近くに常駐しているらしい「カムイ」がいるかと思えば、シクイケルのように「神のお膝元(≒天上)」にいる「カムイ」もいるし、ポイシュマの父である「ほうき星の神」とシクイケルが同列に扱われたりすることによってますますこんがらがってしまいます。

挙句の果てに、この「ほうき星の神」が結局のところ「オオモノヌシ(≒ 古事記の神代篇の神様)」の父であるとまで言われちゃうと何が何だかさっぱりわかりません。  著者が第1作のあとがきで「記紀が編まれる際に取りこぼされてしまった大事な神話」と仰っていたことから察するに、月の神様を頂点とする神話体系の中に「ほうき星の神」もいて、その子供が「オオモノヌシ」という文字で書かれた神話体系(こちらは太陽神を頂点とする)の神様につながったという落としどころっていうことなのかなぁ・・・・・。  う~ん、わからん・・・・・ ^^;

意欲的な作品で扱っているテーマももっともっと掘り下げれば素敵な物語になる要素をいっぱい持っているのに、何となく中途半端感が残り、小奇麗にまとめ過ぎた感もあるうえに、ついでに言えば唐突にすぎるプロットも多くてちょっぴり残念な作品だと思います。  これが児童書の限界だ・・・・と言ってしまえばそれまでなんですけどねぇ。 

「ワカヒコ」がとにかく素晴らしい!!  清らかな面を持ち続け、しなやかな逞しさを示し、異文化の良さを理解してその世界観に敬意を持ちつつも己の場所を知っている・・・・・。  彼が「ムラ」での生活を懐かしみながらも「クニ」に身を置いたときにそこに漂う空気に嫌悪感を感じつつも落ち着くというくだり、そんな嫌悪感を抱く世界の中での生き方がわかる自分の中に見え隠れする「毒」を自覚しながらも、その中での泳ぎ方を冷静に考える成熟。  2つの価値観の間で苦悩に苛まれる彼の姿ほどこの物語の中で胸を打つものはないと感じます。  日本民族が持つと言われ外国からは「曖昧 & どっちつかず」と揶揄される性分はそんな精神性を持つ人の末裔であるからこそと信じたいし、そしてそう信じることを誇ってもいいのではないかと夢想したくなってしまうようなキャラクターだったと思います。

この作品に関しては100%満足・・・・とまではいかなかった KiKi ですが、せっかくこの作品に出会ったのでいずれ彼女の「神様三部作」(「ぼくの・稲荷山戦記」、「夜の神話」、「水の伝説」の三作)も読んでみたいと思っています。

      

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年3月 1日 12:46に書いたブログ記事です。

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