裔を継ぐ者 たつみや章

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扱っているテーマとか世界観にはすこぶる共感しつつも、どうしても☆5つのお気に入りには入ってこないたつみや章さんの作品群。  それでもこうやって図書館で見つけると借りてきて読もうと思っちゃうあたり、やっぱり KiKi は彼女の作品が気に入っているのかなぁ??  はっきりしていることは荻原規子さんの作品よりは苦手意識が薄めだけど、やっぱり上橋菜穂子さんには敵わないと感じているっていうことぐらいでしょうか??(苦笑)  ま、何はともあれ「月神シリーズ」の外伝扱いのこちらを読了しました。

裔(すえ)を継ぐ者
著:たつみや章 絵:東逸子  講談社

51XXMGWEBCL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

はるか遠い昔。  月の神を奉じる縄文びとと、日の神を崇める弥生びと。  ふたつの文化が交錯したときに激烈な争いが起こった。  その戦乱の世に和平をもたらさんと、ふたりの少年が立ちあがり、やがてその甲斐があって平和への礎が築かれた。  しかし、その絆が結ばれてから五百数十年後、人々は我が祖であるかの人々の思いを受け継ぐすべをなくしていた。  そのとき新たなる運命の子がおりたつ―。  (単行本扉より転載)

本編である「月神シリーズ」よりもいささか説教臭さが強い作品ではありますが、先日 KiKi がこのエントリーで書いた「魚を捌けない人」に対する苦言とそっくりの記述があったのにはちょっとビックリしちゃいました。  そういう意味では現代人に対する警鐘の物語なんだろうなぁと感じます。  

現代の日本では「自分が生きるということ」、「生きるために食事をしているということ」、「食料を得るために他の生物を殺すということ」が1つの連環にあることを忘れがちで、「生きること」は「生きがいを得ること」だと考えたり、「食事をすること」については、ありがたいことに飢えとは無縁の食糧事情であるために食事を抜いたり食べ残しをしたり残飯を捨てたりお菓子で済ませちゃったりということを無意識にやりがちです。  食料品に至っては工業製品なみの「モノ」だと考えがち(食料となるために失われた命があることには思い至らない)なわけで、そういう意味ではこの物語の主人公サザレイシ以上に甘ったれの自分本位な人間だらけなのが今の日本と言っても過言ではないような気がするんですよね。

病弱で体も小さいということで、親兄弟から守られるようにして生きてきたサザレイシの最初の頃の生き様は現代人の甘ったれ根性・身勝手さをこれでもかっていうぐらいデフォルメして投影されているので、正直なところ読んでいてあんまり心地よいものではなかったりもするけれど、実はそれは我が身を映す鏡みたいなもの・・・・・と思い当たらないでもなくて、穴があったら入って隠れたいような気分になります。

 

冒頭の主人公のダメっぷりが徹底している分、少年の成長物語としてはとてもストレートでわかりやすい物語になっていると感じました。  そして本編では今一つオーラを放ちきっていなかった(と KiKi には感じられる)ポイシュマがこちらでは魅力あふれるカムイとなっていたのが嬉しかった(笑)

KiKi 的にかなりツボだったのは、説話というものがどのように語り継がれていくのか(同時に忘れられていくのか)というあたりの描写で、大学生ぐらいの頃にはやたらと説教くさい日本の民話、昔語りというものにどうしても興味が持てなかったけれど、今となってみると本当に大切なもので守り続けていくべきものなんだなぁということが実感できたこと・・・・でしょうか。  サザレイシがオオモノヌシから賜った「真名(まな); 幼名とは別の大人としての正式な名前」が「ユカラ」というのも素敵でした。  ユカラと言えばアイヌ民族に伝わる叙事詩の総称です。  金田一京助先生によれば、ユカラは「人間のユーカラ ≒ (英雄叙事詩)」と「カムイ・ユーカラ ≒ (神謡)」の二種類に分けられるとのこと。  KiKi の本棚に眠っている平凡社ライブラリーの「カムイ・ユーカラ」を読むのが楽しみです。

実際のアイヌの語りっていうのがどんなものなのか、生憎 KiKi は良く知らなかったのでネットで検索してみたら、今では YuTube でこういう情報も得られるのですねぇ。

日本語とはちょっと異なる言語なだけに、何を言っているのかはさっぱりだけど、歌のような呪文のような語り口に何故か魅せられます。  意味もわかんないのにねぇ・・・・・(苦笑)

こっちの動画は現代語訳がついているので何を言っているのかはわかるけど、切ないねぇ・・・・・・。

でも、こうやって「生死」を語るということは実はものすご~く大切なことなんじゃないか?と感じずにはいられません。  たつみや先生の本(というより「月神シリーズ」)を読んでいてちょっぴり「アイヌ文化」に興味を持ち始めた KiKi です。


最後に・・・・・・・

この本、タイトルが素敵だと思うんですよね。  「裔を継ぐ者」  この物語の主人公のサザレイシはあのポイシュマの何代か後の末裔であることは確かなんだけど、日本民族としての祖をこの物語に求めるとするならば、KiKi 自身も「裔を継ぐ者」であるわけで、それに恥じない生き方ができているのかどうか自問する必要があるなぁ・・・・・と感じずにはいられません。  少なくともこの日本という国土に生まれ、この日本という国で教育を受け、今もこの日本という国で税金を払いながら暮らしている以上、日本民族の祖の方々に、そして彼らが畏れ敬い奉っていた神々に無知なまんまじゃ失礼だし、「時代遅れ」「抹香臭い」と蔑ろにはできないなぁ・・・・と。

偏狭なナショナリズムにだけは陥りたくはないけれど、この年齢になってようやく「日本人である自分」をもっともっと真摯に見つめ直す必要性に気が付いた・・・・・というだけでもたつみやさんの作品に出会ったことを感謝すべきなのかもしれません。  

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アイヌのビデオって初めて見ました、興味深いです。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年3月 8日 12:15に書いたブログ記事です。

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