逆説の日本史 3. 古代言霊編 井沢元彦

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内容自体は面白いと思いつつも、著者の学会に対する攻撃性にちょっと辟易としている感もあるこのシリーズ。  とは言ってもせっかくそこそこの巻数を揃えちゃっていることだし、目の付け所には興味もあり(それは副題にも表れていたりもして)、さらに読み進めてしまっています。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

逆説の日本史 3. 古代言霊編 - 平安建都と万葉集の謎
著:井沢元彦  小学館文庫

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「軍隊と平和憲法」論争の原点は平安京にあった ‐ 意表を衝く問題提起の根底にあるものとは、「天皇(家)および平安政府の軍備放棄というのは、日本史上極めて重大な、エポックメーキングな出来事である」(あとがきより)なぜか、著者はその理由の一つは「言霊」であると説く。  日本人固有の言霊信仰という新たな視点から、日本史の真実に迫る。  第1章:道鏡と称徳女帝編 - 愛人騒動をデッチ上げた「藤原史観」  第2章:桓武天皇と平安京編 - 遷都を決意させた真相と風水説  第3章:「万葉集」と言霊編 - 誰が何の目的で編纂したのか  (文庫本裏表紙より転載)

船岡山という山は標高120メートルしかない。  山というよりはまさに「岡」だ。  平安京の中心線がこの山を通っているということは、平安京が「四神相応」つまり風水説によって設計された都であることを示しているのだ。
「平安遷都」は政治史で「万葉集成立」は文化史で扱う - これはマチガイなのである。  なぜなら、日本の政治、特に古代から中世の初め頃までの政治は「呪術政治」であり、それゆえに政治と文化はきっちり分けられないのだ。
国家に対して不満を抱いている人、もっと具体的にいえば「あの人達は無実なのに死刑にしたのは不当だ」と考える人にとっては、無実で死んだ人達の歌を語り伝えることは、「反逆」ではなく「鎮魂」になる。  (文庫本表紙より転載)

井沢氏の文体に慣れてきたせいか、はたまた先の2巻と比較すると「学会批判」の分量及び舌鋒が緩んできたせいか、この巻に関しては比較的楽しく読み進むことができました。  相変わらず話があっちへ飛んだりこっちへ飛んだりもするけれど、それも KiKi にとっては許容範囲と感じられる程度になってきたようにも感じます。  少なくともあっちこっちへ飛んでようやく本論に戻ってきたときに最初の2巻では時折感じた「矛盾のようなもの」がほとんどなく読了することができたと思うんですよね。

それに今回のお話はテーマがなかなか良かったと思うんですよね。  称徳天皇 & 道鏡の名誉回復(?)の話も説得力があったし、平安京が怨霊からのシェルターとして建都されたという話(ついでに同時代に行われた蝦夷征伐を「鬼門」という考え方になぞらえる話)も「なるほど、言われてみれば確かにそうだったかもしれない」と思わせるものがあったし、そして何よりも説得力があったのは万葉集について書かれた部分でした。


万葉集に関しては KiKi も常々疑問に思っていたのですよ。  「歴史というのは勝者が自己正当のために記録として残したものをベースとしている」というのは KiKi 自身の歴史認識とも合致していて、そうであるだけにあの万葉集というヤツが KiKi にとってはかなり特異な存在として映っていたんですよね。  あれやこれやとあった昔の権力闘争の双方の歌が載っているうえに、著者も言っているように「天下の罪人扱い」された人々の歌も載っている・・・・・。  そんなものがどうして残っていたのかなぁ・・・・と。

その謎と「言霊」という思想をガッチャンコさせた著者の説はなかなか斬新だと思ったし、著者が歴史を語る上でキーワードとしている「和の精神」「怨霊信仰」「言霊信仰」という一つ一つは別物と捉えられる思想・哲学が少しずつ1本の筋道に沿ってくるあたり、なかなか説得力のある仮説だなぁと感じられるような気がしてきました。

かなり共感したのが、現代日本人も「言霊信仰」に縛られているというくだり。  考えてみると「口は災いの元」という言葉があるけれど、あれも言ってみれば「言挙げ(ことさら言葉に出して言いたてること)」を戒めた伝承なのかもしれないと思っちゃったりもして・・・・。  現代ではこの「口」≒「失言」と読み換えられているけれど、本来の意味は違うものだったのかもしれません。

もう一つこの巻を読んでいて感じたのは「宗教心に欠ける日本人」とはよく言われることだし、実際、KiKi 自身にもその自覚があったりもするわけだけど、よくよく考えてみると多神教というヤツはそもそもそういうものなんじゃないかな・・・・・ということです。  「絶対的な神様がいない」ということは、別の言い方をすれば「どんな神様でも(要するに八百万の神様を)受け入れる」ということで、これは許容範囲が広いとも言い換えられる代わりに、「愚直に1つのものを信じるわけではない」ということでもあり、それが現代のクリスマスを祝い、初詣に参り、数珠を片手に墓参りという日本人気質に繋がっているように、「怨霊」も「仏教」も「陰陽道」も「儒教」も「キリスト教」も、すべて「それはそれとして」受け入れるということと同義なのかもしれないなぁ・・・・・と。

あ、これは「日本古来の神道」がそういうものだと言いたいわけでは決してなくて(だいたいそんな風に言い切れるほど神道に詳しくないし・・・・ ^^;)、長い時の流れの中でそんな風に変貌していくことを許容しちゃう部分があったのかもしれないなぁ・・・・というほどの意味なんですけどね。  で、そこであれもこれも受け入れるという精神の根底にあるものは何かと言えば、要するに「御利益を期待する」というある種の実利主義の発達した人種ということなのかもしれないなぁ・・・・・と。 

もう一つ、この本の中で KiKi にとってかなり説得力があったのは「柿本人麻呂」に関するくだりです。  学生時代、「古文」の時間に学んだ彼の歌には KiKi は半端じゃないほど共感し、どんな人なのか調べようとして行き詰ってしまった経験があっただけに、この本に書かれた人麻呂の運命にはちょっと驚愕!!  これが本当のところだったのかどうか断を下せるほどではなかったけれど、これは井沢さんが列挙している原文にも自分なりにあたってみて、いずれちゃんと調べてみたいなぁと思いました。 

何だかだんだんこの本が楽しくなってきました。  次は「穢れ」を扱う中世鳴動編です。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年6月22日 09:33に書いたブログ記事です。

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