逆説の日本史 4. 中世鳴動編 井沢元彦

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相変わらず、くどくてまどろっこしい文章なんだけど、それでも気になって先を読み進めちゃうんですよね~。  この文体は本音の部分では大嫌いなはずの KiKi なんだけど、それでも先を読みたいと思うのは、このシリーズに書かれていることの正誤はともかくとして、とかく「政治史」、「人物史」に偏りがちな歴史本の中では、珍しく文化史的、思想史的、民俗史的なアプローチをとっているということに惹かれるものがあるからなんだろうと結論している今日この頃です。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

逆説の日本史 4. 中世鳴動編 - ケガレ思想と差別の謎
著:井沢元彦  小学館文庫

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日本人の「平和意識」には、ケガレ思想に基づく偏見があり、特に軍隊というものに対する見方が極めて厳しく、「軍隊無用論」のような世界の常識では有り得ない空理空論をもてあそぶ傾向が強い。また、なぜ世界でも稀な「部落差別」が生れたのか。差別意識を生むケガレ忌避思想を解明し、その精神性の本質に迫る。
第1章:「古今和歌集」と六歌仙編 - "怨霊化" を危険視された政争の敗者
第2章:良房と天皇家編 - 平安中期の政治をめぐる血の抗争
第3章:「源氏物語」と菅原道真編 - ライバル一族を主人公にした謎、 ほか全7章  (文庫本裏表紙より転載)

ケガレ思想は、怨霊信仰・言霊信仰と共に日本が生まれた時からあり、日本人の思想と行動に甚大な影響を与えている。  そして、その最も重大な影響とは何か?  それは、ケガレは「差別」を生むということなのである。
逆に言えば、日本人にとって真の「平和運動」とは、軍事力を一切排除すること、になる。  とにかく何が何でも軍隊を廃止さえすれば、平和は実現すると信じることにもなる。  軍隊という「平和を害する」ケガレさえ除去すれば、キレイな平和つまり真の平和が実現することになるからである。  しかし、これはまったくの迷信であり、事実としても間違っている。  少なくとも、これまでの歴史における平和というものは、日本人の忌み嫌う「ケガレ」た手段によって実現されているのである。  (文庫本表紙より転載)

このシリーズを読んでいて痛切に感じるのは、「やっぱり週刊誌の連載記事だった本なんだなぁ」ということです。  と言うのもこのシリーズを読んでいると、連載当時のTVやら新聞やらでどんなことが騒がれていて、どの政党が政権を取ってどんな政治を行っていたのか?がそこかしこに見え隠れするんですよね~。  で、その時点で著者がどんな立ち位置で何を考えていたのかはそれこそ鬱陶しいほど力説されているんだけど、テーマとしている話の焦点がボケがちと言うか、置いてけぼりを食らいがちと言うか・・・・・。  もちろん最終的にはそのテーマに戻ってくるし、それなりの結論は出ているんだけど、読了後に強く印象に残るのはクドクドと語っていた「時事的話題」になってしまう・・・・・。

歴史現象と現代を比較して、日本人という民族が持っているある種の特質についてあれこれ考察するという著者の姿勢には感銘を受けるし、目の付け所も面白いと思うんだけど、その自己主張があまりにもくどいために「歴史考察としてのバランス」を著しく欠いていて、逆に彼が主張する仮説そのものまでもが胡散臭く感じられちゃう(要するに自分の主張を強弁するためのぶっ飛び仮説に見え始めてしまう)副作用を読者に与えているような気がします。  

そういう意味では話は面白いんだけど酒癖のやたら悪いオヤジにつきあわされて、ご高説を延々と聞かされる羽目に陥って、結構うんざりしてしまっていて、とは言いつつも、ところどころに入る「トリビア的話題」だけはやたら面白くて、次に誘われたらきっと又一緒に飲みに行っちゃう(但し、「トリビア的話題」以外のところは聞き流しておけばいいや・・・というスタンス)んだろうなぁと思っている・・・・・というのと近い感覚で、このシリーズを読み進めているような気がします(苦笑)

第3巻でも散々聞かされた「憲法改正論議」及び「自衛隊違憲論」に関する著者の主張自体はそこそこ説得力もあるし、汲むべきところもあると思うけれど、とにかくくどくて、しつこい。  因みに KiKi 自身はある程度のところまでは井沢氏の意見に共感するところもあるんだけど、彼があっさりと言ってのけている「シビリアン・コントロールを効かせる必要性はある」というところが問題だと思っていて、その一言で済ませられるほど簡単なことじゃないだけに、「あるべき解」が見つけられないと悶々として早○十年っていう感じなんですよね~。  

ま、それはさておき、著者も本書で何度も語っているように「藤原摂関政治の時代」っていうのは「庶民的リアル感」からはかなりかけ離れているということもあって、KiKi 自身あんまり興味を持ったことがなかった時代だっただけに、色々と面白い発見がありました。(特に藤原氏中興の祖、良房の記述等)  読み物としてかなり面白かったのは「六歌仙とはいかなる人たちだったのか?」の章で、百人一首でお馴染みの彼らが中央政権ではどんな立ち位置の人たちだったのかは、いずれ KiKi も自分なりに探ってみたいなぁと感じました。

もう一つ面白かったのが「源氏物語」に関する考察です。  KiKi も小学生の頃、当時放映されていた大河ドラマの影響で「平家物語」に興味を持ち、その後「源氏物語」という物語があることを知った時には当然「源氏物語」は「頼朝の祖先にあたる源氏の物語に違いない」と思い込み、その後古文の参考書みたいな抜粋版 & 現代語訳付の本で読んでみたら、頼朝とはまったく関係のなさそうな天皇家の話であることにビックリしたことがあります。

その後、「桓武平氏」とか「清和源氏」という言葉を知り、その流れで「光る源氏の君」という設定にも何となく納得していたようなところがあるんですけど、この本を読んで初めて「源氏」という素性の方々と藤原摂関家の確執みたいなことに思い至り、そこから著者お得意の「鎮魂思想」に結びつけているあたり、若干強引な感じもしないでもなかったけれど、それなりの説得力もあって、いずれ KiKi 自身もこの時代の歴史をもう少し学び直したうえで考察してみたいテーマだなぁと感じました。

実は KiKi は昔からこの日本文学の傑作とされる「源氏物語」が苦手でねぇ。  要するに皇族出身のプレイボーイがあっちこっちの女性にちょっかいを出して、挙句、因果応報、女三宮の不貞に苦しむという話のどこが面白いんだか・・・・と思っていたようなところがあります。  もちろんここで描かれている平安王朝絵巻(王朝風俗)にはそれなりに興味を持ちつつも、そこに溢れる「生活実感の乏しさ」みたいなものが何となく不快だったし・・・・・。  そういう意味では著者ではないけれど、「こいつら、いわゆる政(まつりごと)をいつしているんだ??  『いとをかし』どころじゃないだろう!!  趣っていうのはないよりあった方がいいけれど、それでお腹はいっぱいにならないんだから!!」とさえ思っていたようなところがあるし・・・・(苦笑)

「ケガレ」という概念に関しては、このシリーズの中で平安時代になって突如として出してきたのがちょっとなぁ・・・・。  個人的には KiKi も日本人の精神構造の中核にあるものはこのシリーズに出会う前から、井沢氏のいう所の「怨霊信仰」「言霊信仰」「ケガレ忌避信仰」にあると思っていたんだけど、この巻で「武士の誕生」の話が出てくるまでこの「ケガレ」に関する記述がほとんどなかったのがちょっと中途半端な感じがするんですよね~。

個人的にはこの「ケガレ」という概念は、縄文期から弥生期に至る過程で生まれてきた概念なんじゃないかと思っているし、ついでに言えば「霊」と「穢れ」は表裏一体の概念なんじゃないかと思っているんだけど、いずれにしろ「古事記」の世界にも「穢れ」と「禊」を思われる記述があるぐらいなんだから(イザナギの黄泉の国からの帰還時とかスサノオの狼藉とか)やっぱり著者が言う「古代人の感覚」を大事に歴史を考察するのであれば、更には「逆説の日本史」の精神で言うならば、通説的にこの概念の流入期とされる平安期にこの「穢れ」を出してくるのではなく、もっと遡って欲しかったなぁ・・・・・と。

さて、次は「源平合戦」から「武士の時代」へ進みます。      

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