逆説の日本史 5. 中世動乱編 井沢元彦

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第1巻から「怨霊信仰」「言霊信仰」をベースに話が進んできた感のあるこの「逆説の日本史」。  さすがに武家政権の誕生という時期になると「それだけでは話が進まない」状態になってくるのは自明の理です。  何せ人を殺すことにためらいを持たない(持ってばかりもいられないと言うべきか)武士の時代に「怨霊」を怖れてばかりいてはいられないわけでして・・・・・。  「さて、どうなる井沢節?」という興味に引っ張られ読了したのがこちらです。

逆説の日本史 5. 中世動乱編 - 源氏勝利の奇蹟の謎
著:井沢元彦  小学館文庫

51TZYD2BVPL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

源氏はいかにして平家を打倒し、武士政権を樹立していったのか。  その解明の鍵は、"源源合戦" にあった。  また、義経は「戦術」の天才でありながらも頼朝の「戦略」を理解することができなかった。  日本人が八百年にわたって錯覚してきた『平家物語』、そして「義経伝説」の虚妄を抉る。
第1章:源頼朝と北条一族編 - 「源源合戦」「幕府成立」を予見した北条時政の謀略
第2章:源義経と奥州藤原氏編 - "戦術の天才" 義経が陥った「落とし穴」
第3章:執権北条一族の陰謀編 - 鎌倉「幕府」を教える歴史教科書の陥穽、 ほか全5章。  (文庫本裏表紙より転載)

幕府政治というのは、公家たちの律令政治に対するアンチテーゼであった。  その根本は、律令政治が結局実務的には「何もしない」コトダマイズム(= 空想主義)の政治であるのに対し、幕府(武家)政治というのはリアリズム(= 現実主義)にのっとった政治である、ということだ。  では、武士たちの現実主義とは最終的には何を指すのかといえば「汗水たらして開拓した土地はその開拓者のものだ」ということだ。  この「一所懸命」によって鎌倉幕府は、そして武家政治は、作られたのである。  (文庫本表紙より転載)

一般的日本人にとって、平安時代から鎌倉時代への転換の一大イベントと言えば「源平合戦」という認識が強い中、実はこれは「源源合戦」だったというのはちょっとした驚きの視点でした。  よくよく考えてみると木曽義仲と源九郎義経の話を知識としてちゃんと認識していたにも関わらず、その部分に関してはさほどじっくりと考えたことのなかった我が身を省みて、ちょっと情けなくなったりもして・・・・・(苦笑)

ただ、その後しばらく続く「頼朝は実は単なる神輿に過ぎない」という話とか「戦術には長けていても戦略には無頓着の義経」という話に関してはちょっぴり冗長に感じてしまいました。  少なくとも KiKi にとってはそこらへんの認識は決して新しいものではなかった(既に人口に膾炙されていると認識していた)からです。  鎌倉時代においてなぜ源氏が3代で終わってしまったのか?というあたりにしても・・・・・です。  そんな中で秀逸だと感じたのは鎌倉幕府の体制図を持ち出し、実際にはその体制図に描かれている組織・・・・というか機能・・・・というかが同時並列していた時期はないに等しかったというくだりで、なるほど、それまでにない体制を作るということはそういうことなんだろうなと納得させられてしまった気分です。

そして、「古代編から平安まであんなにも大活躍(?)していた『怨霊』がここへきて急速に衰えてきちゃった(著者の主張の中で)なぁ、これからどうするんだろう??」とちょっと意地悪モードの入った興味本位で読み進めていたところにドド~ンと登場したのが、「道理」という概念で、これにはビックリ!!  ここからいわゆる Nature とは別義の日本人が大切にしている「自然」という感覚、そこに横たわる「納得」という感情を説き起こしている部分はかなり読みごたえがありました。

KiKi 自身はその話の中で語られる「明恵上人」という方に関してあまりにも無知なので、この方に関して、そしてこの方の思想に関してもっともっと知りたいという欲求がムクムクと頭をもたげてきちゃったんですけど、それだけでも今回の読書はとっても刺激に満ちたものだったと感じています。

ま、何はともあれ、この時代を突き動かしていた根本原理は「怨霊」だの「言霊」だのという呪術的要素の極めて強い部分ではなく、著者自身も認めている「リアリスティック」な「土地問題」であるだけに、そうそういつまでもそれだけで突っ走ることはできないわけでして・・・・・(苦笑)  でも、事が人間のやっていることなだけにそこには明確に「思想史」「文化史」に属する「ある種の価値観」が作用していることは間違いのないことであるうえに、おじいちゃんの代までは拘っていたものが孫の代で雲散霧消というわけにもいかないでしょうから、その継続性の部分にもうちょっと筆を割いてもらいたかったなぁ・・・・と。  そういう意味では個人的にはこの巻で出てきた「中尊寺が何故残っているのか?」とか「義経不死伝説」だけではちょっと物足りない・・・・・。

まあ、このあたりは坂東武者というよりは「朝廷のある京都育ち」「清和源氏の末裔」というDNAを持った頼朝を筆頭とする源氏3代と根っからの坂東武者との代替わりによって転覆されたとも言えるわけだから、それならそれでいいんですけどね(苦笑)  そうであるだけに北条泰時の偉大さ(と言うよりは著者のいうところの明恵が語る落としどころの絶妙さ)があるとも読めるわけですが・・・・・。

いずれにしろ、理論武装という意味では極めて脆弱な土台の上に立っていた「武家政治」がこの後延々と明治維新まで続いたのも不思議なら、そんな環境下でそれでも生き延び続ける朝廷(天皇家)というのも落ち着いて冷静に考えてみるとかなり不思議な存在なわけで、そのあたりをあれこれ妄想するためにも第6巻に読み進みたいと思います。

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