逆説の日本史 9. 中世野望編 井沢元彦

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文句を言いつつもずっと読み続けている「逆説の日本史シリーズ」もとうとう9巻目です。

逆説の日本史 9. 中世野望編 ‐ 鉄砲伝来と倭寇の謎
著:井沢元彦  小学館文庫

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日本人の根本原理である「和の精神」が崩壊した下克上の時代を生き抜いた戦国武将たち。  織田信長、武田信玄、上杉謙信、毛利元就、北条早雲らの「天下人たる資質」を徹底検証する。  混迷の時代にあって、"覇者の条件"とは何かを問う井沢流歴史ノンフィクションの白眉、待望の文庫化!

第1章: 琉球王国の興亡編

第2章: 海と倭寇の歴史編

第3章: 戦国、この非日本的な時代編

第4章: 天下人の条件Ⅰ 武田信玄の限界編

第5章: 天下人の条件Ⅱ 織田信長の野望編  (文庫本裏表紙より転載)

ポルトガル人は完成品である鉄砲を輸出して大儲けしようと思っていたのに、日本人はなんと鉄砲伝来の翌年に、国産化に成功してしまったのである。  ハイテク大国日本は何も今に始まったことではない。

私が「16世紀の倭寇」はほとんど中国人だと主張するのは、それが「真実」だからだ。  しかし、中国人の多くはそうは思わないだろう。  「倭寇は日本人の海賊のことで、日本人の残虐性の象徴だ」というのは、16世紀以来中国人の心の中にある一種の「民族的信仰」のようなものだからだ。

「16世紀の倭寇」は、「明の失政に起因する国内問題」として扱うべきだろう。  したがって「倭寇」という名称も適当ではない。  別の用語を用いるべきである。  (文庫本表紙より転載)

この巻はかなり楽しむことができました。  日本史を学生時代に学んでも「琉球史」に触れる機会は全くと言っていいほどないなか、第1章の「琉球王国の興亡編」は未知のことを知るという意味でかなり面白かったし、ついでに KiKi にとっては日本という国のアジアにおけるポジション(文字通り位置・地形的存在)についてあれこれ考察してみるいい機会になりました。  第2章の倭寇に関する記述も、倭寇と呼ばれている海賊軍団が必ずしも日本人集団でなかったことは知っていたけれど、実は日本人は多くても2割程度という具体的な数字を知ることができたのは収穫でした。

第2章でかなり印象的だったのは織田信長が定宿としており、結果的に命を落とすことになった「本能寺」が火縄銃を扱うのに欠かせない「煙硝ルート」だったというくだりでした。  鉄砲を扱うためには火薬が必要で、その火薬は煙硝がないと生産できず、しかもその煙硝は日本には産出しないというのははじめてちゃんと認識した事柄だったし、鉄砲が伝来した種子島の宗旨が法華宗(日蓮宗)でその本山が本能寺というのは今回初めて知りえた知識でした。  なるほどね~、井沢氏が「日本史における宗教的側面は極めて重要」と力説するわけです。

それぞれの章にかなり楽しめる内容があったのは事実ですが、やっぱり白眉なのは第3章以下、戦国武将のあれこれを考察しているあたりではないでしょうか。  戦国武将のいわばパイオニアとして紹介された朝倉孝景の話然り、謎の多い北条早雲の話然り、「三矢の訓え」で有名な毛利元就の話然り、戦国最強の騎馬軍団を擁した武田信玄の話然り。  KiKi にとって何よりも面白かったのはこれら綺羅星の如く存在する戦国武将それぞれに対して「天下人たる資質の有無」を論じている視点でした。

今回この本を読むまで、KiKi はある意味で教科書で教えられたとおり「戦国武将は誰もが天下を目指して凌ぎを削っていた」ということにさしたる疑問も持たずにきたのですけど、なるほど、井沢氏の論を拝聴していると「天下」にピタリと照準をあわせ、その目的に即した行動をしていたのが信長ただ一人だったという説が説得力をもって迫ってきました。

KiKi は♀の割には子供のころから「織田信長贔屓」で、彼の残忍性みたいなものが大々的に論じられている時にもそこはほとんど気にならなかった人間なんですけど、その理由をあまりつきつめて考えたことはなくて(漠然とはイメージしていたけれど)、それを自分なりに言語化してみようとしたこともなかったんだけど、今回、その漠然とイメージしていたまさに「それ」が活字になっているのを読んだような気分がして、何となくスッキリしました(笑)

武田信玄に関しては、KiKi も「早く生まれすぎた武将」「地の利に恵まれなかった武将」というような観方をしていたようなところがあったんだけど、今回、彼は甲斐の国の内政ではすぐれた手腕を発揮したし、領国拡大という意味では成功者であったかもしれないけれど、この時代に出家して僧侶となったという時点で天下人の器ではなかったという指摘にはなるほどと思わされました。

同時に武田家では新参者があまり重用されず、「甲州純血主義」の国だったという記述を読み、「なるほど、だから山梨県人はどちらかというと閉鎖的気質が強いのか」とある意味で腑に落ちたんですよね。  実は KiKi はね、Lothlórien_山小舎を建てる前、東京から日帰り圏内のあちこちで土地を物色していたんだけど、その中には当然山梨県の地域もあったんですよ。  ところが、当時、会社の「甲府営業所」の所長と話をした際に

「KiKi さん。  KiKi さんの性格からすると問題ないとは思うけれど、それでも山梨県はあんまりお勧めできないかもしれません。  山梨県人である自分が言うのもなんですけど、山梨県人っていうのは案外閉鎖的で、根っこの部分では余所者とは交わりにくい体質・・・・みたいなものがあるんですよね。  まあ、現代では多くの人が学生時代は東京とか名古屋とかに出てから里帰りしているので、そういう部分も薄れてきてはいるんですけど、僕も日本のあちこちに行ってみて(人事異動で他県に赴任した経験アリ)、やっぱりまだそういう要素が根強く残っているなぁと感じているぐらいですから・・・・・。」

と言っていたんですよ。  それを聞いたとき、KiKi はそれまでその類の「○○県人気質」みたいなものを考慮に入れていなかったことに気が付き、同時に面白いもんだ、そういう「○○県人気質」みたいなものはどうやって醸成されるんだろう??と思ったものでした。  

さて、いよいよ次は第10巻。  戦国覇王編です。  この時代は小説にもドラマにも映画にも飽きるほどなって、KiKi を含む多くの日本人が「知っているつもり」になっている時代ですから、どんな新しい視点がもたらされるのか、楽しみです。    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年7月14日 08:59に書いたブログ記事です。

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