指輪物語 1 旅の仲間(上) J.R.R.トールキン

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今年の夏の KiKi の壮大(?)なプロジェクト。  「中つ国神話探求」の中核をなす「指輪物語第1巻」を読了しました。

指輪物語 1 旅の仲間(上)
著:J.R.R.トールキン 訳:瀬田貞二 田中明子  評論社

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これは、冥府の魔王によってつくられた指輪をめぐる物語である。  遠い昔、冥王サウロンは、オロドルイン火山の火でこの指輪を鍛え上げ、自身の持つ悪しき力のすべてをこれに注ぎこんだ。  善も悪も、この指輪のまえには、成す術もなく屈服せざるを得ない。  ところが、ひょんなことから、この指輪を手に入れたホビット族のビルボが、甥のフロドにそれを譲ったことから、物語は始まる。
灰色の魔法使ガンダルフから指輪の正体を知らされたフロドは、この指輪を必死に探し求めているに違いない冥王サウロンから身を隠すため、平和なホビット庄を仲間とともに逃れ出る。  その後を追う、不気味な謎の黒の乗り手たち。  この先、どんな危難がフロドたちを待ち受けているのか・・・・・。
全世界に1億人以上の愛読者を持つ不滅のファンタジーが、ここに幕をあける。  (単行本扉より転載)

KiKi がこの版の「指輪物語」を購入したのはご多聞に漏れずあのPJの大ヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング3部作」が公開された後でした。  もっと若い時代に読んだこの作品の単行本はビジネス本を買い漁っていた時代に「本棚ふさぎ」とばかりに古本屋さんに売り払ってしまっていて手元には残っていませんでした。  当時はまだ東京のマンション暮らしだったので、まずは文庫の方で全巻買い揃え、再読したのですが、Lothlórien_山小舎構想を練り始めた時、山小舎用の一揃えということで新たにこの版の指輪物語を全巻揃えました。

でも、この版では揃えるだけ揃えて、これまで山小舎の本棚のベスト・ポジションに位置する展示品的な装飾品であっただけで、頁を開いてこの本で読書するのは実は今回が初めて(^^;)でした。  しかも、今回は先日のエントリーでもお話した通り、これら(↓)の本で地図を辿りながらの読書だったので、テーブルの上にこの本を広げ、膝の上には「フロドの旅」を脇机には「中つ国歴史地図」を広げ・・・という、何ともスペース食いの読書となってしまいました(笑)

指輪物語 フロドの旅 ~ 「旅の仲間」のたどった道
著:B.ストレイチー 訳:伊藤盡  評論社

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「中つ国」歴史地図 ~ トールキン世界のすべて
著:K.W.フォンスタッド 訳:琴屋草  評論社

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読書をしながら地図を参照するのは今回初めての試み(本に載っていたり、付属品としてついている別冊子はよく参照するけれど)だったのですが、これが想像していた以上に楽しい旅となりました。

この物語、トールキン大先生は彼らの旅で目にする風景や風の匂い等々を緻密に、そして繊細な語彙で描写してくれていて、読んでいて彼らが旅する荒れ野や山地の風景がまざまざと目に浮かぶこと請け合い・・・・ではあるのですが、ここに「フロドの旅」の方の等高線つきの地図が加わることによってさらにその映像が鮮明になっていきます。  と同時に、彼らの旅が決して一本道ではなくいかにくねくねと迷い、間違い、逃げ惑う旅だったのかが文字や言葉で辿る以上に切実なものとして実感できます。

特にその想いが強くなるのはフロドが3人の友と一緒に堀窪の新居を出発し、古森、トム・ボンバディルの家経由で塚山丘陵でさまようあたりで、地図に描かれた彼らの旅路の矢印を追っていくと「効率」という観点からすれば信じられないほど「非効率」な道筋を辿って結果塚人に捕らわれたことがわかります。  

これはブリー村の「躍る子馬亭」でアラゴルンという願ってもいない案内人を得た後であってさえも繰り返され、「風見が丘」(フロドが黒の乗り手に襲われ傷を得るところ)でも「トロルの森」でもあっちへくねくねこっちへくねくねと続きます。  優秀な野伏(映画での表現はレンジャー)であるはずのアラゴルンにしてどうしてこんなにくねくねしてしまったのか?は描かれている等高線を見れば明らかで、そのくねくねの必然性がよ~く理解できます。

又、「中つ国歴史地図」の方ではトム・ボンバディルの家の見取り図やら躍る子馬亭の構造図、ブリー村とブリー山の配置等々が詳細に描かれていて、時に「フロドの旅」とは異なる解釈も垣間見えたりはするものの、想像の助けになります。

こうやって地図で辿りながら物語を読んでみると、あのPJの映画の出来の良さも痛感できちゃったりもします。  例えばホビット4人が黒の乗り手から間一髪のところで逃れ渡し場で船に飛び乗るシーン。  このシーンは実は原作とはかなり違っていて、あんな風に露骨に追い回されたりギリギリ・セーフというような状況ではなかったりもするけれど、KiKi が感嘆したのは川の上に漕ぎ出したホビット達を岸で見送らざるを得なかった黒の乗り手達が川を渡る橋(東街道にあるブランディワイン橋)に向かうために馬を走らせるシーン。  あそこで黒の乗り手たちは向かって右に走っていくんですよね。

で、これを地図で確認してみると、ホビットたちが渡った「バックル村の渡し」の川の上(要するに舟の上)から来し方を眺めてみると、確かにブランディワイン橋は右側のず~っと先にあるわけですよ。  あんな何気ないシーンでもちゃんと研究して(? 単なる偶然かもしれないけれど ^^;)作られていたんですねぇ。

映画では風見が丘で黒の乗り手たちの襲撃を受け、フロドが傷を負った後、何故かエルフのお姫さま(アルウェン)が現れ、黒の乗り手たちと競馬をしてギリギリセーフで鳴神川(ブルイネン)を渡って裂け谷側に辿りつくけれど、物語の方でここで登場するのはお姫さまにあらず、グロールフィンデルというエルフで、彼がなかなかの体育会系(要するに厳しい)なのがちょっと笑えます。  

もちろん彼らはまだまだ黒の乗り手の追跡から逃亡している真っ最中だから、その緊迫感・危機感ゆえの体育会系ではあるんだけど、前作「ホビットの冒険」のエルフのイメージがどちらかというと「美しく、優しく、歌や古い伝承を好み、インドアっぽい」のに、このグロールフィンデル君はどちらかというともっと躍動的で、なかなかに魅力的です。  映画では彼がカットされちゃっていたのがとっても残念です。  ま、それを言うならトム・ボンバディルが抜けちゃっているのがもっともっと残念ではあったのですが・・・・・(苦笑)

物語の方でもう一つ印象的なのは、フロドの旅の仲間となるサム以外のホビット二人の描写です。  メリーとピピンのコンビは映画と比較するともっと落ち着いた雰囲気で、尚且つ、思索的です。  さらに言えば、映画の方ではどちらかというとフロドの旅に突然、「心の準備もないままに巻き込まれちゃった感」が強くて、この全体トーンとしては暗めの物語の中の狂言回し的なポジションがあったようにも感じられたけれど、そんな軽い存在では決してありません。  

いずれにしろこの第1巻ではようやく鳴神川(ブルイネン)で黒の乗り手達を振り切っただけで、まだ裂け谷にさえ到着していません。  早速第2巻に突入です。    

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年8月18日 11:53に書いたブログ記事です。

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